象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

「野球とニューヨーク」”その3”〜不正と汚職の象徴、そしてタマニーの支配

2018年02月27日 14時15分19秒 | 野球とニューヨーク

 マンハッタンに産み落とされ、賭博による不正や八百長、それに闇酒にと共に、大きく繁茂し、国民の娯楽として醜くも膨れ上がったベースボール。

 勿論、そういった不正と悪に真正面から、対抗する”野球の父”チャドウィックなんかも、タマニー派には、殆ど対抗できなかった。

 ナリーグの前身であるナショナル・アソシエーション(NAPBBP)もこの不正の犠牲になる。以降またたく間に、混乱の大リーグへと突き進むのです。

 このリーグに、最初に加盟したのは10球団。NYでは唯一、ツィードがオーナーである憎きミューチュアルズが参加した。結局、このリーグもツィード一味の支配下にあった事は、後々までこの地のベースボールの性格を、大きく決定付けてしまう。

 日本で最初の野球が、現在の東京大学のルーツ校で発生した事が、後々までこの国の野球の方向性を決定付けたのと、全く同じである。  

 それに前回述べた様に、アイルランド系移民を守る為に、対立する黒人選手を排除したのも、実はこのツィード一味なのだ。ホントに悪い奴らなんです。


 当時の選手の給与は、何とポジション別に決められてた。サードが$3000と一番か高く、二塁手が$2500投手と捕手と遊撃が$2000外野は$1500。当時は右のプルヒッターが殆どで、三塁に数多く打球が飛んだ為だと。全く面白いですね。
 

 球団は低いサラリーで選手を縛り付け、それ以外は入場料収益に応じたボーナスだったので、八百長が絶える事はなかった。

 経営基盤の脆弱さも手伝い、チームの変換も多く、NAPBBPが存続した5年間で、出現したチームは25で、最後まで残ったのはNY、BOS、PHIだけだったとか。

 選手個人の連合体という理想的な形態だったのに、とても残念ですね。ツィードがオーナーを辞したミューチュアルズは、またも八百長に手を染めた。翌年も同様、不正に手を出した。

 延々と繰り返される八百長にファンはようやくソッポを向く。東部の球団は支配権を手放す筈もなく、他の球団は新たなリーグを模索した。 

 NAPBBPの最終年は、まさにスキャンダル塗れの年となる。前年、Wストッキングス戦で八百長を働いたディック・ハイアム(ミューチュアルズ)は、この年Wストッキングスに移籍し 、ジョー・マグローと並ぶアイルランド系の名選手であったが。
 彼はフィラデルフィア戦で、またもや八百長に絡んだ。全く賭けと女とドラッグは、一度染まったら抜けれませんな。

 相手選手が胴元に買収され、ゲームを捨てるのに気付いた彼は、逆にゲームを売り、賭博師の裏をかいたのだ。ハイアムは解雇されるも、直ぐにミューチュアルズに受け入れられた。
 ホントここまで来ると、馬鹿とベースボールは叩いても治らんと。

 因みに、この悪童ハイアムはユニフォームを脱いだ後も、ナリーグのアンパイアとして球界を生き延び、82年にアンパイアとしても八百長を仕掛け、リーグから永久追放を受ける。
 日本人である事を、アイルランド系でない事を、アメリカ人でない事を、誇りに思いますな。

 
 1876年に誕生したナショナルリーグはNAPBBPの反省から生まれた新リーグであった。が、NYからは唯一、憎きミューチュアルズが加盟した。他にボストン、シンシナチ、ハートフォード、シカゴ、ルイヴィル、フィラデルフィア、セントルイスの計8チーム。

 70試合制で、牧師や女性はタダにした。上級階級の娯楽にしたいとの意向もあった。しかし、以前と同様に、大小のスキャンダルは常に抱えていた。 
 何故イカサマがなくならないのか。それだけタマニー派の影響が強かった。高い理想の元発足したリーグだが、波風は絶え間なく、苦しい経営の球団も絶えなかった。

 初年度から利益を上げたのはシカゴ(現カブス)のみで、フィラデルフィアもミューチュアルズすらも、リーグを去った。リーグ体制が強固すぎて、自由を封じられ、立場上リーグを去ったのだ。

 1873年ツィードは204の罪状により、12年の禁固刑を受ける。彼の子分達は、罪を彼一人に被せ、逃げ去った。
 75年に脱獄し、キューバに渡り、更にスペインへ逃れるも、再び逮捕され、NYへ連れ戻された。

 そして、とうとう1878年に肺炎で死亡する。NYに戻ってからのツィードはすっかり素直な人間に戻り、周りも彼に敬意を抱く様になったとか。悪い人間ほど、変り味が早いと言いますもんね。

 確かに、W・M・ツィードは悪事の限りを尽くした。が、消化に献身的に働いたのも事実で、多くの人を助けたのも事実。
 政治を食い物にしたのも事実だが、多くのアイルランド移民を救った。良くも悪しきも彼が、その時代を象徴する人物であった事には代りはない。

 まさに、正当なる汚職の典型の人物だ。ツィード親分が死んだ所で終りにします。



2 コメント

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正当なる汚職 (paulkuroneko )
2018-03-31 02:21:36
NYに逃げ込んだ移民の貧しさと苦悩を紛らわす為に生まれたベースボールが汚職と共に急成長し、アメリカの国民的娯楽となっていく過程は、実に感慨深いです。

メジャーも開幕しましたが、そういった負の歴史も積み重なって娯楽は成熟していくのでしょうか。ツィード死すも悪は死なずっていうとこですか。
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Re:正当なる汚職 (lemonwater2017)
2018-04-01 05:01:16
全くですね。

 悪いやつほど、自らの悪を知り尽くしてるから、必要悪をうまく利用し、悪の二面性を多面性を利用し、のし上がったんです。
 
 マクドナルドのハンバーガーと同様に、得体の知れないベースボールという娯楽が全米中に増殖したんですね。
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