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積極財政か?緊縮財政か?(前半)〜”悪いインフレ”に悩まされる日本の危うい未来

2025年02月13日 18時04分45秒 | 独り言&愚痴

 かつて、”増税なき再建”という言葉があった。当時は絵に書いた綺麗事とも思えたが、今となっては懐かしい響きである。 
 どうも巷では、MMTに代表される積極財政が大衆のウケを買ってるみたいだ。そういう私も、MMTの実像を知るまでは”積極財政もアリかな?”と思う所もあった。
 つまり、デフレではなくインフレにより景気が良くなれば、物価が上がっても給与はそれ以上に上がり、購買力も増え、国民も企業も大バンザイという訳だ。
 が、私はずっと前から、インフレや積極財政という言葉に懐疑的でもあった。というのも、”安ければ買う”というのが購買の本質で、”給与が上がれば高くても買う”というのは二次的な要因に過ぎないと思ってたからだだ。

 戦後の日本はデフレを脱却し、インフレに転換し、世界に誇る経済成長を成し遂げたのだが、ここに来て、過ぎたインフレのせいか、実質の景気後退のせいか、今は”悪いインフレ”とされる”スタグフレーション”の時代だといわれる。
 事実、某フォロワーの記事にある様に、日経平均株価だけでなく、お米やガソリンなど身の回りの全てが値上がり傾向にある。株高は日銀が金利高へ踏み切る口実を与え、ごく一部の資産家だけが儲かり、我ら庶民には全く関係なく、寧ろマイナスである。
 またガソリン高は、輸入インフレにより円安が加速した結果であり、その影響で物価全体が高騰する。お米の値段も過去最高を記録し、これは自民政府の減反政策の過ぎた失態であり、(今回)保有米の放出に踏み切った政府だけが儲かる仕組みとなりそうだ。

 結果論だが、これならデフレによる不景気の方がずっとタチが良く、インフレによる一時の好景気は見た目がいいだけで、実質上の悪害にも思えてくる。だがこれは、緊縮財政と積極財政の関係でも同じ事が言えやしないか?
 以下は、2年ほど前に書き溜めてた記事だが、今になって読み返すと、満更外れてはいない気もする。
 

積極財政か?緊縮財政か?

 確かに、”増税なき”積極財政は聞こえは良い。それは、(良いとこどりで)デメリットが見え難いし、失敗をした時が責任の取りようがない。後になって大きなしっぺ返しが国民に押し寄せ、”これだったら増税の方が安くついた”と大きく後悔するのだろう。
 一方で、緊縮財政は大衆受けが悪く、実際には政府資金があるのに増税を繰り返し、国民に負担を押し付けるだけで、”政府は何もしないで、国民に押し付けるのが策なのか”と国民の怒りは沸点に達する。
 因みに、今流行のMMTですが、”Modern Monetary Theory”の略で、現代金融理論または現代貨幣理論と呼ばれる。 独自通貨を持つ国はどんな多額の借金をしても(ナンボでも札を刷れるので)”財政破綻は起きない”と説く経済理論だ。しかし(統計上ではだが)、円という独自通貨を持つ日本は、既に財政破綻に近い状態にあるとの声があるのだが・・・

 一般に積極財政と緊縮財政はそれぞれ”大きな政府”と”小さな政府”に例えられる。しかし、共産主義という”大きな政府”が 破綻した旧ソ連崩壊などのケースを見ると、日本は”小さな政府”を目指した方がいいとの声もある。
 確かに、日本は少子高齢化なので小さな政府を目指しても、実際には大きな政府になっていく。故に、小さな政府を目指し、必死に努力しないと財政破綻で国民が苦しむとの理屈だ。
 事実、政府の方針で身勝手に無計画にお金をバラまいた結果、政府債務を膨張させ、日本の政府債務残高のGDP比は261%(2022年度)と堂々たる世界1位だ。
 因みに、2位は債務危機の記憶も新しいギリシャ。3位はエリトリアで50万人以上が難民として逃れ、4位も国民の1割が難民となり国外に逃れたベネズエラだ。つまり、日本は彼らと堂々と肩を並べる借金大国である。

 一方で、政府が保有する金融資産があるから、実質の借金は約120兆円程となり、殆ど心配はいらないとの声もある。因みに、日本のGDPに対する純負債(負債−資産)比率は18%に過ぎず、G7の平均よりも低いというデータ(2018年)もある。
 政府債務(政府の借金)は家計の借金とは異なり、日本政府や日銀には日本円の通貨発行権がある為、幾ら多額の借金をしても円札を刷れば返済できる。故に、財政破綻の可能性はゼロとの声もある。しかし、戦時の様なハイパーインフレを防ぐ為に、制度上の限度(法的限界)があるのも事実なのだ。

 故に、(これを鵜呑みにした)反緊縮で極端な積極財政(日本版MMT)を唱える人の多くは、”収入が少なくともクレジットカードでどんどん買っちゃえ”と、目先の景気に拘り、後の負担をあまり考えない。
 が現実には、リボ払いで苦しんでる人が沢山いる訳で、我ら庶民はそんな負の現実を直視せず、”積極財政で全て解決”みたいな白昼夢に近い幻想を抱く。
 つまり、中央銀行がお金を刷れば経済が活性化に、庶民の懐が潤うと信じ込む。しかし、数学も経済もそんなに単純じゃない。日本人は私も含め、金融や経済に関する考察する力が弱いので、流行りの経済用語に流される傾向にある。
 今の日本は既に”悪い円安”とされ、インフレの兆候が見え隠れする。そんな中、MMTなどの聞こえのいい経済用語は信じすぎると経済破綻を招くとの指摘も無視できない。


数学から眺めた統計データ

 事実、以下でも述べるが、3000兆円を超えるとされる日本の金融資産も計算や統計のとり方では、その数値も大きく異なる。
 実際、ニュース等で日本人の貯蓄額の平均値は1729万円である”とか”30代の金融資産平均は735万円”との報道を見ると(昨今の経済危機と言われる日本だが)、実際には”金持ちなんだ”と安心してしまう。
 一方で、”国民1人当たり1000万円の借金”とのニュースが流れると、”日本経済は既に破綻していたのか”となる。

 ではどちらが本当なのだろうか?

 実をいうと、”データの平均化は全く意味をなさない”という事だけは言える。つまり、統計データという数字は時として大きな嘘を付く。つまり、統計には嘘(トリック)が混じってるのだ。言い換えれば、”数字は嘘をつかないが嘘つきが(データという)数字をトリックに使う”のだろう。
 故に、データの出処や信用、調査の前提や詳細を確認した上で、平均値・中央値・最頻値・期待値などの用語をしっかりと理解する必要がある。つまり、(数学を基盤とした)統計学を十分に理解しなくては、経済や金融は語れないという事だけは言える。
 例えば、平均値はデータのバラツキを全く反映しない。その為に標準偏差がある訳だが・・故に、中央値(データを小さい順に並べた時に中央にくる値)や最頻値(最も頻度の高い値)や期待値(極端な値をカットした平均値)などを使い、精度と信用性の高い統計データを得る必要がある。

 つまり、現代の様な極端な格差社会では平均値は殆ど役に立たず、条件毎に調査する必要がある。「屈辱の数学史」でも書いたが、統計学は物語の一部を見せるが、意味のない事の方が多い。事実、GDP比とか純負債額とか、こういった統計データは、調査やデータのとり方、それに計算の仕方が曖昧すぎて、大半は当てにならない事の方が多いとされる。
 だったら、何をどっちを信じたらいいのだろうか?


賢いお金の使い方と財政対策 

 根っからのケチ性な私はどちらかと言えば、緊縮財政な方だが、というのも積極財政で失敗した時は責任の取りようがないからだ。
 日本が経済成長できなかったのは(お金がないからではなく)日本政府のお金のバラマキ方がドンブリ勘定過ぎて、上手く賢く運用してれば、ここまで酷くはなかった筈だ。
 事実(統計上のデータで信憑性に欠けるが)、2021年度の日本の金融資産は、(家計試算が2000兆円超で企業資産が1279兆円と)3000兆円を優に超える。
 故に、政府の方針でお金をバラまいた結果、政府債務を膨張させ、結果、(前述の様に)日本は統計データ上ではあるが、世界一の借金大国となったとも言える。

 お陰で日本は既に破綻寸前である筈だが、そこまでの実感はない。が、本当に破綻する前に、日本政府は市中に埋まってる膨大なお金を上手に動かす必要がある。勿論、その為には、リスク管理を徹底し、創意工夫された積極財政が不可欠になる。
 しかし要は、積極や緊縮ではなく、政府のお金の使い方こそが大きな問題である。
 つまり、ここを履き違えると、積極財政は自殺行為となり、緊縮財政も宝の持ち腐れになり、事実上の経済破綻が起きる。

 金持ちはお金の使い方が非常に上手い(だから金持ちなのだろうが・・)。逆に、政治家は他人のカネ(税金)と思ってるせいか、乱雑にお金を使う。一方で、我ら庶民は貧乏な程に(金がない時程に)モノを買いたがる。だから余計に貧乏になる(悲)。
 しかし、日本政府は海外に金をバラまき、国民には緊縮経済と増税で締め付ける。更に、国内の税収は大企業や一部の富裕層に割り当てられ、その結果、日本は深刻で慢性的な経済困窮状態に陥ったみたいに思える。
 つまり、今の日本経済を立て直す為には、国内に埋まってる約3000兆円を超えるとされる金融資産を上手く使う必要がある。言い換えれば、緊縮(渋チン)でも積極(バラマキ)でもダメというのが、今の日本経済である。
 しかし、MMT理論が流行ったが為に、積極経済は追い風になってはいるが、今ここでお金の使い道を間違うと、経済大国から経済難民に成り下がるのは明白だろう。

 確かに、積極財政派の声としては、円札を沢山刷って国内市場に流す事で、いずれは需要が供給を上回り、物価が上がる。やがて企業の収益も上がり、我々の給料も上がると考える。
 だが、日本の様に国内資源に乏しい国では、景気回復どころかインフレを加速させる危険性が高い。結果、MMTであろうが積極財政であろうが、お金の使い方が重要になる。
 一方で、富の再分配は民主主義の基本である。しかし現実は富の一極集中であり、円札を沢山刷って国内市場に流しても、大衆には届かず、大企業や一部の富裕層に集中する。
 悲しいかな、マルクス先生が主張する”富の分配”論は空想に過ぎないし、資本主義とは資本家による富の一極集中に過ぎないのだ。
 が仮に、積極財政でも国民の大半を占める弱者の待遇を潤し、隅々にまでお金が行渡れば、市場全体が活性化し、MMTは評判通りの威力を発揮するのだろうか。
 悲しいかな、その保証や根拠は何処にもない。


最後に

 円安の影響から、過去最高益の企業が続出したとのニュースが一時期賑わったが、それだけで日本の景気は良いと言えるのか。
 この状況だけで、景気が良いと判断する富裕層と、逆に景気は良くないと判断するのが貧困層だとしたら・・それもまた悲しい経済格差と言える。
 今、本当に問われるのは、現在の日本の景気が悪いという事を等身大に理解できる人がどれだけいるだろうかという事である。

 日常レヴェルで見ても、今の日本の景気は明らかに悪い。それは、(私も含め)庶民の無機質で暗い表情を見れば、一目瞭然だが、一方でごく一部の裕福な民も激安スーパーで見かけたりもする。勿論、それだけ富裕層が庶民に落ち込んだとも言えなくもない。
 確かに、自分の将来は明るいと勘違いするのは勝手だが、給料もそのうち上がるだろうと漠然と考え、必要な対策を怠る。つまり、本当は悪い景気を良いと解釈すれば、(水原被告でもないが)格差社会でなくともボロ負けする。
 故に水原被告の様に、大損しても”大谷の口座から幾らでも引き出せる”と勘違いすれば、結果的には30億円もの借金を背負う事になる。
 物価が上がっても賃金が上がり、景気も回復するとの経済学上の従来の見方もあろうが、物事はそんなに単純でヤワじゃない。

 我ら大衆は、専門家の言う事を鵜呑みにする傾向が強い。特に、経済学者らの”響きの良い”横文字の専門用語には、餡の疑いもなく信じ込む傾向にある。
 勿論、私もその傾向にはあるが、冷静に考えれば、財政を緩めて需要を刺激するか、財政を引き締めて抑制するかの対策は存在するが、積極と緊縮とに明確に分ける必要がどこにあろう。また、デフレ(物価下降)とインフレ(物価上昇)の言葉も、何を基準にするかで、その意味が異なってくるのではないか。
 つまり、我々は知らず内に経済用語に踊らされ、経済そのものの本質を見失ってるのではないか。例えば、マルクスの資本論の様に、”富の公平なる分配”という聞こえのいい幻想を追いかけるだけでは、資本主義の本質すら理解できないではないか。

 従って、”インフレ=積極財政=好景気”とか”デフレ=緊縮財政=不景気”とかの経済学上の単純な決めつけほど怖いものもない。
 そういう意味では、昨今の漠然とした不景気に包まれた日本において、”景気とは何か”を考え直すのも日本の将来を考える上で、大切な事ではないだろうか。

 という事で少し長くなったのでここで終りにします。次回「後半」では、”MMTのウソとホント”について語りたいと思う。

 


6 コメント

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スタグフレーション (タック(takx007))
2025-02-13 20:43:05
スタグフレーションで思い出すのは、幼い時に体験したオイルショックですね。
取っていた児童月刊誌が、月々薄くなっていくのを見て幼心に恐怖を感じました。
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積極財政派の考え方 (平成エンタメ研究所)
2025-02-14 09:08:28
僕は積極財政派なんですよね。

たとえば消費税がゼロであれば、1万円を使っても1000円浮いて、その1000円を別のことに使えます。

中小企業は赤字でも消費税を払わなくてはなりませんから、その分、経営は苦しくなり、社員の給料は上がりません。

・消費者が使えるお金(可処分所得)を増やす→消費が増える→企業が儲かる→給料が増える→可処分所得が増える→以下、同じ。
という経済の好循環が生まれます。

そのために国が積極的にお金を刷って減税や給付などの措置をおこない、市場にお金を行き渡らせる。
これが積極財政の考え方です。

一方、このまま緊縮財政を続けて行くと、日本の市場はどんどん縮小していき、「失われた30年」が40年、50年になっていくと思います。
………………………………

ただ積極財政にも問題点はあります。

・お金をバラ撒きすぎて過度のインフレになる可能性があること。
・円の信用がなくなって国債や日本企業の株が暴落するかもしれないこと(英国のソラス政権がそうでした)。

とはいえ、インフレになった場合は、税金をあげてインフレを抑制すればよく、円の信用下落も、日本には国内や海外含めて1京円もの資産があり、信用下落はないと言われています。

僕は最近「借金」という言葉を使わない方がいいと考えています。

「借金」という概念ではなく、「過度なインフレになるか否か」「円の信用がなくなるか」の基準で考えた方がいいと思っています。

それに客観的に見れば、日本国債はほとんどを日本人が買っているので、日本人の資産。
つまり利息は生じますが、プラスマイナスゼロです。

長々とすみません。
以上、積極財政派の考え方でした!
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タックさんへ (象が転んだ)
2025-02-14 11:43:22
ありましたね。
オイルショックというものが・・・
ただ、昭和のいい時期だったので
スタグフレーションとは言え
まだ子供の頃だったので、あんまり危機感はなかったんですが
キャベツがタダになったりと
そっちの方が印象に強かったです。

でも、今のスタグフレーションはかなり深刻なものになりそうな気がします。
巷で言われてる様な十分な金融資産が日本にあれば、切り抜ける事は出来るかもですが
コメントいつも有難うです。
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エンタメさんへ (象が転んだ)
2025-02-14 11:46:35
私は緊縮財政も積極財政も
どちらにも拘る必要はないと思います。
要は、お金の使い方が問題な訳で
そこを履き違えると、緊縮であろうが積極財政であろうが失敗する。
勿論、日本には十分な金融資産があるとの前提ですが・・
ただ、日本人の世論を見てると必然的にか、圧倒的に積極財政派が多い様に感じたので、敢えて記事にしました。
後半もMMTの問題点に関する記事ですが
積極財政派には耳が痛いかもですね。

こちらこそ色々と教えて下さって勉強になります。
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ミニマリストと緊縮財政 (tomas)
2025-02-15 13:02:03
数学系らしいミニマムな意見で
一昔前に流行ったミニマリストの典型ですよね。
全てを必要最小限で済ますっていうシンプルライフの生き方
でもそんな生き方が出来るのはごく少数派で
多くは大量生産大量消費に傾きます。
そういう風潮に違和感を感じたアメリカの富裕層が広めたミニマムなスタイルですが
結局は長続きしなかったような
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tomasさん (象が転んだ)
2025-02-15 15:16:07
数学者にケチが多いのは認めますが
必要最小限で最大限の効果を出すってのが数学の本質ですから
だから数学はケチ臭くて煙たがられるんですね。

昔から”デフレ=不景気”との決まり事があり、常にデフレは悪役でした。
でも、逆の視点で見ればと思って検索すると
デフレ派も全くいなくはないんですね。
そこで何となく記事にしてたんですが
コメントがあるだけホッとしてます。
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