枯れ薄が広々と木枯しに揺れていた、寒いなかにも祖谷野に佇んで周りを
眺めるのが好きである
茅葺の民家、平屋の流麗な民家、半ば朽ち果てかけた民家、何れも廃家だ
3軒の廃家は背後の山裾に行儀よく間隔を隔てて並んでいる
向いの山並みは三嶺の稜線、西熊山、天狗峠、奥まって天狗塚、牛の背の稜線を
贅沢にも一望できる
これからの季節には青空に映える霧氷と雪山を思う存分に何時までも眺めやること
手を悴ませ、身体の芯まで震えながらも眺めていたい風景なのだ
だが、たまには穏かなぽっかりとしたいい日もある、そんな暖かい日差しが
この祖谷野を包み込んで廃家さへ生き返るようなさまはうれしいものだ
愛しさや廃家に降りし冬日和
凩や吹き抜く祖谷野廃家かな



