お年寄りがよく作る大根は冷え込みが厳しくなり霜が降りるころ柔らかくなり
美味しくなる、畑で凍らないうちに収穫するのがよい
天気の良い日に、葉を掴んで引っ張ると、長い大根がすぽりと引き抜けるものだ
案外と簡単に軽く抜けるが面白い
T老婦の家では日差しが良く当たる縁側一杯に切干を広げたり、軒下に吊るしている
少し空いたところに座って祖谷番茶を頂き、談笑している縁下に蒟蒻芋が筵に転がって
いかにも、のどかな、山ろくの冬日和である
しかし、長閑な日はそんなに多くはない、木枯しに、冷え込む時雨がしばらく続くと
やがて、雪空になり降ったり止んだりしながら、根雪になり始めてくると集落は冬構えに
忙しい毎日になる
寂として木枯し耐へし祖谷野かな
品定め葉を掴みをり大根引
縁側の日向を占拠切干に
縁下の筵に居しや蒟蒻ぞ




