軽の兄妹の熱い思いは、これで終わるのではありません。兄「木梨之軽王」の妹に対する愛の思いは、また、歌によって表されております。
愛<ウルハ>しと さ寝しさ寝てば
刈薦<カリコモ>の 乱れば乱れ さ寝しさ寝てば
と、歌います。「さ寝しさ寝てば」と、同じ言葉をを2回も繰り返して歌っております。二人は一つになれたその最高の嬉しさが言葉となって口から飛び出たのです。この歌から受ける感じは、事の終えたその後の気だるゐ気分をも取り越して、「やっと」二人が一人になったのだという幸福感が絶頂になった瞬間の男「軽王」の雄たけびのように聞こえてならないのです。
なお、「さ}は語意を強める時に、また、「ば」は原因・理由を表し、そのことに続いて、また、次のことが起きる時に使う助詞ですが、これだけの短い歌の中に、「さ」「れ}「ば」を繰り返し使うことによって、作者の悦びの心の高ぶりを表現しているのではないでしょうか??? 昨日の歌と一緒に読んでいただけれは、その時の兄皇子の喜びがいかばかりであっただろうか、より強く理解できるのではないでしょうか。
笹葉に 打つや霰の
たしだしに 率<イ>寝てむ後は 人は離<カ>)ゆとも
愛<ウルハ>しと さ寝しさ寝てば
刈薦<カリコモ>の 乱れば乱れ さ寝しさ寝てば
古事記の中の最大の「愛の讃歌」です。