Kuniのウィンディ・シティへの手紙

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竹田博志氏の講演会「早川絵画にみる東洋性」~酒田市美術館にて

2016-01-12 | アート
1月10日、元日経新聞美術記者の竹田博志氏による記念講演会「早川絵画にみる東洋性」が酒田市美術館で開催された。



竹田氏は日経新聞に早川俊二氏の個展記事を1999年から5回も書いていて、同じ画家の個展記事をこんなに書くのはないんだそうだ。
最初に日経に記事がでたとき、個展会場のアスクエア神田ギャラリーの電話は1日中鳴りっぱなしだったそうで、「バイトを雇わなければならなくなったほど」と当時を振り返って、ギャラリーのオーナーの伊藤厚美氏は苦笑しながら言う。
白黒ながら、早川氏の絵力と竹田氏の惹きつける文章力とで、一気に多くの全国の読者を早川ワールドへ誘ったというわけだ。

私も若い頃アメリカの通信社の金融記者をしていたとき、日経は毎日読んでいたが、文化面もとても充実していて、いつもこちらを読むのを楽しみにしていた。恐るべし、日経新聞!

竹田氏は、今回の巡回展の契機となる長野展を開催した、早川氏の同級生による実行委員会とファンを中心とした周辺の人々の力をたたえた。
「展覧会の実行委員会は、新聞業界などが絡むのが普通で、素人の人たちが立派な展覧会をしたことに感心しています。人々を動かした早川絵画の力に感心します」と語った。


長野から駆けつけた早川氏の同級生で実行委員会のメンバーたち、コレクターでサポーターの方々、酒田市美術館関係者など



まず、自身の日経新聞の展覧会レビュー記事を紹介しながら、早川絵画の魅力を分析した。
そして、謝赫(しゃかく)という古代中国の画家が説いた絵画制作の6つの規範を紹介した。

その最初の重要な規範が「気韻生動 (きいんせいどう)」で、作品に潜んでいる「気」、つまり精神的生命感で生き生き描かれていることなんだそうだ。
はっきり断言されなかったが、「早川作品も人の心を静かに引き込んでいく」ということで、この規範を満たしていると言いたかったのかもしれない。
有名な葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」、范寛の山水画などもスライドで紹介しながら、絵から発する「気韻生動」というものを私たちに伝えた。



写真撮影もしていたので、メモを取れなくて、詳しく講演内容を伝えられないが、鑑賞者が早川絵画にスッと入っていけるのはこの「気韻」というものに関係しているんだということがわかった。

最後に竹田氏が紹介したのは、イギリスの作家オスカー・ワイルドの言葉で、「自然が芸術を模倣する」という逆説的で面白い表現。
今ちょうどイギリス文学史を大学で聴講していて、ワイルドの代表作「ドリアン・グレイの肖像」を読みながら、同性愛者だったワイルドの破滅的な生涯もたどっているので、心に刻む。




最後の部屋は白い壁で!

今回の講演会を振り返ると、竹田氏は直接的な表現はされなかったが、早川作品を観るヒントが散りばめられていたようだ。

それにしても、作品だけを真摯に観て、現存作家のしかも日本で賞など受賞していないパリ在住の作家の個展を開催した酒田市美術館の石川好館長の英断に敬服する。











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