月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

マツオウジは毒キノコ

2012-05-19 20:35:39 | キノコ料理
三重県菰野町でマツオウジを採取、網焼き用に若いもの3本を採取して、夕食として調理した。

生焼け状態での中毒事例があり、弱火で念入りに火を通す。以前食べたとき、成菌の網焼きで舌がいがらっぽく感じたので、若いものを選んだのだが、それでも食べた直後から、かなりの違和感をおぼえることになった。

頭痛まではいかないものの、頭の芯が鉛を埋め込んだようにズシーンと重く感じる。少しクラクラして、こころなしか眼の焦点が定まらない。食べる前にはいい匂いと感じていたマツオウジの香りも食後は不快臭にしか感じない。時間の経過とともに胸にムカつきを覚え、数時間消えなかったが、嘔吐までは至らなかった。症状は翌朝には回復した。ちなみに食べたのは小ぶりのもの一本半。

特徴的なのは食べた直後から不快を覚えることで、今回は1分とかからず症状が現れた。おそらく残りを全部食べていたら、30分としないうちにトイレに駆け込み嘔吐していたことだろう。これだけ早く症状が出れば、毒成分は吸収される前に排出されるので、逆に安全だとも言える。

試しに残したキノコを一度ゆでこぼし、水にさらしてアク抜きしてから汁ものに入れて食べてみたが、これはなんともなかった。毒成分は水に溶け出るらしい。網焼きはキノコの旨みを逃がさず、しかも香りを引き出す調理法ではあるが、毒キノコである場合、毒成分も逃がさず濃縮するため、リスクが高い。わずかでも疑いのあるキノコは避けた方が無難だ。

ちなみにマツオウジ、図鑑では注意付きで食べられるとしてある図鑑が多い。実際、平気で食べている人も多いようだ。
キノコの毒性は、当たる当たらないに個人差があり、またキノコそのものにも個体差、地域差があるので、多分それなのだろう。いずれにしろ死ぬほどの毒性はない。

それにしても今回感じたのは「本能に従え」ということだ。思えば前回食べたときも、舌はおいしいと感じていたのに、全く箸が進まないので変だな、と思っていたのだ。今回も、最初の一切れを食べたときに本能がヤメロと叫んでいるのを感じていたのだが、理性でそれを抑え込んで三切れまで食べてしまった。

きっと人間にも食べられるものと食べられないものを峻別する能力が備わっているのだろう。原始時代の人間は、もっと感覚がするどかったはずだ。何が食べられて、何が食べられないのかなどはもちろん、もしかしたら薬草なども本能だけで見分けていたかもしれない。またひとつ勉強になった。

先日の記事で、無責任にも「若いものは網焼きで」などと書いてしまい申し訳ありませんでした。特に毒キノコに関しては一歩間違えば大事故につながるので、今後軽々しい判断で発言しないよう気をつけます。