煙立つ民家に山に冬近し
かがやける空また好しや蔦紅葉
山里や肥ぐろ仕立冬支度
秘話ありき菅生沼や草紅葉
10月29日から11月1日までの4日間の入院、カテーテルアブレーション(心筋焼灼手術)を受けた
いまのところ、順調に推移している
4年前に初めて発作が起きて、上室性頻拍症と診断されたが様子を見ようということでそのまま
何事も無く経過し、一昨年に2回、昨年に1回、今年は2回と起きている、日常生活には何ら
支障をきたさないし、回数は少ないものの、時たま発作に見舞われることになる、が、1時間も
休んでいれば直るのであるし命に別状はない発作である
しかし、山歩きには支障をきたす恐れがないとは云えないので思い切って手術を受けたのである
房室結節回帰性頻拍で正常伝道路の房室結節付近に伝道速度の異なる2つの経路が存在し
伝道速度の違いから早い経路と遅い経路との間に旋回路が出来てしまい興奮刺激がその2つの
経路を旋回して心房と心室を絶え間なく拍動させる頻拍性不整脈となってしまうのである
治療には薬の服用とカテーテルアブレーションがあるが、薬はいつ起きるか判らない発作のために
飲み続けねばならないし、完治するわけではないので、煩わしいかぎりである
カテーテルアブレーションはこの原因となる異常な部分を焼灼して治療する手術である
カテーテルアブレーション手術は、X線透視下で心臓内にカテーテルを進め、不整脈回路の一部である
心筋をカテーテル先端から高周波により焼杓し、不整脈の回路を遮断する方法である
カテーテルアブレーションの施行は① WPW症候群、② 発作性上室性頻拍症、③ 心房粗動
④ 特発性心室頻拍症、などに施行しているがそれぞれに、成功率に違いはある
自分が受けた発作性上室性頻拍症の成功率は非常に高くて98%、再発は2%と低く根治療法である
手術は県病院で、三人のスペシャリストの先生に研修医数名、スタッフが加わり緊張の中準備が進む
ストレッチャーから手術台に移されて、スタッフにコードを身体中に貼り付けられ医療器械が近くに
配置される、手術室に脈拍の音が規則正しく聞こえてきた、やがて局所麻酔が太腿の付け根と首筋に
されて、主治医が「足の付け根の動脈からと首筋の静脈から管を入れます少し痛いですが我慢してください」
の声を合図に管を差し入れる、程なく、「人工的に頻拍を起こしますが気分が少し悪くなります」と
電気ショックで頻拍を起こしてゆく、自分は顔を覆われているので様子は先生の声とスタッフの動き
機械の音の動きが聞こえてくるだけである
やがて、規則的に音を出していた脈拍が早くなってきて、普通の倍以上の早さで音を立て始めた
主治医が「○○さん、これですね、これです」この状態を見ていた主治医が「悪い所が判りましたから
カテーテルに入れ替えます、少し、気分が悪くなります」今まで入れていた線を抜いてカテーテルの
線が入ってきたようだ、「悪い回路を焼杓します、少し胸が熱くなります」高周波機械を操作している
スタッフの数字の声がしだした「20,30,40、50,60、」主治医「ストップ」
主治医と他の先生の間でそのほかの悪い箇所を探しているらしい、やがて、数箇所を焼杓して
焼杓治療は一応終了した、約2時間の手術であった
主治医の「誘発の有無を確認のため30分ほどそのままの状態で待機しますのでもう少しです」
脈拍は少しづつ落ち着きの音がし始めた自分は緊張から解放されて、ほっとした状態だった
先生たちも横の椅子に腰掛けて雑談をしている、手術室の空気が和やかになった
30分が経過したようで主治医の「○○さん、誘発の無いことを確認出来ました、成功です」
「これで、日常生活や趣味の山歩きも心配しないでできますよ、良かったですね」
ストレッチャーで手術室を出て、病室に戻って、しばらくして、喜びがじわーと湧いてきた
しばらくは様子見ながら、調子が良くなれば、また、軽い山歩きから再開したいと思っている
手術前、27日に高校の同期会が道後のホテルであった、去年は開会してないので、2年ぶりである
開会の前に物故者の名を読み上げて黙祷するのだが、2年間で10名ほどいた、年々寂しくなる
来年は79歳で傘寿である、みんな、健康で揃って傘寿の同期会を祝おうということで散会した
入院や不安隠して秋惜しむ
手術日を控へ夜星に暮の秋
鳴り止まぬナースコールに行秋ぞ
張り詰めし手術の空気秋深し
喧騒を阻む病室秋の雲
病室を後せし妻に夜寒かな