【つる性落葉低木、ジャコウアゲハの食草】
ウマノスズクサ科のつる性落葉低木。本州の関東以西の太平洋側、四国、九州の山林内に分布する。つるが長く伸びて周りの樹木に巻き付く。高さは2~3mに。古くなると木質化して直径が2cmほどになる。葉はヤマイモに似た心形。名前はその葉が属名にもなっているウマノスズクサの葉より大きいことによる。
ウマノスズクサの名は丸い実の形が馬の首に掛ける鈴に似ているから来ているといわれる。ウマノスズクサの花期は夏だが、このオオバの方は少し早く晩春。葉の脇から長さ5cmほどの花柄を下ろし、小さいながらユニークな形の花を1つ付ける。花弁のように見えるのは3つの萼片(がくへん)が合着して筒状になったもの。退化して失われた花弁の代わりに萼が発達した。
萼筒の基部は下を向くが、中ほどから強く曲がって上向きに。その姿はまるで小さなサクソホン。円形の縁は浅く3裂し、内側には紫褐色の斑紋が筋状に入る。見た目は少し不気味な印象も。ウマノスズクサとともにジャコウアゲハの食草で、葉に卵を産み付ける。そのためジャコウアゲハを飼育するために栽培されることもあるそうだ。
よく似た仲間に「リュウキュウウマノスズクサ」がある。名前の通り奄美大島~琉球諸島に分布する。「アリマウマノスズクサ」はオオバの変種とみられ、牧野富太郎博士によって兵庫県の六甲山で発見された。やや小型で「ホソバウマノスズクサ」とも呼ばれ、本州の近畿以西から九州にかけて分布する。長野県と日本海側の山形~島根でまれに見られる「マルバウマノスズクサ」は環境省のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に分類されている。