明日の持ち物や宿題などを書く連絡帳。単なるメモ帳ではありません。二年生の親に「連絡帳を見て、明日の持ち物を一緒に点検したり、今どんな学習をしているのかも知ることができるので、毎日見てあげてください」と言うと、「子どものメモなのに、なぜ親が見るのか」と抗議めいた返事が返ってきたことがありました。では、見たくなる連絡帳に変えてやろう、と学校の様子を日記風に書いた「お話コーナー」を設けたのです。
これだと「今日はこんな勉強をしたのか、友だちとおもしろい遊びをして楽しかったんだ。家では食べないひじきを給食では食べて、すごいじゃないの」と日々の学校生活の様子がわかって、喜ばれる連絡帳になったのです。
■安心、喜びを届ける
連絡帳は親と先生をつなぐ大切なパイプにしたいもの。
「夕べ熱があったので、薬を持たせていますので飲ませてください」(親から)
「わかりました」の一行ではパイプになりません。
「忘れないように私もメモしていたのですが、自分から『給食終わったら飲むから忘れてたら言うてな』と友だちに頼んでいるのです。大したもんでしょ。病気も子どもの成長のきっかけになるんですよね。ちゃんと飲みましたよ。ご安心を!」(先生より)
頭をかかえていた割り算ができ、ほめてやってほしくて、
「お母さん、割る数が2ケタの割り算今日できるようになりましたよ。お母さんの目の前で486÷73をするので、うんと喜んでやってくださいね」(先生より)
「ありがとうございます。私がガミガミ言いすぎて自信なくさせていたのかと反省。久しぶりに頭をなでてほめてやりました」(母より)
「まあ、頭をなでてほめてくださったんですね。そりゃあ、けんちゃん嬉しかったでしょうね。大丈夫、あせらずやりましょね」(先生より)
■元気を届ける
参観と懇談会のあった翌日です。「四年生になってさすがです。本を読む声にもやる気が出ていて、仕事休んで来たかいがあったと嬉しくなりました。懇談会では自分の子育てを振り返るいい機会になり、今晩はゆっくり子どもの話を聴いて一緒に遊んでやろうと思えました。次の懇談会にも参加したくなりました」。
こんなたよりをいただくと、疲れがとれて、今日もがんばるか、と元気をもらいます。
連絡帳一冊が先生に大きな元気を届けるのです。年度末など終業式に、一言ねぎらう言葉を届けてくださるとありがたいです。来年も親や子の期待に応える仕事をしよう、と教師もやる気が出ます。
反対に、親をがっかりさせ元気をなくさせる場合もあります。毎日のように学校から「またケンカして、ともくんをたたき、厳しく叱りましたが、おうちでも二度とないようにさらに厳しくしつけてください」などと書かれると、思わずわが子を感情的に叱りとばしますよね。学校でのケンカを家庭でもう一度厳しく叱れ、と言われたら、子どももたまったものではありません。
また、親が心をこめて連絡帳にお話を届けても、ハンコ一つ押しただけで返却されたのでは、もうあの先生に話を届けたいと思わないでしょう。
生きたパイプになり、安心や喜びや励ましを届けあう連絡帳にしたいものです。
最後に一つ。最近、親から非常に感情的かつ攻撃的な文面の連絡帳が届くことがあり、先生方が頭を痛めています。
確かにもう少し常識をわきまえた文面であればと思いますが、子育ての不安をこんな形で出してくるのです。それでも担任に聞いてほしいからこそペンをとっているのです。
頭ごなしに反論を書かず、「ご心配でしたね。明日ゆっくり話を聞かせていただきたいので、お時間とっていただけませんか」と書き、顔を合わせて話をすると、親御さんの心も優しく溶けていくことでしょう。
(とさ・いくこ 中泉尾小学校教育専門員・大阪大学講師)