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「尾上多賀之丞の日記」書感

2010年09月21日 04時12分37秒 | 歌舞伎・文楽
「人間国宝尾上多賀之丞の日記」(大槻茂)読了。
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元々「小芝居」の役者であったのが、
6代目菊五郎に請われてその相手役となり、
その後脇役として人間国宝になった尾上多賀之丞の日記。

挨拶や訃報、あるいは役を巡る交渉や給金に関する記載もいろいろあり、
役者が日々何に関心を持っているかが見えてくる。
他の役者や松竹に対する批判・批評などもいろいろ。
特に11代目団十郎と梅幸に対するところが多いかな。
全ての日付の日記が載っている訳ではないのだが
もしかすると他の日には、もっと辛辣な評も書かれているかも知れない、と感じた。
日記を出版するからには、重複があろうが全て記載すべき、と個人的には思う。

今の歌舞伎とはかなり異なる部分も多く、興味深い。
例えば「預かり」(稽古不足などにより公演時間が延びるため、ある場を上演せずに済ませる)やら
「初日特定狂言」(準備不足などで一部の演目を上演できない場合に、その演目を外し昼夜一部制にする)、
配役を前月に決めている、など。

「小芝居出身」として差別されたことなどを、
最初の「評伝」の部分で書いているのだが、これは良し悪し。
確かに、日記の内容を理解しやすくなる面はあるのだが、
その解釈に限定されてしまうきらいがある。
御曹司と脇役の役者が給金や待遇、その他の取扱で差別されていること、
結果として一部の御曹司以外、名脇役と言われる役者も含めて
子どもを役者にしようとしないことなどに対する
筆者の問題意識から出ているとは思うが、
それは「日記」とは別に書くべきなのでは、と感じた。
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