月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

『よくわかる日本のキノコ図鑑』

2013-08-30 19:35:22 | キノコ本
『よくわかる日本のキノコ図鑑』 キノコ雑学研究倶楽部 編

ツヤツヤの表紙、カクカクのシルエット、カバーなし、そして安っぽい装丁……出た!これぞ
ワンコインきのこ図鑑。

廉価(600円)で入手できるオールカラーキノコ図鑑。ワンコイン(ごめん、ツーコインだな)だけあって、書店で売るのではなく、コンビニなんかで並べることを前提として作ったように思う。この本が出版されるにあたって、どのような客層が、どのようなシチュエーションでこの本を買うと思ったのか、企画段階でのプレゼンが非常に気になるところだが、それはさておき。

掲載種数は約90種。章立てが独特で、掲載キノコは
第1章『美人キノコ写真館』
第2章『危険!毒キノコ』
第3章『食べられるキノコ』
第4章『森を彩るキノコたち』の順に紹介されている。

目を引くように、美しいキノコを巻頭に持ってきたのはわかるとして、毒キノコが食べられるキノコより先に配置されていることに注目。
従来のキノコ図鑑の大半は「食べられるキノコを調べるため」という明確な目的を持って出版されてきた事実を考えると、この逆転はけっこう意味が大きい。

おそらく、この本を作る際の基本方針として、編集者はこう考えたのであろう。
『コンビニを利用するような客が、天然のキノコに期待する姿は「美味な自然食材」ではない。きっと彼らが望むのは「アヤシイ植物」としてのキノコであろう!』と。

たしかに近年の「こびとづかん」や「なめこ」のフィーバーを見るに、「アヤシイ」にもそれ相応の市民権が生まれたのは確かなことだ。

なるほど、そう考えれば表紙のデザインも納得がゆく。色彩をおさえた黒っぽいバックにボンヤリ光るようにして浮かぶブナシメジは、さながら丑三つ時の幽霊。ページ下の青文字は心霊写真特集とかに欠かせないホラーフォントが使われており、ページ上の『よくわかる日本の』の赤文字はよく見ると血が滲んでいる……!

……てのはまあウソだけどね。


しょっぱながベニテン。第一章は『美人キノコ』とかいいながら、セレクションが異常にシブい。ヒトクチタケとかアクニオイタケとか。なにゆえ(笑)


ドアップ写真が好きらしい。印刷画質はイマイチ、いやイマニ…ニイテンゴくらい。でもこの価格で250ページオールカラーなんだから褒めてあげよう。
テキストは意外と頑張っていて、特に毒キノコの中毒症状の解説はふるっている。なお、この本で、山で採ってきたキノコの種類を調べるのは無理。掲載種数の少なさを見ても、索引がないのを見ても、そういうふうに作っていないことがわかる。


自宅で菌床キノコ栽培の記事!第五章以降のキノコ雑学コーナーやコラムは初歩的な内容ながら、かなり頑張って書いている。キノコ読み物としては一般の入門書に引けをとらないぞ。巻末の『キノコ分類表』、ひそかに使える(^_^;)

総合的に見て、ツーコインきのこ図鑑としては頑張っていると思うが、コンビニでこれを買う人ってどんなだろう……という邪念が頭にまとわりついてはなれない。あたかも呪いのように。
ハッ!やはり心霊キノコ図鑑であったか……!!


ちなみに、写真提供しているのが
『ドキッときのこ』竹しんじさん
『ゆめきのこ』高橋洋一さん
『遅スギル』osoさん
いずれも名うてのキノコ写真家だけに印刷画質が悪いのが惜しまれる。