昨日は文楽へ。
16時開演の予定だが、前が押して開場が遅くなり、
少し開演が遅れた。
平日とは言え、入りは酷い。
2割は入っていたが、3割は入っていなかったのではないかな。
2等に到っては2割足らずか。
事前にネットで買ったのだが、
別に当日、席を選んで買っても良かった。
「嬢景清八嶋日記」
花菱屋の段
「嬢景清八嶋日記」のタイトルくらいは知っていたのだが、
見るのはおそらく初めて。
後段の「日向嶋の段」の方が有名だと思う。
景清の娘が女郎屋に、身を沈めて金を作ろうとやってくる。
その女房、主といろいろやりとりがあり、
クドキがあったりして、
結局まず景清の流されている日向の国に向かうところまで。
千歳大夫は悪くなかったが、
何しろ長い。
主の思いやり、クドキなど、聞かせどころはあると思うが、
基本は「日向嶋の段」への仕込であり、
1時間やる程の内実はないだろう。
ちと眠くなった。
日向嶋の段
景清の娘が、景清が流されている日向にやってきての場面。
盲目の景清の出、どうも歩く際の腰のおさまりが悪い。
これは左遣いの問題かな?
やけにふらふらして、人間が歩いているように見えない。
景清が娘と会い、直接は金を受け取らないが上手く周りの人間経由で渡り、
それが娘が身を沈めて作った金だと分かった景清が嘆く、
というあたりまでは、まあ分かるのだが、
その後頼朝の元に向かう場面がよく理解できなかった。
この後、再度殺そうとして結局失敗するんだっけ?
そのあたりは通しでやれば、もう少し見えてくるところかも。
眠かったせいでもあるだろうが、
咲大夫の声も一本調子に感じた。
「近頃河原の達引」
四条河原の段
「堀川」に比べるとあまり出ない段か。
ただこの場面が出ることで、「堀川」が分かり易くなった。
勘十郎の伝兵衛に柔らかな雰囲気があり、思ったより良かった。
ただ最後の去る場面で、足取りが少し軽いと感じた。
人を殺した重み、これからの心中を思わせる雰囲気が欲しいと思う。
堀川猿廻しの段
前半は住大夫。
やはり格が違うのだな。
声は以前ほど出ていないと思う(三味線で聞こえづらいところもあった)のだが、
科白は聞き取りやすい。
きっちり口を動かし、腹から語っているのだろうな。
与次郎の盲目の母が稽古をつけるところで
「鳥辺山」が入る。
これが、先ほどの「四条河原の段」の
「河原で侍を殺す」場面と重なってくる。
人形の三味線の手が、床の三味線の手と若干ずれている感じ。
後半は津駒大夫。
声は住大夫より出ているのだが、
やはり詞章が聞き取りづらいところが散見された。
猿廻しの与次兵衛さんの作り方が難しいな。
実直であり、微妙に愚かな人の雰囲気があるかないか、くらい。
個人的には(歌舞伎だが)我當が良いと思っているのだが。
この日のは、少し一貫しなかった感じ。
最初は伝兵衛を許そうとしなかった母と兄が、
書置きを読まれて諦め、結局二人で連れ立って行くことを許すあたりの
遷移や転換がはっきりしない。
どうも浅い感じ。
これは猿廻しの場面も同じで、
お初徳兵衛の祝言の形を踏まえつつ
目の前のお俊伝兵衛を祝う、
あるいは二人との別れを惜しむ、という気持ちが必要だと思うのだが、
そこが弱い。
途中で「お俊」と言い掛けたりするのだが、
それが突発的に出る感じで、
もっと蓄積された感情の発露、という雰囲気が欲しい。
語る側の問題が一番大きいのかな。
それを受ける与次兵衛、
さらには猿廻しを聞いているお俊伝兵衛、母親にも
他所事を自らに引き寄せて物思いする感じが弱く、
単に座っているだけのように見える。
猿廻しでは、与次兵衛の棒を揮い方があまり良くない。
リズムが三味線に合っていないところ、常に動いているところ、
そのあたりから常に叩いているようで、動物虐待に見えてしまった。
8時半頃終演。
不満はいろいろあるが、初めて見たものもあって、
全体としてはまあまあ。
ただ、この不入りはどうにもならんのかなあ…。
昔から文楽は、大阪よりも東京の方が入るものらしいが。