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ドキュメント 「西穂高」登頂――その7・最終稿

2008年09月18日 | 丸ちゃんの喜怒哀楽へなへなジャーナル

 思わず長居をしてしまった西穂高山頂ともおさらば、ということでおばちゃんに挨拶して先に下山していく。下りといってもその路程には登りもあるし、平坦な道もあるが、岩場では登りよりも下りの方が慎重になる。妻に先に行ってもらうが、足元ばかり見ているとついつい行き詰ってしまい、下山道を見失いがちになる。上から見ると迷いそうなところにはペンキで○や×の印が描いてあるので、そのつど「あっちじゃない、こっちや」など声を出しながら下山する。
 突然「きゃー」という女性の声。振り返ると岩場で前方にひっくり返っている女性を隣で男性が支えているのが見える。危ない、危ない。その声でこちらもより慎重になりながら下っていると、アヒルのようなヤギのような鳴き声とパタパタという明らかに鳥の羽根の音が聞こえた。ふと見るとライチョウである。2羽のライチョウがすぐ近くまで飛んできた。人懐こいのか、人を知らないのかわからないが、なんとラッキーなことか。後ろを歩いていた家族連れにも教えてあげて写真を撮った。


おお、なんとライチョウに出会えるとは

 ピラミッドピークを越え、独標を越えるとズンズンと高度が下がる。今朝一番のロープウェイで上がってきたらしき人たちとすれ違うことが多くなってきた。女性ばかりのグループやどこかの中学生らしき集団も登ってきている。丸山を過ぎるとだらだら坂が続いていき膝が怪しくなってきた。やがて西穂山荘の赤いトタン屋根がハイマツの間から見え、しばらく下るとようやく山荘に到着である。


下りてきた丸山方面を振り返る

 とりあえずビールを飲みながら休憩する。前日の天気とは違って眺めがよく、目の前に霞沢岳がよく見える。隣にいる妻の携帯に職場の人から電話がかかってきた。何やら話し込んでいるようす。なかなか山登りも大変なようだ。
 さて山荘を出発、ロープウェイ駅目指して一気に下る、といきたいとこだが、ここにきてついに膝が悲鳴をあげたか。右膝の後ろ側部分なので膝ではないのだが、体重をかけると痛い。特に段差の上りが苦しい。残念なことにステッキを持っていなかったので右足に負担をかけないように左足にがんばってもらってなんとか駅までたどりついた。


西穂高山荘から霞沢岳を望む


ロープウェイ乗り場の足湯です

 新穂高温泉を離れ一気に高山へ下り、郡上八幡へと続くせせらぎ街道へ入る。しばらく行くとログハウスのテラスの雰囲気がよさそうなコーヒーショップを発見。そのまま過ぎ去ろうとしたがせっかくなので寄ってみることにする。もう夕方の5時近い時間なのでお客さんは他には誰もいない。ドアを開けて声をかけ、テラスの席に着いた。マスターらしき男性がお盆を持ってにこやかに現れた。コーヒーを注文、再びその人が運んでくると、なぜか当然のように隣の椅子の腰掛けて「とりあえずブラックで飲んでください」と話しかけてきた。ああ、と納得してまずは一口ブラックで飲む。「このコーヒーはね、神戸の西村コーヒーで修業した人が焙煎してくれた豆を使ってるんですよ」とのことである。なるほど、この岐阜の山の中で西村コーヒーが飲めるというわけで、これがこのお店の自慢なのだと合点がいった。

 このお店、実は何回もこの道を通るたびに気になっていたのだ。前日の朝はライダー姿の人たちでにぎわっており、こっちも急いでいたので寄らなかったのだが、ようやく希望がかなったというところである。いろいろ話を聞いていくとこのお店はこの当たり一帯の別荘地のモデルハウスとして建てられたものを退職金をつぎ込み格安で買ったのだそうである。別に商売をするということではなかった。1年の内半年しか営業できないような場所で、しかもお客さんが来るのはGWとお盆と紅葉のときぐらいだから、まあ自身の老後の楽しみや孫たちの遊びの場所として、という感じで奥さんを巻き込んで始めたとのことである。冬には3mの積雪があるので岐阜市内の家に帰り、雪解けが来たらここにやってきて春夏秋を楽しみながら過ごすという、なんともうらやましい限りである。
 そんな話に夢中になっていると周囲が暗くなってきたのでお暇し、素早く郡上方面へと車を走らせ、郡上踊りのにぎわいを横目で見ながら大阪へと急いだ。

        

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