上方講談協会が南陵の命日に合わせて3日間開催する
「南陵忌」の講談会。
土曜は昼夜、東京から人間国宝たる一龍斎貞水が来演するということで、
他のメンバーを考慮に入れて土曜昼に行くことにした。
開場20分前に着いて20番位の整理券を受け取る。
通し券の客が優先入場し、その後入場。
結局50人程度の満員の入りと思う。
「左甚五郎伝より猫餅の由来」(南舟)
にこやかな表情で上がり、マクラを振る。
あまり講釈師らしくはないかも。
本題に入ると厳しい表情になる。
小田原の宿の手前で「本家猫餅」と「元祖猫餅」の二つの店がある。
途中で二つの「猫餅」の店がある由来が
お百姓の口から語られる。
ここは悪くなかったが、一つ張り扇を打って入り、
終わってもう一度打って戻る方が分かりやすかったかも。
「本家猫餅」のおばあさんの話す内容は
けっこうウケをとるように作られていた。
もう少し表情を付けていると尚良かったと思う。
甚五郎が一晩かかって何かをこつこつ作って
おばあさんに見せるところで時間。
「旭堂南北伝より血染の太鼓」(南湖)
兄弟子である南北が
広島商業の応援で甲子園で太鼓を叩いていた話。
メインは達川光男の広島商と江川卓の作新学院の対決の部分。
このあたり、野球の描写と講釈の調子はよく合っていたし、
笑いもよくとれていた。
「太閤記より中国大返し」(左南陵)
高松城で本能寺の変を知り、
和平して姫路、尼崎、
山崎で両軍が天王山に陣を配しそびれた、というあたりまで。
この人、手で釈台を叩く癖があり、
見ていてあまり快いものではない。
テンポは良いので勿体ない。
もうその癖を直せる年齢ではないから仕方ないのだろうが…。
あと、筋を外して客に語り掛けたりするのだが、
その外し方、戻し方が拙く冷めてしまう部分が散見された。
「赤穂義士外伝より倉橋伝助」(貞水)
東京からのゲスト。
生で見るのは初めて。
江戸風の客に対する語り掛け方、
外し方などはやはり場数・経験を感じさせる。
本人も言う通り、表情や目の付け方に迫力がある。
若干目線がずれることがあるが、
それでも流石。
元々別の大名?旗本の次男だった金三郎が、
女遊びで父親をしくじって鉄火場に出入りをし、
さらに上総に人を頼っていったところがその人が亡くなっていたため
床屋で世話になる。
養子に、というのを断って
口入屋から浅野内匠頭の家来になって
倉橋伝助と名乗り、元の父親と対面する、といった話。
史実の倉橋伝助とはけっこう違う設定なのかな、と思う。
この床屋の人物、
或いは浅野から使者として使わされた実の息子である倉橋に対する
父長谷川丹後守の話し方などが、
表面的でなく描写されているあたりが素晴らしかった。
口上(貞水・南左衛門・左南陵)
口上というよりは、南陵の思い出話、
左南陵が一時貞水の預かり弟子になっていた、という話、
昔の東西交流講談会での酒を巡る話や
最近の交流の話。
まあ、興味深い話もあった。
「山内一豊の妻」(南海)
若き日の山内一豊と千代の話。
一豊が流鏑馬の馬の購入に充てるために、
千代が嫁入り時に持ってきた10両を渡す。
8両に負けてもらったが、残った2両も流鏑馬の衣装に使う、
という「貞女」物。
馬に喋らせる、というあたりがギャグになっている。
恐らく春蝶などはこの講釈ネタを地噺にしてやっているのだろう、と思う。
「新島八重」(南左衛門)
今年の大河ドラマ「八重」に関する新作講談。
鶴ヶ城の戦い、
京都にやって来ての新島襄との出会い、
一緒になってからの話。
うーん、全体的に散漫な印象。
一つ一つのエピソードがあまり積み上がっていないと感じる。
また、会話で進める部分が少なく、地の文、特に説明的な文が多いのも
散漫に感じてしまった理由だと思う。