象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

中高年はなぜ、怒鳴りつけたがる?〜クレームという名のハラスメント

2022年06月01日 15時18分42秒 | 独り言&愚痴

 ”常識がない”
 ”社会人として失格だ”

 男性の怒鳴り声が受話器から周囲に漏れる。電話を受けていた営業担当の女性は、身体を震わせながら受話器を握っていた。女性は謝り続け、時折だまり込む。目からは涙がこぼれ、電話は1時間にわたり続いた。
 2020年秋、名古屋市の介護サービスの施設での事だ。女性の様子を見ていた飛田代表は”そこまでされる程だったのか?一線を越えてる”と判断した。
 電話をかけてきた男は施設利用者の家族で、長時間の電話は毎日の様に続いた。
 男性は利用者の細かい体調の変化まで逐一報告をするよう求めていた。通常の業務を超えた要求だったが、少しでも報告が滞ると女性を罵倒した・・・(朝日新聞)

 女性がその後どうなったかは、ある程度予想は付く。
 カスハラとは、”カスタマー・ハラスメント”の事で、顧客(カスタマー)と取引先という立場の優位性を盾に、悪質な要求や理不尽なクレームを行う行為の事である。
 従業員や店舗スタッフに、無理難題や謝罪を大声で求め、ネットに酷評を書き込むといった、近年増加する”脅し”に酷似する。
 カスハラはクレームと混合されがちだが、本来クレームはサービスや品質の改善などを目的に”要求”や”依頼”の形が多く、企業はクレームを通し、改善点や反省点を見つける。
 一方でカスハラは、理不尽な嫌がらせや悪質なイジメそのものである。(良心的?な)要望や要求を目的にするクレームとは大きく異なるという。


クレームとハラスメント

 欧州には、”カスタマークレーム”という制度があるのを聞いた事がある。
 顧客(カスタマー)は買った商品が”値段に見合わない”と判断した場合には返品出来るという。
 日本ではそこまでの権利は認められてなく、初期不良による返品(交換)か、クーリングオフ(無条件解約)だけである(多分)。
 クレームが”良心的”というのは言い過ぎかもだが、内容如何では建設的にもなり、最悪はケンカや訴訟問題にもなる。
 多くの専門家や弁護士の説明では、”顧客(カスタマー)が加害者で会社側(サポート)が被害者”という決めつけが目立つ様な気がする。
 勿論、逆の展開もある。
 企業側にいい様に巻き込まれ、何も出来ない顧客。その為に、カスタマーサポートや相談センターがあるのだが、最近は立場が逆転し、極端になってる様にも思える。

 昭和の頑固親父じゃないが、何か不都合がある度に”責任者を出せ、社長を呼んでこい”と怒鳴るのは論外だとしても、サポート側の言い方次第では(普段は大人しい筈の)顧客も腹を立てる。
 そういう私も2度ほど(まるでコソボ紛争みたいな^^;)大喧嘩をした事がある。1つはドコモで、もう1つはマイクロソフトだ。
 どちらも世界に誇る大企業で、私にとって典型の”負け戦”だったが、(主張や言い分が通らないなら)せめて”言いたい事を全て履き出せ”と、あらゆる罵詈雑言を浴びせた。
 相手側は1mmも引かなかったが、今となっては後腐れは殆どない。今の時代なら、カスハラとして逆に告訴されてたかもしれない。

 勿論自分に非があれば、そこまで言う筈もないが、相手の出方次第では”口撃”に変貌する。しかし、結果は言わずもがなである(悲)。
 以来私は、クレームの仕方を変えた。
 映画「交渉人」(1998)のサムエル・L・ジャクソンをお手本に、言いたい事を箇条書きにする。
 優先度の高い順からこちらの言い分を訴え、サポート側の曖昧な返事や不理解な言葉にはチェックを入れる。
 この方法だと、大体において相手はオチる。勿論、こちらが”大方”正しいという条件付きである。
 当然ここまでやれば、ハラスメントというより、訴訟に近いクレームの感じもするが、たかがクレームである。今の時代、1つ間違えればこっちが訴えられる。


今どきの中華サポート

 先日も、AmazonとHuaweiに一寸した事で問い合わせた事があった。
 前者は(記事にもしたが)”悪質メール”の件で、2段階認証の設定で袋小路に陥り、強制終了した為に、ちゃんと2段階認証になってるかを確認した。
 最近はサポート時のトラブルを防ぐ為に、直通ダイヤルを巧みに隠してる企業が目立つ。気持ちは解るが、Q&AやAIチャットで解決できる位の類ならサポートに相談する筈もない。
 チャットオペも充実してはいるが、その質となると少し疑問もある。
 しかしこの時は、”2段階認証のバックアップ設定は余計じゃないか?逆に混乱させるだけだ・・・”と訴えたら、スンナリと納得してくれた。
 以降は、とても丁寧な対応で、何の誤解もなく、私が理想とするサポートであった。

 Huaweiの方は、私の勘違いもあって、少し恥ずかしかったが、台湾人(または中国人)のチャットオペの応対は(日本人以上に)すごく流暢でもあった。
 「中華系チャットの未来」でも書いたが、最近の中華サポートは凄く充実してる(と思う)。二度続けてアタリを引いた様な感覚を覚えたが、日本企業も中国人オペレータを導入してはどうだろうか?
 彼女たちは(日本人みたいに)繊細で感傷的でもないし、トラブルの本質を見抜くのに長けてる気がする。
 一方で日本人は、謝る時は徹底して謝るが、拒む時は頑として拒み続ける。これじゃ、クレームをつけても何ら解決しないし、お互いが不幸なだけである。
 つまり、クレームは解決策を見出す為の建設的な議論であり、単なる嫌がらせやケンカの場ではない。
 少なくとも冒頭で紹介した”常識がない”とか”社会人として失格だ”とか”責任者を呼べ”とかは、愚論であり、暴言でもある。


ハラスメントに群がる中高年たち

 カスハラ行為をした顧客の年代性別では、中年男性や高齢男性、それに中年女性が増えたという。行為の内容では、”些細な事で激高し、感情的な苦情や無理難題な苦情が増えた”という。更に、”博学を自慢する人は以前からいたが品が悪くなった”という笑えない苦情もある。
 確かに、コロナ渦でマスク拒否やワクチンをしたがる人種は、私と同年代かそれ以上の輩が多い様な気がする。それに、高齢者ほど陰謀説を振りかざし、それに縋る事で自身を慰める。
 些細な事でも不満や動揺に繋がり、怒りとなって爆発する。その怒りの矛先は、常に弱い立場のサポート側に向けられる。特に、感情のコントロールが難しいとされる高齢者は尚更だろう。

 ”(コロナ禍による)新しい行動様式などに適応できない不満に加え、古い価値観への固執や感染への不安が引き金になる。自身の主張を従業員に強いる事で、失われつつある自分の存在を確認している”と社会心理学の池内氏は説明する(「まいどなニュース」より)。
 (奥田英朗さん風に言えば)カスハラに縋るのは、挫けそうな気持ちを何とか奮い立たせようとする”個人の抗い”なのかもしれない。

 今では”レジハラ”という会計時の嫌がらせを指す言葉もあるそうだが、これも高齢者に多いとされる。
 確かに、若いレジ打ちの娘にイチャモンをつける中高年は目立たなくもない。気持ちは解るが、彼女たちは好きでレジを打ってる訳でもない。その上、嫌味の一つでも言われたら、辞めたくもなるだろう。
 そういう私も、バカ丁寧に(時間をかけて)レジを打つ昭和のオバサマを見ると少しイラとくる事がある。
 ”(安い時給で働いてんだから)雑でいいさね”って言いたくもなる。が、商品を雑に扱おうとすると”こっちは客だぞ、心構えがなっとらん!”と、これまた昭和の頑固親父が難グセをつける。
 これじゃ、説教か?クレームか?はたまたハラスメントか? 


最後に〜お客様は神様ではない

 専門家らは、職場や家庭内のストレスのはけ口を弱い立場にある従業員に向け、また”お客様は神様”といった奉公の精神を履き違えた風習の普及がカスハラが増加する原因となってる事を指摘する。
 一方で、日本企業伝統の”お客様第一””おもてなし”の心は、(今までは世界に誇る)優れものだったかもしれない。が、同時に過剰すぎるサービスと言えなくもない。
 企業が顧客に対してよりよいサービスを行う試みは素晴らしいが、(品質同様に)顧客もそれぞれに個体差がある。
 当然、過剰な要求をするカスハラ行為は後を絶たず、弱い立場にあるサポートシステムは疲弊し、機能しなくなるのは目に見えている。

 ネットやSNSの普及によって様々な情報が入手でき、クレームのあり方も変化しつつある。が一方で、匿名での誹謗中傷が幅を利かせてるのも事実である。
 企業も企業で、モノを安く大量に売りさばく為に、”サポートなんてあってないようなもの”と決めつける。”不具合があるなら(サポートに頼るより)買い替えろ”という売り逃げ的な姿勢こそが、カスハラを加速させてると思えなくもない。

 クレームとは(日本では)不平や不満と言ったマイナスのイメージが強いが故に、嫌がらせ(ハラスメント)に置き換わる傾向にある。
 いま私達は、クレームの本来の意味とそのあり方を考え直すべき時かもしれない。



7 コメント

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Unknown (1948219suisen)
2022-06-01 16:49:47
この記事と内容は違いますが、最近まで私を誹謗中傷していた男も同様でした。私が精神薬の危険性をお話しただけで急に私を誹謗中傷するようになって、あげくには私の住んでいる市の市会議員全員に私の悪口commentまで送り付けられました。が、幸い正義感の強い男性が、この男を一喝してくれたから、やっと誹謗中傷は止まりました。それにしても、あの男の誹謗中傷の激しさの源は何だったのだろう?最近はこういう見当外れのハラスメントは多いですね。社会が狂ってきている?
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Unknown (1948219suisen)
2022-06-02 00:16:01
私のcomment、ご迷惑でしたら消してくださって結構ですよ。
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1948219さん (象が転んだ)
2022-06-02 01:52:09
いえいえ、全然気にせんでエエですよ(笑)。

実は、1948219さんがブログを休止された為か、私もブログを書く興味が失せたみたいで・・・
過去に2度ほどブロクを休もうと思った事もありましたが、今回は少し違うみたいです。

ブログを書くのが億劫になると、他人のブログも読まなくなるんですよね。
私をブログの世界に導いてくれた1948219さんのお陰でブログの楽しさを満喫してきましたが、同時にその限界と醜さも味わってしまいました。

でもこうしてコメントが届く度に、”されどブログ”なんだなと思い知らされます。
つまり、”たかがブログ”っていう距離感が大事なんですかね。
ただ最近は、ブログを書く時間が海外ドラマ(Amazonプライム)に置き換わった事もあり、毎日の様には更新できず、コメントの返信も遅れがちになります。
どうかご心配なさらずに、マイペースでお過ごし下さい。

という事で、コメントありがとうです。
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延々と続くハラスメント (UNICORN)
2022-06-02 14:08:20
日本人というのは元々
建設的議論が苦手なみたいです。
こうしたら方が絶対にいいとか、こうすればもっと使いやすくなるとか提案しても
今後の参考にさせて頂きますとしか言わない。そこに反省も理解もないから、延々と悪質なクレームは続く。

言われる通り、クレームの本質を見抜かない限り、顧客はますます感情的になり、オペレーターは感傷的になる。
カスタマークレームも正当な理由があってこそ認められる権利だと思うが、カスタマーハラスメントも正当な理由がない限り認められるべきではない。 
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UNICORNさん (象が転んだ)
2022-06-03 04:11:02
日本では、クレームと言うと悪いイメージしかないが故に、ハラスメントなどの嫌がらせに発展するんでしょうね。
ただ、クレームとても全てが良心的で正当な理由に基づくものである筈もないので、年齢層においても、その日の感情によっても変わるし、男女差もありますし・・・

でも、「理由なき犯行」じゃないですが、理由なきクレームもハラスメントも許されるべきではないですよね。
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Unknown (りくすけ)
2022-06-03 16:35:47
象が転んだ様へ。

大変勉強になりました。
ありがとうございました。
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りくすけサン (象が転んだ)
2022-06-04 06:40:11
いえいえ、こちらこそ
ただ、偉そうに書いてるだけで・・・
でも、書く事で思い知らされる事もありますね。
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