母が亡くなった時、私は父のお墓を建て直した。
『夫婦墓』
にして母の生家の敷地に、引っ越しをした。
墓石を購入する時に、主人と一緒に、石材店に行った。
主人の知り合いの、看護婦さんの旦那様が細々と営んでいた、石材店だった。
『中国産と国内産と、どっちにするで?国内産ならちょっと高いけど、丸亀の石がええのあるでよ~』
と言って下さった。
迷わず、主人と顔を合わせて笑い、
『丸亀の石にして下さいっ!』
と 即答した。
父は こよなく
《競艇》
を愛した…
お金持ちの友人に連れられて、頻繁に足を運んだ。
私は 幼い頃から、そこに連れて行かれた。
父は、母の機嫌をとる為に 私を遊びに連れて行くと 前置きにして、私をお供にした
お金持ちの友人の、お坊ちゃまも、一緒に度々出掛けた。
私よりひとつ 年下だった。
競艇場には、様々な遊具があった。
有料の遊具と、無料の遊具。
わたし達は 遊具のある広場に、置き去りにされた。
一人だと 心細かったが、お坊ちゃまが、見え隠れしていたから、少し 安心してた。
お坊ちゃまは、私とおしゃべりするでもなく、はるか向こう側の、有料の遊具乗り場で
お遊びになっておられた。
わたしは、手前の手前の無料の敷地で、うろうろしていた。
有料の遊具は、お金を入れると、動いていた。※のを遠目に見た
無料の敷地には、ブランコ…滑り台…シーソー…剥げかけた
プラスチック制の動かない動物の置物。
時々、見え隠れしていた、お坊ちゃまを、確認しながら、黙々と遊んでいた…
オカッパ頭…前髪眉毛の上で、パッツン女の子…
お昼頃になったら、親の場所に、行く。
広い競艇場で、何故、親を探せたか?
それは、父が友人のおごりで、
《指定席》
に座っていたからだ。
《指定席》
に行き、空気の読めない、オッサンを探すのは、簡単だった。
《指定席》
で興奮して、立ち上がり、九州弁で叫ぶ、オッサンが 父だったからだ。
『なんばしちょっと!!!』
『ささなあかんばいっ~!!!』
『よかっ~!よかっ~!』
オッサンは、周りに迷惑がられた…
指定席は、外野席のように、横暴に見る場所では 当時はなかったから…
オッサンは、残り1レースを残し、手に二百円を残していた。
二百円で、切羽詰まり、小学生の娘に 聞いてきた。
『何番が好きか?何番と何番が好きか?』
そもそも、わたしは、競艇のボートの番号は、早い順番に付けていると
勘違いしていたから、迷わず、
『マーコは、1番と2番が好き!』
と答えた。
父は、百円でわたしの番号を、一枚購入した。
残りで、おでんのこんにゃくを一本買った。
わたしにこんにゃくを差し出した。
ひとくち、歯型を入れるように食べると、父は 父ちゃんにも食べさせてくれと
言いながら、残りを取り上げた。
唯一のお食事は、10秒で終わった…
今でも私は、おでんを食べる時、必ず 何故か、こんにゃくから、食べる。
それは、この時の 最後まで完食出来なかった、忌ま忌ましい感触が
トラウマになっているのか?
おでんを、娘達に、バンバン振る舞える、ワタシは、
《父を越えた!》
…で
わたしの船券が、見事に的中し、三千二百円が、オッサンの手に握られていた。
今では 競艇も
自宅でテレビを見ながら、電話投票出来る。父が聞いたら、卒倒しそうな、進化を遂げた。
主人も、ギャンブルは、パチンコ以外は、大好きだった。
主人に、言われた事がある。
『お前は懲り性だから、パチンコだけは、するなよ!毎晩仕事終わって
しもへ行かんかって言いそうなけんの~』
私は、好きな人の言う事は 素直に聞くので、忠告を守っている。
※早い話し 興味がないだけなのでした 悪しからず…
生活に無理をしない金額で、それぞれの趣味にギャンブル… 楽しいよね
自分のココロが愉しむ!
これが 1番っ!
丸亀産の石で 大好きな母さんと、あの世をやっている 父ちゃん…
一杯の中華そばも
一本のおでんも 分け分けで…
でもね…美味しかったよ あの味っ!
父ちゃんとの 貴重な想い出の 味だから!
母さんには、言わなかった 秘密の歯型の味だからね~
続く か はてな?