Kuniのウィンディ・シティへの手紙

シカゴ駐在生活を振り返りながら、帰国子女動向、日本の教育、アート、音楽、芸能、社会問題、日常生活等の情報を発信。

原作者火坂雅志、大河ドラマ「天地人」への熱い思いを語る~義とは~その1

2009-08-01 | 日本生活雑感
先週、NHKの人気大河ドラマ「天地人」の原作者、火坂雅志氏による講演が、さいたまスーパーアリーナのNHK文化センターであり、直江兼続が生きた時代を熱い言葉で語ってくれた。日本の歴史と文化を愛する私は、「天地人」を毎週楽しみにしている。歴史好きの主人と息子たちも「天地人」は食い入るように見る。家族4人がそろって見る番組はめずらしく、登場人物の一言一言もかみしめて見ているため、この時間私語は禁物である。

1956年生まれの火坂氏は、「天地人」が舞台となっている新潟出身。それだけに、自分が生み出した小説が大河ドラマになるとあって、このドラマに対する思いもさぞや強いことだろう。どんな雰囲気の方だろうと想像していたら、粋な着流しの姿で、気さくに語りかけてくれる。



火坂氏によると、主人公の直江兼続は、演ずる妻夫木聡のように「端正な顔つきで、どこか大らか」だったらしい。「ハンサムで、頭が良くて、しゃべるのがうまく、6尺(180センチ)も(身長が)あった」というから、原作あるいは、ドラマのように、女性にさぞやもてたのだろう。義と愛の精神に生き、生涯主君の上杉景勝に仕えた兼継は、秀吉、家康からも一目おかれ、人をひきつける魅力に溢れている。第1回の冒頭で、秀吉から家来になるようつめよられり、それをきっぱりとけったときのシーンが、彼の「義」という精神を柱とした生き方を象徴している。そのときの目がすがすがしく、秀吉たりとて透き通った兼続の心にははいりこめない。そんな兼続は、現代の女性から見てもたまらなく魅力的に映るだろう。最近の日本は、歴史ブームの中、あちこちで歴女が出現。エカミルさんの高1の娘さんも帰国子女ながら歴女。兼続の大ファンらしく、毎週楽しみに大河を見ているとか。兼続以外もこのドラマではキーパーソンとなる武将には、若いイケメン俳優で実力派をそろえている。小栗旬演ずる兼続の親友、石田三成、松田龍平演ずる伊達政宗、城田優演ずる真田幸村など。歴女が愛する戦国武将のイメージをますますかきたて、天地人の視聴率アップに成功しているといえる。

私は、兼続の主君、上杉景勝という人物がドラマの中で人間味に溢れていて好きだ。火坂氏によると、景勝という人は、大変な無口で、いつも仏頂面だったとか。家来が景勝の笑顔を見たのは、1回だけというから、兼続とは対照的な人物である。ドラマでは、北村一輝が威厳のある無口な景勝をうまく演じている。ときおり見せる不器用でおちゃめな面もたまらなくいい。景勝と兼続2人の絶妙なコンビネーションが、義というものを忘れた現代人に「義とはこうあるべき」とさりげなく教えてくれる。

火坂氏の話によると、景勝を養子にした越後が生んだ偉大な武将、上杉謙信は、戦いに優れていただけでなく、経済政策にも丹念に力を入れ、豊かな経済大国を作り上げ、戦国武将の中で一番の経済力を持っていたという。戦国時代は、内乱の時代で、裏切りや暴力、暗殺が横行して、領地をのっとっていくやり方が多かった中、謙信は「正義」「信義」の道を貫いたという。火坂氏は熱弁する。「上杉謙信は、はたしてこれが人間の姿か。浅ましい姿ではないかと問い始めた・・・謙信はそういうことはせず、背筋を伸ばして、生きた・・正々堂々とフェアプレイで。それに対して、回りの武将は、「バカな、失敗してつぶれてしまう」と言ったが、逆のことが起こった。謙信は信頼できる武将として、彼の回りに人の輪が起こって、人が集まってきた。戦国時代で、1、2を争うほどの家臣団の組織を造り、戦国の名将と呼ばれた。精神面の柱となる義と経済力で優れた経営者となった。」と謙信がとなえた義の素晴らしさを力を込めて説明してくれた。

そして、謙信に影響を受け、その精神を受け継いだのが、直江兼続と上杉景勝コンビである。~続く