日曜、動楽亭の昼席後。
まっすぐ帰るか迷ったが、結局「高津の富亭」へ。
行ってみると、40人程度の入り。
女性が8割くらい。
「二人ぐせ」(生寿):△-
前に見たときに比べて、顔の歪め方など、生喬っぽさが増していた気がする。
私はあまり良いクセと思えないのだが。
最初のまっちゃんに何とか言わせようと話を振っていく場面、
リズムはまあまあ。
ただやはり、「つまらん」の途中まで言ってしまうところ、
どうしても「つ」や「つま」という科白になってしまっており、
言いかけたのを途中で止めている感じがしない。
程度問題ではあるのだが、もう少し自然に「止めた」感じが欲しい。
「大根百本」で、「田舎の親類から」に対してまっちゃんが「えっ」と聞き返すのは、
松喬もやっていると思うが、あまり好みではない。
「トントンといく」と言われてきているのだから、
「えっ」と言われてもそのまま話を続けそうな気がする。
ここで話の腰が折られるだろう、と客も想像してしまうし。
個人的には、いきなり「田舎ってどこや」と聞き返す方が好み。
将棋の場面は普通。
まっちゃんが将棋が上手いのであれば、
真剣に考えた上で進めて、
詰んでいないのに「これで詰み」と言うのは、若干不自然。
このあたりはリアルリアルで済まない部分かも知れないが。
漫談(南湖):△+
いつもマクラでやっている、子どもが産まれた話をたっぷり。
産まれる前のお参りや胎教の話は初めて聞いた。
まあ、面白かったが、ネタをやって欲しかったなあ。
「七度狐」(たま):△+
マクラは楽屋話。
個人的には、あまり良いとは思えない。
ネタはいろいろ変えているようだが、別に悪くない。
最初の「七度狐」の説明が少しごちゃごちゃした。
「悪い奴な」なしで狐による騙しに入っていく。
大井川で実際に深みに嵌まるのは初めて見た。
溺れかけているところで百姓に気を付けてもらう流れ。
「麦畑を踏み荒らされた」百姓が、
当人の科白にしても喜六清八の科白にしても、あまり被害者っぽくなかった。
これはこれで良いかな。
銅鑼に恐がっている表情を合わせて、
次の騙される場面に入っていく。
「実は騙されていた」ではなく、
最初からどのように騙されるかを楽しむような作り。
まあ、テンポは良いが、味気ないとも感じる。
「ここは尼寺」などと庵主さんがいったん断る場面はなく、あっさり本堂。
ここは進行が早くて良かった。
「雑炊」で「フグの肝」やら「トリカブト」やらを出すのだが、
個人的には「べちょたれ雑炊」のそこらへんのものが適当に入っている感じが、
妙にリアルに気色悪くて、好みではある。
庵主さんが化け物の説明をしていくところに、
何か恐がらせる邪心があった。
庵主さんは普通に喋っているのだが、聞く側は恐ろしく感じる、という作りの方が、
恐さのレベルは深くなると思う。
恐い話の心算で語られると、若干興醒めする。
おばんを上げてきた連中との会話が、やけにごちゃごちゃする。
早めに喜六清八側から「おさよ後家」という名前を出してしまった方が
話は早く進むだろう。
他の部分はトントンと進んでいた分、ここが非常にもたついた印象。
伊勢音頭は、喜六は自分から進んで歌う。
おばんに舐められていると思ったら、牛に舐められていた、というのは良いと思う。
ネタの終わり方は、もう少し整理した方が良さそう。
漫談(寒空はだか):○
寒空はだかという名前は、喬太郎のマクラなどでも聞いたことがあったのだが、
見るのは初めて。
30分以上やっていたと思う。タップリ。
全体に声が小さい。特に語尾が消え入るよう。
後ろの方の人は聞こえなかったのではないかな。
ネタは楽屋ネタ、浅草ネタ、政治ネタ、あとは歌がメイン。
どれも面白かったが、いろいろやった分、少し中途半端な感じはした。
時間がなければ歌に絞るのかも知れない。
まっすぐ押してウケを取りにくる、というよりは、
少しひねったり、引く味が強い。
「東京タワーの歌」、噂には聞いていたが、実際には初めて聞いた。
この歌そのものは、別にウケを取るものではないのだな。
対談(はだか・たま・南湖)
どこかで南湖がはだかをよく知っている、と見た記憶があったのだが、
実際には2回くらい会った程度らしい。
たまは1週間繁昌亭で一緒だっただけ、ということで、
どちらもあまり知らないままの対談。
間が空きがち。
リズムが合わなかったように思う。
あまり面識がない分、
内容的には、他では話されていないようなものが多かったのではないかな。
「初天神」(たま):○-
ネタを拍手で決める。
あまり時間がなかったようで、「青菜」をやりたかったようなのだが、
結局「初天神」。
このあたりの客席とのやりとりは悪くないが、
最初少し「初天神」をやって「やっぱりやめましょうか」は余計だと思う。
ネタは、本人はダレているのかも知れないが、
見ている側としては面白かった。福笑の影響が強いのかな。
向かいのおっさん、四角い行灯から、
飴、みたらし、凧揚げのフルバージョン。
全体に、子どもが可愛い中に少しませている、という作りではなく、
単に憎たらしい、ひねた子どもになっている。
向かいのおっさんの節は、かなりエロく。
寅ちゃんは全て分かっているようで、
思わせぶりでおっさんを翻弄する科白廻し。
落語的な「子どもらしさ」はあまりないなあ。
エロ話としては面白かった。
四角い行灯は普通。
この話を入れることで、
寅ちゃんが道中で「四角い行灯の店に行く」と叫んで父親を脅す仕込みにしている。
飴、みたらしと、父親も楽しんでいる感じ。
みたらし屋に父親が怒鳴るところ、
子どもにやられた鬱憤晴らしの雰囲気が出ていて良かった。
その後の凧に到ると、
父親が積極的に買いに行き、子どもは父親に引きずられている。
糸を財布ぐち買ったことに対しても、
「よく分かっている」と喜ぶ。
もう少し「父親らしさ」がベースにあった上で遊んでいる方が好みではあるが、
まあ、これはこれで面白かった。
結局、終演9時半前。
満腹でした。
【おまけ】
動楽亭から高津の富亭に向かう途中、
松屋町筋で見つけた墓所の案内。
まっすぐ帰るか迷ったが、結局「高津の富亭」へ。
行ってみると、40人程度の入り。
女性が8割くらい。
「二人ぐせ」(生寿):△-
前に見たときに比べて、顔の歪め方など、生喬っぽさが増していた気がする。
私はあまり良いクセと思えないのだが。
最初のまっちゃんに何とか言わせようと話を振っていく場面、
リズムはまあまあ。
ただやはり、「つまらん」の途中まで言ってしまうところ、
どうしても「つ」や「つま」という科白になってしまっており、
言いかけたのを途中で止めている感じがしない。
程度問題ではあるのだが、もう少し自然に「止めた」感じが欲しい。
「大根百本」で、「田舎の親類から」に対してまっちゃんが「えっ」と聞き返すのは、
松喬もやっていると思うが、あまり好みではない。
「トントンといく」と言われてきているのだから、
「えっ」と言われてもそのまま話を続けそうな気がする。
ここで話の腰が折られるだろう、と客も想像してしまうし。
個人的には、いきなり「田舎ってどこや」と聞き返す方が好み。
将棋の場面は普通。
まっちゃんが将棋が上手いのであれば、
真剣に考えた上で進めて、
詰んでいないのに「これで詰み」と言うのは、若干不自然。
このあたりはリアルリアルで済まない部分かも知れないが。
漫談(南湖):△+
いつもマクラでやっている、子どもが産まれた話をたっぷり。
産まれる前のお参りや胎教の話は初めて聞いた。
まあ、面白かったが、ネタをやって欲しかったなあ。
「七度狐」(たま):△+
マクラは楽屋話。
個人的には、あまり良いとは思えない。
ネタはいろいろ変えているようだが、別に悪くない。
最初の「七度狐」の説明が少しごちゃごちゃした。
「悪い奴な」なしで狐による騙しに入っていく。
大井川で実際に深みに嵌まるのは初めて見た。
溺れかけているところで百姓に気を付けてもらう流れ。
「麦畑を踏み荒らされた」百姓が、
当人の科白にしても喜六清八の科白にしても、あまり被害者っぽくなかった。
これはこれで良いかな。
銅鑼に恐がっている表情を合わせて、
次の騙される場面に入っていく。
「実は騙されていた」ではなく、
最初からどのように騙されるかを楽しむような作り。
まあ、テンポは良いが、味気ないとも感じる。
「ここは尼寺」などと庵主さんがいったん断る場面はなく、あっさり本堂。
ここは進行が早くて良かった。
「雑炊」で「フグの肝」やら「トリカブト」やらを出すのだが、
個人的には「べちょたれ雑炊」のそこらへんのものが適当に入っている感じが、
妙にリアルに気色悪くて、好みではある。
庵主さんが化け物の説明をしていくところに、
何か恐がらせる邪心があった。
庵主さんは普通に喋っているのだが、聞く側は恐ろしく感じる、という作りの方が、
恐さのレベルは深くなると思う。
恐い話の心算で語られると、若干興醒めする。
おばんを上げてきた連中との会話が、やけにごちゃごちゃする。
早めに喜六清八側から「おさよ後家」という名前を出してしまった方が
話は早く進むだろう。
他の部分はトントンと進んでいた分、ここが非常にもたついた印象。
伊勢音頭は、喜六は自分から進んで歌う。
おばんに舐められていると思ったら、牛に舐められていた、というのは良いと思う。
ネタの終わり方は、もう少し整理した方が良さそう。
漫談(寒空はだか):○
寒空はだかという名前は、喬太郎のマクラなどでも聞いたことがあったのだが、
見るのは初めて。
30分以上やっていたと思う。タップリ。
全体に声が小さい。特に語尾が消え入るよう。
後ろの方の人は聞こえなかったのではないかな。
ネタは楽屋ネタ、浅草ネタ、政治ネタ、あとは歌がメイン。
どれも面白かったが、いろいろやった分、少し中途半端な感じはした。
時間がなければ歌に絞るのかも知れない。
まっすぐ押してウケを取りにくる、というよりは、
少しひねったり、引く味が強い。
「東京タワーの歌」、噂には聞いていたが、実際には初めて聞いた。
この歌そのものは、別にウケを取るものではないのだな。
対談(はだか・たま・南湖)
どこかで南湖がはだかをよく知っている、と見た記憶があったのだが、
実際には2回くらい会った程度らしい。
たまは1週間繁昌亭で一緒だっただけ、ということで、
どちらもあまり知らないままの対談。
間が空きがち。
リズムが合わなかったように思う。
あまり面識がない分、
内容的には、他では話されていないようなものが多かったのではないかな。
「初天神」(たま):○-
ネタを拍手で決める。
あまり時間がなかったようで、「青菜」をやりたかったようなのだが、
結局「初天神」。
このあたりの客席とのやりとりは悪くないが、
最初少し「初天神」をやって「やっぱりやめましょうか」は余計だと思う。
ネタは、本人はダレているのかも知れないが、
見ている側としては面白かった。福笑の影響が強いのかな。
向かいのおっさん、四角い行灯から、
飴、みたらし、凧揚げのフルバージョン。
全体に、子どもが可愛い中に少しませている、という作りではなく、
単に憎たらしい、ひねた子どもになっている。
向かいのおっさんの節は、かなりエロく。
寅ちゃんは全て分かっているようで、
思わせぶりでおっさんを翻弄する科白廻し。
落語的な「子どもらしさ」はあまりないなあ。
エロ話としては面白かった。
四角い行灯は普通。
この話を入れることで、
寅ちゃんが道中で「四角い行灯の店に行く」と叫んで父親を脅す仕込みにしている。
飴、みたらしと、父親も楽しんでいる感じ。
みたらし屋に父親が怒鳴るところ、
子どもにやられた鬱憤晴らしの雰囲気が出ていて良かった。
その後の凧に到ると、
父親が積極的に買いに行き、子どもは父親に引きずられている。
糸を財布ぐち買ったことに対しても、
「よく分かっている」と喜ぶ。
もう少し「父親らしさ」がベースにあった上で遊んでいる方が好みではあるが、
まあ、これはこれで面白かった。
結局、終演9時半前。
満腹でした。
【おまけ】
動楽亭から高津の富亭に向かう途中、
松屋町筋で見つけた墓所の案内。