

第1部と第2部が入れ替わる直前の日、
文楽劇場に行ってきた。
あまり好天でもない平日だったが、その割には悪くない入り。
1等席は前の方はほぼ埋まり、全体で7割程度の入りか。
2等席は8割程度の入り。
「七福神宝の入舩」
特に何と言うこともない景事。
七福神それぞれが芸事を見せていく、というもの。
三味線の曲弾きや琴・胡弓など、色々あったが、
浄瑠璃としては別に大したものでない。
曲弾きは面白かったけど。
主遣いが顔を出しているのだが、
昔はメインの場以外は、主遣いでも黒衣を被っていなかったっけ?
七福神の顔とそれぞれの主遣いの顔が船の上に並び、
正直、ちと鬱陶しい。
「菅原伝授手習鑑」
「茶筅酒の段」は白太夫が喜寿の祝いで「名を許された」と言ったり、
三兄弟の嫁さんが祝いに向けていろいろ働いて見せる場面。
松香大夫は初めて意識して聞いたが、
聞き取りやすくて悪くない。
「喧嘩の段」は梅王丸と松王丸の喧嘩場。
「訴訟の段」で白太夫が戻ってきて、
「勘当してくれ」と言う松王丸を受け容れ、
「大宰府の菅丞相に付き添う」と言う梅王丸を叱る。
このあたり、「喧嘩の段」の文字久大夫、
「訴訟の段」の千歳大夫とも、
ちと聞き取りづらい。
あと、「茶筅酒の段」から共通で気になったこと。
白太夫は、既に桜丸に「切腹」を申し入れられているはずであり、
そのハラがあるべきだと思うのだが、
どうもそのベースが薄いように感じた。
1つの幕の内で太夫が替わる場合、
その後何があるか踏まえて語るべきだ、と私は思うタチなのだが、
そうでもないのかねえ。
切は「桜丸切腹の段」。
住大夫は少し声量が落ちており、三味線に負けているところもあったが、
情といい言葉の聞き取りやすさといい、
やはり別格と感じてしまう。
特に桜丸がいよいよ切腹するあたり。
白太夫は一度は止め、その後諦めて切腹を認めてはいる。
しかしいざ切腹の段となると、
やはり息子であるから諦めきれない、といった感情が湧出してくる。
このあたりのハラが流石。
桜丸は蓑助だが、個人的には蓑助が春に回って女形のクドキを見せ、
桜丸は勘十郎がやってくれれば、と思った。
「卅三間堂棟由来」
文雀のお柳。
考えたら、前見たときも文雀は「葛の葉」をやっていた気がする。
柳が切られる音を聞いて崩れるお柳、
少し動きが乱れていたような気がする。
睦大夫、津駒大夫とも、
やはり聞き取りづらいところはあちこちに。
「字幕を見なくても(意味は兎も角)何と言っているか分かる」が
私の「聞き取りやすさ」の基準なのだが、
この基準って無茶なのかなあ。
「木遣り音頭」は「浄瑠璃息子」の最後で出てくるので、
その耳で聞いていた。
15時頃終演。
「文楽嫌い」と公言している市長が何を聞いたのかは知らないが、
演題・演奏ともあまり良くないものを聞いたのではなかろうか。
個人的には、この「桜丸切腹の段」レベルのものを聞いてから
判断して欲しい、と思った。