オホクニは更に続けて歌います。
『あなたか休んでおられる館の、がたがたと音のでる戸を、急いで、私は「オスヒ」を頭に着けたままで、押してみたり、引いてみたりしたのですが、その戸はびくともしないで開きません。仕方なくその戸の前にただ立っているだけです。そうこうしているうちに、
“阿遠夜麻邇<アオヤマニ>。奴延波<ヌエハ>那伎ナキ>”
「アオヤマ」は「青山:」です。次に在る<ヌエ>ですが、この鳥が鳴くと、その声が人々を大変な愁いに誘うのだそうです。ということは、その声を聞いて、オホクニに、折角、ここまで恋しい乙女を探し求めて来たのに、どうしても会えないことを、余計に、憂う気持ちに高ぶらせたのでしょうかね????
なお、奴延<ヌエ>ですが、今は「鵺・鵼」と書いております。頭は猿、胴は狸、手足は虎、声はトラツグミで、平安時代に源頼政が退治したと言われる怪獣です。その絵を今日もお見せします。
どうです!!!!。恐ろしげな猿狸虎、その上、ここでは、ご丁寧に尾に蛇までを描きこんだ、さも恐ろしげな怪獣ですよね。
蛇足ですが、この「ヌエ退治」の源頼政が寄進したと言われる「鉄燈籠」が吉備津神社の拝殿と神殿を繋ぐ階段の上に掲げられています。