先日の問題はひねると難しくなりそうです。
夜間、AはBを後ろから殴ってBは道に倒れ込んだ。Aはすぐさま逃げたが、甲がそれを見ていたため、Bを助けようとした。
しかし、BはAがさらに殴ってくるものと勘違いし、甲に殴り掛かった。しかも、Bは甲が殴ったものと思っており、その手を止めなかったため、甲は腹が立ったので、甲は持っていたナイフでBの顔面を切り付けた。
Bは顔を押さえつつ、よろけたため、後ろから自転車に乗ったCと接触し、Cも転倒した。
その際、BとCは地面に頭を強打し、死亡した。
甲は何罪か?
Bは誤想防衛で違法性が阻却されないため、Bの勘違いして殴り掛かる行為は急迫不正の侵害に当たります。
そこで、甲はBに対して、攻撃の意思と防衛の意思があるため、防衛の意思は否定されませんが、防衛行為の必要性と相当性のうち、相当性を欠きます。
そのため、傷害致死罪が成立し、過剰防衛による刑の減免が認められます。
一方、Cに対しては、Cは何ら攻撃をしていないため、甲にとっては誤想過剰防衛、あるいは、緊急避難にあたると考えられます。
誤想過剰防衛と考える場合には、過剰性の認識があれば故意あり、過剰性の認識がなければ故意が阻却され過失犯の成否が問題になります。
また、故意は規範に直面した場合の反対動機の形成の有無であり、規範は構成要件において類型化されていること、また、故意の個数は構成要件において抽象化されているため、問題になりません。
そして、甲は、Bに対して過剰性の認識があり、その結果、BとCに対して過剰な行為による結果が発生しているため、両者に対して故意犯が成立します。
さらに、36条2項の適用ないしは準用によって刑の減免があります。
(過剰性の認識がない場合は過失犯の成立があり、過失犯が成立されれば刑は免除されないのに、過剰性の認識があり故意が阻却されない場合に、36条2項によって刑の免除が認められるのは刑の不均衡として、刑の免除は認められず、減軽のみ認めるとする考えもあります。)
次に、Cとの関係では緊急避難と考える場合には、Bに対する過剰な防衛行為がCに及んでおり、また発生した結果との間に法益権衡が認められないことから、過剰避難になるかと思います。
なお、やむを得ずにしたとはいえず、補充性が否定される場合には、過剰避難も成立しないことも考えられます。
以上から、
Bに対しては傷害致死罪の過剰防衛による刑の減免。
Cに対しては傷害致死罪の成立+36条2項の刑の減免(減軽)。
又は、
Cに対しては傷害致死罪の成立+37条1項ただし書きの刑の減免。
といった感じでしょうか。
Cに対してはちょっと自信がありません。
※3月5日追記
Cに対しては、大阪高判平成14年9月14日の判例が想起されます。
大阪高判の事例を本事例に即しますと、以下のようになるでしょうか。
甲は、Bから暴行を受けているCを助けようと自動車を急後退させたが、Cを轢過し、死亡させた。
判例は、被告人はが主観的には正当防衛だと認識している以上、Cを死亡させた行為については、故意非難を向け得る主観的事情は存在しないというべきであるから、いわゆる誤想防衛の一種として、過失責任を問い得ることは格別、故意責任を肯定することはできない。
とすると、誤想防衛の一種として故意責任を阻却するのですから、誤想過剰防衛の一種も含まれるのではないか、と見ることもできそうです。
ただ、あの事例は、本件に関していえば、Bに対する正当防衛が成立していた事例であり、過剰防衛の場合は射程外ですので、Cに対して誤想過剰防衛の一種としても故意は阻却しないのもありだと思います。
夜間、AはBを後ろから殴ってBは道に倒れ込んだ。Aはすぐさま逃げたが、甲がそれを見ていたため、Bを助けようとした。
しかし、BはAがさらに殴ってくるものと勘違いし、甲に殴り掛かった。しかも、Bは甲が殴ったものと思っており、その手を止めなかったため、甲は腹が立ったので、甲は持っていたナイフでBの顔面を切り付けた。
Bは顔を押さえつつ、よろけたため、後ろから自転車に乗ったCと接触し、Cも転倒した。
その際、BとCは地面に頭を強打し、死亡した。
甲は何罪か?
Bは誤想防衛で違法性が阻却されないため、Bの勘違いして殴り掛かる行為は急迫不正の侵害に当たります。
そこで、甲はBに対して、攻撃の意思と防衛の意思があるため、防衛の意思は否定されませんが、防衛行為の必要性と相当性のうち、相当性を欠きます。
そのため、傷害致死罪が成立し、過剰防衛による刑の減免が認められます。
一方、Cに対しては、Cは何ら攻撃をしていないため、甲にとっては誤想過剰防衛、あるいは、緊急避難にあたると考えられます。
誤想過剰防衛と考える場合には、過剰性の認識があれば故意あり、過剰性の認識がなければ故意が阻却され過失犯の成否が問題になります。
また、故意は規範に直面した場合の反対動機の形成の有無であり、規範は構成要件において類型化されていること、また、故意の個数は構成要件において抽象化されているため、問題になりません。
そして、甲は、Bに対して過剰性の認識があり、その結果、BとCに対して過剰な行為による結果が発生しているため、両者に対して故意犯が成立します。
さらに、36条2項の適用ないしは準用によって刑の減免があります。
(過剰性の認識がない場合は過失犯の成立があり、過失犯が成立されれば刑は免除されないのに、過剰性の認識があり故意が阻却されない場合に、36条2項によって刑の免除が認められるのは刑の不均衡として、刑の免除は認められず、減軽のみ認めるとする考えもあります。)
次に、Cとの関係では緊急避難と考える場合には、Bに対する過剰な防衛行為がCに及んでおり、また発生した結果との間に法益権衡が認められないことから、過剰避難になるかと思います。
なお、やむを得ずにしたとはいえず、補充性が否定される場合には、過剰避難も成立しないことも考えられます。
以上から、
Bに対しては傷害致死罪の過剰防衛による刑の減免。
Cに対しては傷害致死罪の成立+36条2項の刑の減免(減軽)。
又は、
Cに対しては傷害致死罪の成立+37条1項ただし書きの刑の減免。
といった感じでしょうか。
Cに対してはちょっと自信がありません。
※3月5日追記
Cに対しては、大阪高判平成14年9月14日の判例が想起されます。
大阪高判の事例を本事例に即しますと、以下のようになるでしょうか。
甲は、Bから暴行を受けているCを助けようと自動車を急後退させたが、Cを轢過し、死亡させた。
判例は、被告人はが主観的には正当防衛だと認識している以上、Cを死亡させた行為については、故意非難を向け得る主観的事情は存在しないというべきであるから、いわゆる誤想防衛の一種として、過失責任を問い得ることは格別、故意責任を肯定することはできない。
とすると、誤想防衛の一種として故意責任を阻却するのですから、誤想過剰防衛の一種も含まれるのではないか、と見ることもできそうです。
ただ、あの事例は、本件に関していえば、Bに対する正当防衛が成立していた事例であり、過剰防衛の場合は射程外ですので、Cに対して誤想過剰防衛の一種としても故意は阻却しないのもありだと思います。
緊急避難(過剰避難)の補充性が認められるかはBがいなければ当然だめですがBとの関係で退避義務がない以上肯定できそうですね とすれば過剰避難でしょうか
Cに対しては、大阪高判平成14年9月14日の判例が想起されます。
とすると、誤想防衛の一種として故意責任を阻却するのですから、誤想過剰防衛の一種としても見ることもできなくもなさそうです。
ただ、あの事例は、本件に関していえば、Bに対する正当防衛が成立していた事例であり、過剰防衛の場合は射程外ですので、誤想過剰防衛は成立しないのもありだと思います。
大阪高判の事例を本事例に即しますと、以下のようになるでしょうか。
甲は、Bから暴行を受けているCを助けようと自動車を急後退させたが、Cを轢過し、死亡させた。
判例は、被告人はが主観的には正当防衛だと認識している以上、Cを死亡させた行為については、故意非難を向け得る主観的事情は存在しないというべきであるから、いわゆる誤想防衛の一種として、過失責任を問い得ることは格別、故意責任を肯定することはできない。