ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

ロースクール労働法No.16

2013年03月10日 19時24分06秒 | 労働法
ロースクール労働法No.16

所感
精勤手当は6%を占めるに過ぎないから有効とするのもありだと思います。


1 本件において、Yの主張としては、6月25日の賃金、精勤手当15,000円の支払い及び3日間の出勤停止処分の無効を主張すると考えられる。
2 就業規則
(1) 本件においてYは、当日に年休取得を申請している。しかし、就業規則は原則1週間前までに、例外的に前々日までに申請することとされているため、就業規則に反しないか。本件就業規則は1週間前までに届け出ることが原則とされ、これによれない場合には、前々日までに口頭で届け出るとされており、これは労基法39条の趣旨に反せず合理性を有するか。
(2) 就業規則は、その内容が合理的であれば、周知されることで労働条件の内容となる。本件は、1週間前の届け出は、使用者が時季変更権を行使するために必要な期間といえるし、代替要員の確保等調整も必要な期間として規定していると考えられる。また、例外的に前々日までの口頭による届け出も認められており、その理由は前記のとおりといえ、合理性があるといえる。
   もっとも、当日の年休取得も事実上認められており、これは他の社員も周知していることから、労使慣行が存在していたといえる。
(3) よって、事実上の運用が認められることも含めると、労基法39条の趣旨に反するとはいえず、なお合理性を有し、就業規則がYの労働条件になり拘束される。
3 Yの年休取得
(1) Yは当日の年休取得申請をしているが、店長は承認しないと回答している。この場合、年休権は成立しているか。
(2) 年休権は労基法が労働者にリフレッシュや自己研鑽のために認められた権利であるため、39条1項の要件を満たせば、適法な時季変更権の行使が無い限り、当然に年休を取得する。
(3) 本件における店長の回答が適法な時季変更権の行使といえるか。
(4) 労基法39条の年休権を制度として認めた趣旨に鑑み、使用者は、適法な時季変更権を行使しなければならない。また、この時季変更権の行使は、事後の事情により判断することは妥当ではないことから、時季変更権が行使された時点において判断する。そして、適法といえるためには、①当該労働者の労働の性質、内容、②当該労働者の業務運営上不可欠性、③代替要員の確保が困難な事情等を考慮して判断する。
(5) 本件Yが申請をした際、すでに2名の年休取得者が存在した。しかし、①スーパーの社員であり、業務内容は不明だが、パートタイマーの代替が可能であったため、労働の内容は専門性が高かったとはいえない。また、②Yが業務運営上不可欠性があるとまではいえない。さらに、③パートタイマーによる代替が可能であり、代替要員の確保が困難であったとまではいえない。年休取得は労働者の自由に取ることが保障されているので、取得理由を言わなかったことを理由として時季変更権を行使することは認められない。
(6) よって、適法な時季変更権の行使ではなく、Yの年休取得は認められる。
4 年休取得の不利益取扱い
(1)ア Yは精勤手当不支給及び3日間の出勤停止処分が行われているが適法か。
  イ 附則136条は文言上努力義務であることから、私法上の効力は無い。しかし、不利益取扱いが年休取得を認めた趣旨に反する場合には公序に反し無効となる。反するかどうかは、不利益取扱いの内容、程度、目的等を考慮して判断する。
  ウ 精勤手当が社員の労働意欲の向上を高める目的で規定されていることからすれば、その目的は正当である。しかし、精勤手当は最大で15,000円であり、Yの給与総額252,798円においては約6%も占めており、小さいとはいえない。さらに1回の欠勤で半額になり、2回欠勤で不支給になるため、精勤手当が労働意欲の向上という目的であったとしても年休取得を抑制することになるといえる。よって、労基法39条の趣旨に反するといえる。
5 3日間の出勤停止
 Yは年休を適法に取得しているのであるから、懲戒事由が不明であるため明らかではないが、年休取得を理由とした懲戒処分は、客観的合理性を欠き、社会通念上相当とはいえず、懲戒権濫用として無効となる(労契法15条)。
6 以上から、Yの6月25日の賃金請求、精勤手当15,000円、3日間の出勤停止の無効及び当該日時の賃金を主張し得る。

捜索・差押の範囲

2013年03月10日 09時34分03秒 | 刑訴法
基本的な問題だと思っていましたが、難しいです。


難しいと考えているのは、102条2項の条文です。


被疑者以外の第三者の身体、物又は住居その他の場所について捜索する場合には、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り許容されます。



甲を被疑者とした場合

■事例1
被疑事実を覚せい剤所持罪、被疑者を甲、捜索場所を甲宅とする捜索差押許可状が発付された。

事例1-1
警察官が踏み込んだ際、甲が隣家へ覚せい剤を投げ込んだ。

この場合、隣家へは、差押えるべき物を現状に回復するために、許可状の執行に必要な処分(222条1項前段、111条1項)として許容されると考えられます。


事例1-2
警察官が踏み込んだ際、同居人乙が覚せい剤を衣服に隠匿した。

この場合、同居人乙は、第三者に当たるが、第三者が隠匿所持していると疑うに足りる相当な理由があり、必要性があり、緊急性が認められるには、許可状の効力が及ぶ。
ただ、これを必要な処分とするのか、102条2項によるのかよくわかりません。


事例1-3
警察官が踏み込んだ際、たまたま居合わせた丙が覚せい剤を衣服に隠匿した。

事例1-2と同じだが、同居人でないことに配慮すべき。
ただ、これを必要な処分とするのか、102条2項によるのかよくわかりません。


事例1-4
警察官が捜索中に室内にあったメモには、3軒隣の家に覚せい剤を預けた旨が記載されていた。

事例1-1に似ているが、102条2項の差押えるべき物の存在する蓋然性が必要になるが、3軒隣の家に捜索しに行くことができるかは、疑問。別途許可状が必要な気がする。


事例1-5
甲宅は、マンションの201号室であったが、警察官が捜索中に室内にあったメモには、701号室の乙宅に覚せい剤を預けた旨が記載されていた。

この場合も、差押えるべき物が存在する蓋然性が必要になるが、701号室の乙宅は別途許可状が必要な気がする。



■事例2
被疑事実を覚せい剤所持罪、被疑者を甲、捜索場所を甲が間借りしているK宅2階の甲居室とする捜索差押許可状が発付された。

事例2-1
警察官が踏み込んだ際、甲が甲居室の隣の部屋に覚せい剤を投げ込んだ。

事例1-2と同様、必要な処分として許容される。


事例2-2
警察官が踏み込んだ際、甲がKが覚せい剤を衣服に隠匿し、甲居室の隣の部屋に逃げた。

この場合も事例2-2と同様であるが、第三者たるKの衣服を捜索するためには、102条2項の差押えるべき物の存在する蓋然性が必要である。


事例2-3
警察官が捜索中に甲居室内にあったメモには、K宅1階の部屋に覚せい剤を隠している旨が記載されていた。

102条2項の差押えるべき物の存在する蓋然性が必要である。



102条2項の適用によってどこまで捜索場所が拡張されるのかがよくわかりません。
事例1-4で3軒隣なら不可のように思われますが、隣の家に預けた、なら許容されるようにも考えられますが、この区別の根拠は難しいです。

この場合、いずれもダメだとすれば、102条2項の範囲は、「住居その他の場所」としているのはどう考えるのかが難しいです。
同じ建物だけど、別の部屋ならいいとか?
あるいは、本件の甲宅が捜索場所だったが、差押えるべき物が存在する場所が甲の車の中だったとかでしょうか?



この問題と関連してややこしいのが、220条1項2号の逮捕に伴う捜索差押で、相当説を取った場合です。
この場合、上記事例で同様に考えるのか、もっと限定するのかがよくわかりません。


甲の逮捕令状が発付された。
甲がK宅に逃げたため、警察官はK宅に入って1階居間で逮捕した。
K宅には甲が間借りしている2階居室がある。逮捕に伴う捜索差押として2階居室を捜索できるか?

また、K宅に甲が間借りしていない場合、K宅には甲が預けた金庫がある。
甲を逮捕したことによって、この金庫を逮捕に伴う捜索差押として捜索できるか?


本来、逮捕の現場は、その管理権が及ぶ範囲に限定されます。
上記事例の場合は、K宅であるため、Kの管理権が及ぶ範囲になります。
しかし、K宅2階甲の居室は甲の管理権があり、Kの管理権は無いと考えられます。
しかし、被疑者は甲なのに、甲の居室を捜索できないのは疑問です。



去年の新司法試験の問題で、T社で乙を現行犯逮捕した場合、乙のロッカーを捜索できるか、という問題がありました。
この問題、いまだによくわかりません。