【庭木や実もの盆栽としても人気】
モチノキ科モチノキ属の落葉低木(高さ2~3m)。本州・四国・九州の山地の湿地に自生し、国外では中国南部などにも分布する。雌雄異株。6月ごろ、葉の付け根に直径3~4㎜の淡紫色の小花が群がって咲き、雌株は秋になると直径5㎜ほどの果実が赤く熟す。花はごく小さく目立たないが、赤い実は美しく落葉後も長く残って寒い時期に彩りを添えてくれる。このため庭木のほか盆栽や鉢植え、生け花の花材としても人気。実はヒヨドリなどの野鳥の大好物でもある。
和名は葉の形や枝ぶりがウメに似ていることから。学名は「Ilex serrata(イレックス・セラタ)Thunb.」。属名はholly(ホーリー=西洋ヒイラギ)またはholly oak(ホーリー・オーク)のラテン古名に因む。種小名セラタは「鋸歯のある」を意味し、葉の縁にギザギザの小さな鋸歯があることを表す。種小名の後ろの「Thunb.」は学名の名付け親、スウェーデンの植物学者カール・ツンベルク(1743~1828)の略称。江戸時代中期に長崎・出島の商館付き医師として来日し、滞在中に多くの植物標本を収集した。
ウメモドキには近縁種や変種、栽培品種も多い。果実は赤のほか白や黄色のものもあり、それぞれ「シロウメモドキ」「キミノウメモドキ」と呼ばれる。「ミヤマ(深山)ウメモドキ」は細長い葉の形から「ホソバウメモドキ」という別名を持つ。学名は「Ilex nipponica Makino」。「フウリン(風鈴)ウメモドキ」は枝から垂れ下がる長い果柄の先に実を付ける。この2つはいずれも日本固有種だが、多くの地域で絶滅危惧種や準絶滅危惧種になっている。ウメモドキは晩秋の季語。「大空に風すこしあるうめもどき」(飯田龍太)