昨日は動楽亭へ。
今月2回目。
「癪の合薬」(二乗):△+
前座なのに羽織を着て上がってくる。
マクラは謎掛けの話など。
上手く客を巻き込める題材、持って行き方だと思う。
ネタは要は「やかんなめ」なのだが、
珍しいネタを演ってくれた、という感じ。
恐らく染弥からかな。
表情の付け方などがそれっぽい。
癪について最初に説明していたのだが、
個人的には「女性の病気」であること、
起こる人はよく起こることを中心に仕込んでおいた方が良いと思う。
その方が「癪が起こった時にはやかんを常に使う」話が
伝わりやすいのではないか。
侍の頭が禿げていることを可内との「風が快い」といった会話で仕込んでいた。
これで充分であり、
お女中や侍自身が「ハゲ」という言葉をわざわざ使うべきではないと思う。
少し野暮ったい。
侍が四つん這いになるのはまだ良いが、
やかんの形をやらせる(口をとがらせる)までいくと
少し行き過ぎかな、と感じた。
全体には侍の人の良さ、
それが振り回されるところがウケにつながっており、
良かったと思う。
「黄金の大黒」(雀五郎):△
住んでいる家の話をし、「戸無し長屋」「釜1つ裏」の話をしてネタへ。
基本的に陰気な人だと思うのだが、
以前に比べてそれなりに陽気な感じで喋れるようになっている感じ。
「犬」「猫」から口上、リンゴ、寿司、コノワタ。
きっちり喋っているが、もう一歩押しても良いかな、と感じた。
例えば「犬を食べた」「猫を食べた」から家賃の話に移るのだが、
3つ目に何かギャグになるようなものを入れるとか、
コノワタにしてもくしゃみして鼻から出すだけではなく、
自分で引っ張り出す、とか、
もう一度食べる、とか。
基本的に上品ではないネタなので、
そのあたりはもう少し押しても良いと思う。
「掛け取り」(福車):△
事始めの話など。
「暴力団」の話について、自分の意見を言うのは良いし、個人的には同感なのだが、
マクラとしては別に面白くない。
面白くするために喋っている訳でもないのかな。
指輪をしたまま落語をするのは引っ掛かる。
3代目じゃあるまいし。
落語の登場人物は指輪をしていない。
そのあたりの想像を妨げる要素は、基本的に、できるだけ省くべきだろう。
まして、マクラからネタに入る時にメガネを外しており、
その価値観であれば平仄が合わないと思う。
「狂歌」「喧嘩」。
芝居も義太夫も万歳もないと、ちと寂しいな。
家主にせよ借金取りがかなり強面で作られているのだが、
個人的には商人であり、お客さんに対する、というベースの上で
「金を払わないから」強面になっている、という重層が必要かな、と思う。
家主の「狂歌」と聞いた時の転換は良かった。
如何にも好きな人が同好の士を見つけた、という感じ。
これが出るのであれば、
他に「芝居」「義太夫」でも転換を利かせられるだろうから、
次に「喧嘩」になるのはちと勿体ない。
「千早ふる」(鯉昇):○+
緩和口調で、のんびりとしたマクラ。
上方でハマるかな、と思ったがけっこうウケていた。
いろいろいじっている「千早ふる」。
竜田川がモンゴル出身、という設定で
いろいろなギャグを入れていた。
「豆腐屋のパオが倒れている」とか
「ラクダに捕まって千早がやってくる」とか
「チョモランマに当たって帰ってくる」とか。
最初少し上下が狂って、少しヒヤッとした。
「金さん」が裸足で来ている、というところから
雑巾で拭かせたり掃除だけして帰らせようとしたり、
最後「もう雑巾も乾いている、帰れ」と言ったり
つなげていくところ、自然だし面白く作っていた。
「千早ふる」の歌の流れを仕草で表現するとか、
「モンゴル」の設定(これは無茶っちゃあ無茶)以外にもいろいろ工夫していた。
途中でストーリー全体に言及するような科白
(「女乞食」を当てさせるのに「この話の中で、女は2人しか出ていないだろ」と言う)
があり、個人的にはそこはあまり好みではない。
あと、サゲを変えていたが、
「モンゴル」の設定に引っ掛けたものだと尚良いと思う。
「墓供養」(三喬):○-
「秘密クラブのような落語会」という話で
学生時代に体験した落語会をいくつか紹介。
軽く「墓供養」の説明をしてネタへ。
ここで「法事の一種」という仕込をしておいて、
ネタの中での「法事なのにそんな話をするな」といったツッコミを生かす。
まあ、珍しいネタ。
最初の「手伝いをする側の人間の名前を先に帳面につける」あたり、
以前よりいろいろ科白を足していたように思う。
そこまで丁寧に理由付けしなくても良いとは感じた。
「竹内日出男」「中川清」「長谷川多持」の3人で「六ちゃん」に入ったので、
「3代目は?」と少し引っ掛かった。
話の途中で隣からのツッコミを入れていた。
「法事」から離れた話の雰囲気を壊しかねないのでリスキーだと思うのだが、
特に壊さずに最後の「書いておこう」でウケを取れていた。
ドモリは音によってドモる音とドモらない音があるんだな。
これは初めて気付いた。
「オットセイか」と突っ込まれたドモリが
「球ない」と返すところ、初めて聞いたが面白かった。
どこまでドモリにイチビる要素があるか、というところなのだが、
まあ、許容範囲かな、と思う。
「植木屋娘」(呂鶴):△+
小さな声でマクラを振り出して「大丈夫かな」と思ったが、
途中で大きくなっていった。
ネタは若干空回り気味。
歯か舌の調子が悪いのかな?
植木屋の科白が言い切れていない感じ。
そのためか、ウケにつながっていなかった。
和尚さん、衣をたくしながら出てきて
話し始める前に手を合わせるんだな。
今までこのネタで、あまり意識して見ていなかったが。
伝吉の「侍の跡取り」の雰囲気が
それとなく出るのは流石。
全体には、まあ、普通。
ただ、子どもが出来た、という話を聞いた後の和尚と伝吉の会話がひっかっかる。
サゲは「根は拵え物」なのだが、
その前で伝吉も「1度だけ」と告白しているし、
和尚さん・伝吉ともそれが悪かったと思っている。
このあたりを比較的重く、長く喋っているのだが、
その流れでこのサゲがくると、伝吉を非常に嫌な人間と感じてしまう。
サゲは終わるための「符号」という面があるから
あまり気にしなくても良いかも知れないのだが、
それならばその前段の会話も軽く流した方が良いと思った。
結局、20人程度の入り。
前回も平日だったが、その際は70人程度の入りだった。
今月から20日間開催になり、
11日以降は米朝系以外の出演者メインになっているが、
そもそも動楽亭に来るお客さんは米朝系の噺家目当ての人が多いのかも知れないな。
今月2回目。
「癪の合薬」(二乗):△+
前座なのに羽織を着て上がってくる。
マクラは謎掛けの話など。
上手く客を巻き込める題材、持って行き方だと思う。
ネタは要は「やかんなめ」なのだが、
珍しいネタを演ってくれた、という感じ。
恐らく染弥からかな。
表情の付け方などがそれっぽい。
癪について最初に説明していたのだが、
個人的には「女性の病気」であること、
起こる人はよく起こることを中心に仕込んでおいた方が良いと思う。
その方が「癪が起こった時にはやかんを常に使う」話が
伝わりやすいのではないか。
侍の頭が禿げていることを可内との「風が快い」といった会話で仕込んでいた。
これで充分であり、
お女中や侍自身が「ハゲ」という言葉をわざわざ使うべきではないと思う。
少し野暮ったい。
侍が四つん這いになるのはまだ良いが、
やかんの形をやらせる(口をとがらせる)までいくと
少し行き過ぎかな、と感じた。
全体には侍の人の良さ、
それが振り回されるところがウケにつながっており、
良かったと思う。
「黄金の大黒」(雀五郎):△
住んでいる家の話をし、「戸無し長屋」「釜1つ裏」の話をしてネタへ。
基本的に陰気な人だと思うのだが、
以前に比べてそれなりに陽気な感じで喋れるようになっている感じ。
「犬」「猫」から口上、リンゴ、寿司、コノワタ。
きっちり喋っているが、もう一歩押しても良いかな、と感じた。
例えば「犬を食べた」「猫を食べた」から家賃の話に移るのだが、
3つ目に何かギャグになるようなものを入れるとか、
コノワタにしてもくしゃみして鼻から出すだけではなく、
自分で引っ張り出す、とか、
もう一度食べる、とか。
基本的に上品ではないネタなので、
そのあたりはもう少し押しても良いと思う。
「掛け取り」(福車):△
事始めの話など。
「暴力団」の話について、自分の意見を言うのは良いし、個人的には同感なのだが、
マクラとしては別に面白くない。
面白くするために喋っている訳でもないのかな。
指輪をしたまま落語をするのは引っ掛かる。
3代目じゃあるまいし。
落語の登場人物は指輪をしていない。
そのあたりの想像を妨げる要素は、基本的に、できるだけ省くべきだろう。
まして、マクラからネタに入る時にメガネを外しており、
その価値観であれば平仄が合わないと思う。
「狂歌」「喧嘩」。
芝居も義太夫も万歳もないと、ちと寂しいな。
家主にせよ借金取りがかなり強面で作られているのだが、
個人的には商人であり、お客さんに対する、というベースの上で
「金を払わないから」強面になっている、という重層が必要かな、と思う。
家主の「狂歌」と聞いた時の転換は良かった。
如何にも好きな人が同好の士を見つけた、という感じ。
これが出るのであれば、
他に「芝居」「義太夫」でも転換を利かせられるだろうから、
次に「喧嘩」になるのはちと勿体ない。
「千早ふる」(鯉昇):○+
緩和口調で、のんびりとしたマクラ。
上方でハマるかな、と思ったがけっこうウケていた。
いろいろいじっている「千早ふる」。
竜田川がモンゴル出身、という設定で
いろいろなギャグを入れていた。
「豆腐屋のパオが倒れている」とか
「ラクダに捕まって千早がやってくる」とか
「チョモランマに当たって帰ってくる」とか。
最初少し上下が狂って、少しヒヤッとした。
「金さん」が裸足で来ている、というところから
雑巾で拭かせたり掃除だけして帰らせようとしたり、
最後「もう雑巾も乾いている、帰れ」と言ったり
つなげていくところ、自然だし面白く作っていた。
「千早ふる」の歌の流れを仕草で表現するとか、
「モンゴル」の設定(これは無茶っちゃあ無茶)以外にもいろいろ工夫していた。
途中でストーリー全体に言及するような科白
(「女乞食」を当てさせるのに「この話の中で、女は2人しか出ていないだろ」と言う)
があり、個人的にはそこはあまり好みではない。
あと、サゲを変えていたが、
「モンゴル」の設定に引っ掛けたものだと尚良いと思う。
「墓供養」(三喬):○-
「秘密クラブのような落語会」という話で
学生時代に体験した落語会をいくつか紹介。
軽く「墓供養」の説明をしてネタへ。
ここで「法事の一種」という仕込をしておいて、
ネタの中での「法事なのにそんな話をするな」といったツッコミを生かす。
まあ、珍しいネタ。
最初の「手伝いをする側の人間の名前を先に帳面につける」あたり、
以前よりいろいろ科白を足していたように思う。
そこまで丁寧に理由付けしなくても良いとは感じた。
「竹内日出男」「中川清」「長谷川多持」の3人で「六ちゃん」に入ったので、
「3代目は?」と少し引っ掛かった。
話の途中で隣からのツッコミを入れていた。
「法事」から離れた話の雰囲気を壊しかねないのでリスキーだと思うのだが、
特に壊さずに最後の「書いておこう」でウケを取れていた。
ドモリは音によってドモる音とドモらない音があるんだな。
これは初めて気付いた。
「オットセイか」と突っ込まれたドモリが
「球ない」と返すところ、初めて聞いたが面白かった。
どこまでドモリにイチビる要素があるか、というところなのだが、
まあ、許容範囲かな、と思う。
「植木屋娘」(呂鶴):△+
小さな声でマクラを振り出して「大丈夫かな」と思ったが、
途中で大きくなっていった。
ネタは若干空回り気味。
歯か舌の調子が悪いのかな?
植木屋の科白が言い切れていない感じ。
そのためか、ウケにつながっていなかった。
和尚さん、衣をたくしながら出てきて
話し始める前に手を合わせるんだな。
今までこのネタで、あまり意識して見ていなかったが。
伝吉の「侍の跡取り」の雰囲気が
それとなく出るのは流石。
全体には、まあ、普通。
ただ、子どもが出来た、という話を聞いた後の和尚と伝吉の会話がひっかっかる。
サゲは「根は拵え物」なのだが、
その前で伝吉も「1度だけ」と告白しているし、
和尚さん・伝吉ともそれが悪かったと思っている。
このあたりを比較的重く、長く喋っているのだが、
その流れでこのサゲがくると、伝吉を非常に嫌な人間と感じてしまう。
サゲは終わるための「符号」という面があるから
あまり気にしなくても良いかも知れないのだが、
それならばその前段の会話も軽く流した方が良いと思った。
結局、20人程度の入り。
前回も平日だったが、その際は70人程度の入りだった。
今月から20日間開催になり、
11日以降は米朝系以外の出演者メインになっているが、
そもそも動楽亭に来るお客さんは米朝系の噺家目当ての人が多いのかも知れないな。