【ちびっ子たちが練習を重ねた祇園囃子を披露】
滋賀県近江八幡市浅小井町(あさごいちょう)で7月21~22日、伝統の夏祭り「浅小井の祇園祭(曳山まつり)」が繰り広げられた。今宮天満宮内の摂社津島神社の厄病退散と五穀豊穣を祈願する祭礼。本宮の22日には江戸時代後期に建造された曳山6基が町内を巡行した後、神社の鳥居前に勢揃いし、青い法被姿の子どもたちが太鼓や横笛、鉦(かね)で祇園囃子を奉納した。
浅小井町は安土城跡の西側にある琵琶湖最大の内湖、西の湖の南側に位置し、かつては特産イ草の栽培・加工が地域に莫大な富をもたらせた。往時の繁栄ぶりを物語るように、町内の6つの小路(東出、北出、西出、平田出、野瀬出、五条ノ木)が重厚な曳山を1基ずつ保有する。曳山は以前、各小路の保管庫に収容されていたが、今はふだん地域のまちづくりの拠点「曳山とイ草の館」で全6基が保管されている。
午後2時すぎ、同館を出発した曳山は子どもたちが演奏するお囃子に乗って約500m離れた津島神社に向かった。山車の上部を飾るダシはその年の干支や世相を映したものを各小路のダシ番が手づくりしているという。今年は戌年とNHKの大河ドラマ「西郷どん」もあって、犬を連れた西郷隆盛の飾り物が目立った。「2018五輪 そだね~」というのもあった。
曳山の中で最も建造時期が古いのは五条ノ木山の1806年で、その他の5基も1800年代前半の建造。基本的な構造は人形屋台・単層露天式の〝日野・水口型〟だが、黒漆塗りや白木造り、破風屋根付きや金箔で飾った彫刻があるものなど独自色も目に付く。形態が異なるのは多賀町や日野町など周辺地域から買い入れた曳山が含まれることによるそうだ。各曳山には大きな寄木造りの車輪が付いているが、最近は曳き回しやすいように山車全体をゴムタイヤ付きの台車に載せている。
6基が鳥居前に横一列に並ぶと、その前で子どもたち約20人による祇園囃子の奉納が始まった。曳山の巡行はずっと続いていたものの、お囃子は約60年間途絶え、約20年前にようやく復興させることができたという。以来、浅小井祇園囃子の会「湖月」が保存・伝承活動に取り組んでいるそうだ。その後、曳山の上から御供まきがあり、子どもたちが歓声を上げながら餅や菓子などを取り合っていた。
浅小井町は200戸に満たない小さな集落。そこで繰り広げられる大きな曳山6基による祇園祭に、地域住民の誇りと心意気を感じた。祭りの継続には人手不足や資金面での制約など様々な困難があるにちがいない。それを乗り越えて祭りがこれからも長く引き継がれていくことを願わずにはいられなかった。