小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

試詩1 神になった東電OL

2005年02月22日 | 
神になった東電OL  (泰子地蔵礼讃)

その街は繁華街のはずれ、性と欲の谷間
淫靡で不浄さに満ちた空間は 誰とても制御できない
権力機構でさえ統治をあきらめた冒涜のサンクチュアリ
泰子はそこで春をひさぐ女として人類最古の労働で経済行為にいそしんでいた
彼女は労働と報酬を等価と見なさず 自らの身体の商品価値をフレシキブルに設定し
むしろ購買する側の男達そのものを値踏みし 彼らの出自・経済状況・欲望の発現状態などを独自に見定め
時に4万円、時に2千円で快楽を提供した
彼女自身に快楽があったかどうか不明であるが




あなたにとって真の欲望ってなんですか
父親不在の代償行為?
男中心社会への反逆
家族へのあてつけ

そんな風に言われても
解釈の上塗りだけですよね
内幸町より神泉で働きたかったの
そう、神の泉よ 素敵でしょ

井の頭線の車内で菓子パンを齧りながら
ささやかな食欲を満たすときも
あなたにとって他者は死んでいる

煩悩を解消する思索、その理知の無意味さに気づいたんでしょうか
景気と電力との経済学的分析なんか
単なるお仕事でしょ
年収一千万円を得るための
ごくおきまりのルーチンワークだったでしょ

あなたは日本国というまやかしの世界を嫌っていたのですよね

悟りに似た諦めは宗教ではなかったの

慢性自殺と解釈されたあなたの無差別売春ですが
純粋な経済的行為ですよね?
贖罪でも
自虐でも
堕落でも
違うでしょ

白塗り妖怪と蔑まれ
排泄マゾっこまり子と揶揄され
怨念
巫女?

神になって
静かになって
眼を閉じて
父と手をつないで歩いた
あの頃の幸せの日々を
取り戻せないことに
気づいたときに流した涙は
子宮からあふれ出たのです

メンスの色は茜さす陽の光
誰にも気つかれずに咲く野の花は
種を異郷に飛ばします
彼方の山とまぐわいたい一心で
発情の歌をこころに添えて

さあ風よふきわたれ
闇夜の奥を切り裂いて、記憶の種よ
泣き叫ぶ神のみもとに
あらかしこ、届かんことを







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