允恭天皇が崩御されて、みんながその喪に服していた時です。「木梨之軽王」は自分の同母妹の余りの美しさに虜になり、どうにか自分のものにしたいという思いに駆られます。そして、ある日、その思いがかなえられた喜びの歌を高らかに歌います。
それを古事記には、”姧其伊呂妹軽大郎女而<ソノイロモ カルノオホイラツメニ タハケテ>”と書いてあります。「姧」とは、「姦」で、みだらなことで、あってはならない事を意味します。
父親である天皇の死去のため喪に服している最中にです。同母妹を我がもの、「妻」にします。不謹慎極まりない行為です。だから、古事記にも「姧」の字を入れて、そのことを説明しています。
その歌を古事記に書かれた文字にてご紹介します。少々読みずらいとは思いますが、一応、目を通して見てください。
阿志比紀能<アシヒキノ> 夜痲陀袁豆久理<ヤマダヲツクリ>
夜痲陀加美<ヤマタカミ> 斯多備袁和志勢(シタビヲワシセ>
志多杼比爾<シタドヒニ> 和賀登布伊毛袁<ワガトフイモヲ>
斯多那岐爾<シタナキニ> 和賀那久都麻袁<ワガナクツマヲ>
許在許曾婆<コフコソハ> 夜須久波陀布禮<ヤスクハダフレ>
と読んだのです。
最後の行だけでも訳しておきます。”許在許曾婆<コフコソハ> 夜須久波陀布禮<ヤスクハダフレ>”は「今宵はじめて、やっと心も安心しきって、あなたの肌に触れることができたよ。」
なお、ついでですから、こんなことはどうでもいいようなことですが、「ハダフレ」は「ハダフリ」の已然形で、「レ」は、ある動作が完了したことを意味する助動詞です。どのような状態になったかお分かりだと思います。だからこそ、「姧」なのです。
今日は、少々屁理屈っぽくなりました事をお詫びします。