
年内最終週火曜、繁昌亭の昼席へ。
「よせぴっ!」を見ると「トリ福笑/中トリ松喬」と書かれていたが、
実際には「中トリ松枝」。
たぶん松喬入院のためではなく、間違いのためだと思う。
まあ、それでも他の顔ぶれも悪くないので行ってみた。
「運廻し」(佐ん吉):△+
東京/大阪の比較ネタがマクラ。
分かりやすいし穿っている、程の良いところ。
ネタは「金がない」「1升瓶割った」等なしで「運廻し」へ。
野菜、歌(肩たたき、でんでん虫)、「先年の」でサゲまでいかずに切る。
きっちりやっているが、
若干引くツッコミが多く、あまり大きなウケにつながらなかった。
ただ、このレベルの人が前座に出ると、
寄席としては安定するな。
「元犬」(智之介):△+
この人、久し振りに見た。
声の良い人だな。
何となく顔が雀喜に似ている、と思って見ていた。
「分かりづらいサゲ」みたいなことを言ってネタへ。
全体に、犬の人の良さや周囲の人の温かみなど、
快く聞けた。
祈っている内に毛が抜けて「自分が裸に気付く」など、
けっこう自然な流れで人間になる。
口入屋さんは「元が犬である」ことを分かって
町内のご隠居さん?に紹介する。
この隠居さんのニーズはいまいち分かりづらいな。
「犬だから」のギャグはおまわり、ちんちん、吠えるなど。
ごく普通。
(分かりにくい、という)サゲは「肩に枕」。
まあ、「サゲが難しい」を言わなくてもいいかな、と思う。
サゲで仕草をつけていた(枕の形を手で表現)が、
枕の場所が左右逆だったような気がする。
客から「犬」の字の形に見えるようにしないと分かりづらいだろう。
「猫の災難」(鶴二):○-
最近「繁昌亭大賞」を受賞したり、評価が上がっている人、という印象。
「鶴二」に改名してから見るのは初めてかも。
(昔は「鶴児」と書いていた)
酔っ払いが最初から飲む気、誰かに奢らせる気満々の「猫の災難」。
6代目や鶴志同様、押した後でふっと引くネガティブな発言でウケをとる流れ。
不愉快になりかねないテキストだと思うが、
酔っ払いの単純に「酒が好き」な気が通底しており、
特に不愉快にならず、安心して聞けた。
またハメの入る話も聞きたいな。
「津軽三味線」(来世楽):△+
女性2人で津軽三味線を持って出てくる。
素人名人会で審査員をしていた京極利則?の娘と弟子らしい。
基本的に弟子の方が喋り、娘はほぼ喋らない。
沖縄民謡と「じょんがら協奏曲」。
顔を合わせて出を合わせたり、調子を合わせたりする。
その「顔を合わせる」で雰囲気を作ろうとしているのかも知れないが、
少しその頻度が高過ぎて何となく素人っぽい感じになってしまったようにも思う。
女性が出るとやはり良い色替りになる。
「十徳」(文三):○
マクラは鎌倉での初高座の話。
落研時代に覚えたネタ・着物、芸名なし、って無茶な話だ。
出てくる若い男、笑顔でいろいろ酷いことを言う。
何となく文三自身に似ているような気もする。
このあたりの台詞でウケを取るところは流石。
「似ている」「みたいやな」「ような」は
特に強く言う訳ではない。
後の「似たり似たり」などでウケを取っていた。
サゲの「とっとく」の気がよく分からないネタなんだが、
あまり気を入れず、さらっと言っていた。
これでいいかな。
「素人浄瑠璃」(松枝):△+
「町内の連中」に断られるところは詳細にせず、
「二度と語らん」から再度語るところの転換も描かない「素人浄瑠璃」。
「寝床」を聞き慣れている身としては、
少し勿体ないと感じてしまう。
酔っ払って泣き上戸になるところは、
この人のニンでもあり、面白く聞けた。
「マジカル落語」(朝太郎):△+
ほとんどマジックもせず、うだうだ喋るのがメイン。
喋りは特に強く押す訳でなく、
味と言えば味。
ただ、声も動きも小さく、
繁昌亭の最後列まで届いているかどうかは疑問だな。
「星野屋」(文喬):×
マクラの穿ったところは面白かったが、ネタは最低。
まずテキストがメチャクチャ。
星野屋の旦那が妾にウソを吐く訳だが、
その台詞がいい加減過ぎる。
ウソを言って試そうとする気があったら、
もう少しまともな設定や順序立てをするだろう、と感じてイライラする。
あとは妾や旦那が奇声を発したり、適当なことを言ったりして
ウケを取ろうとするが、
客はバカではないからウケない。
ナメているのか。
江戸の「星野屋」を見たことがあれば、
インチキ・まがい物としか思えないだろう。
この人の高座は二度と見たくない、と感じてしまった。
きちんとやっている、というイメージを昔は持っていただけに残念。
「子ほめ」(歌之助):△
マクラの「どの程度分かっているか」テスト、といった発言は不愉快。
そんなことせんと普通に小咄やってきゃいいのに。
セコに見えてしまう。
ネタはあまり印象に残っていない。
前の文喬の酷さで精魂尽きていたからだろう。
この人の動きや顔芸の濃さがあまり好きでないのだが、
この「子ほめ」ではあまり気にならなかった。
特に良かった覚えもないが。
「桃太郎」(福笑):○
昔のパターンはなしで、現代の子どもを寝かせる場面。
「年齢もない昔なのに、大きく(?)なるのか」といった
子どものツッコミが入っていた。
子どもが現代的な「桃太郎」を話すところがメイン。
これがスペクタクルで、確かに父親が身を乗り出して聞くわな。
見得をしたり暴れたり、
「きびだんごだけで味方に付く、すぐ裏切るかも知れない」と穿つなど、
楽しく聞けた。
まあ、独自性をメインにすると
何度聞いても楽しめる、ものにならない恐れはあるが。
サゲは普通の「桃太郎」に戻って
「今日日の大人は罪がない」。
メンバーとしては悪くないが、
年末の平日昼ということもあって
2階は開けず、1階の6,7割の入り。
まあ、定席としてはこれくらいでも良いと思う。