夢の中で、私は読売巨人軍のファームの球場にいた。一番下っ端の練習生らしく、背番号はない。
日中は球団職員として雑務をこなし、夜になって何とか練習できるという過酷な環境にある。
私は一通りの仕事を終えると、夜の練習に備え、自宅のアパートへ戻っていた。
私は急いで夕食を摂り、シャワーを浴びて、練習場へと向おうとすると、ある1人の男が待ち構えている。
その男は、私が過去に1度だけ犯罪に手を染めた時の悪友だった。
男はニヤリと笑い、私を脅してきた。
”今は(おめでたく)球団職員になり、練習生としてプロを目指してるんだってな”
私は男を無視して、原チャリに乗り、先を急ごうとした。
その時、男の手が私の肩に触れた。
”忘れちゃ、困るぜ。このオレ様を・・・”
私は無視を貫いた。
男は、強い力で私の腕を引っ張り上げる。
”覚えてないとは言わせないぜ。ただ、少しお金が欲しいだけだ”
悪友との再会
私は観念した。
”それだけの用で、わざわざ俺に会いに来たのか?”
男は、猛禽類の様な眼光鋭い視線を私に投げつける。
”それだけって事はないだろ?実に久しぶりだよな”
私は男の顔を見た。昔とちっとも変わってはいない。ワルのままだ。
”アンタが今何をしてるか知らんが、私には関係のない事だ。今すぐ、ここから出てってくれ”
”出てけだと?それが親友に向ける言葉か?”
”今私は忙しいんだ。アンタと長話してる暇はない。それに、失った過去は戻っては来ない”
”その過去が戻ってきたんだよ。そして語りかけてんだ。少しは相手にしろよ”
男は益々睨みを聞かせ、私の前に仁王立ちする。
”カネが欲しいんだ。でなかったら、これを買ってくれ!安くしとくからさ”
男は、ポケットから白い粉が入った小さなビニールの袋を取り出す。
”たったこれだけで3、4回分はある。2万円ポッチにしとくからさ、悪い話じゃないだろ?”
”今の時代に、人生を破壊する薬物に手を出すバカがどこにいる?タダでも買わんよ”
”だったら、1万円ポッキリでどうだ。アンタだから安くしてんだぜっ!”
”だから何度も言わせるな!今どきそんな代物、ヤ◯ザでも買わんだろう”
男はニヤリと笑う。
”バラしてもいいんだぜ?前科の事を球団にな。読売って結構なワルがいるらしいじゃねーか。俺らなんか、まだまだ雑魚みたいなもんだよなぁ〜”
”とにかく、今はアンタに付き合う暇はない。他を当たってくれ。それに今の俺には、そんな自由になるお金はない。生活するだけで精一杯なんだ”
男は真顔になった。
”俺から逃れれるとでも思ってんのか?いつからそんな生意気な口を聞くようになった?”
私は昔を思い浮かべていた。
”今の俺は、今のお前とは違う。昔のお前はもっと正義感に溢れていた。それにあれは単なる事故だった。俺たちは偶々逃げ遅れただけさ”
”運がなかったというだけか?”
”ああ、そうだ。だから俺はこうやって昔を取り戻そうと、必死で頑張ってる”
”俺にはチャンスすらもないというのか?お前に俺の何が解るってんだ”
私は男の腕を振り払おうとした。
男はキラリと光る鋭い何かを取り出す。
私は危機を察し、目の前の男を遮った。
狂気が男を支配する。
気がつくと、男は口から血を流して倒れていた。既に脈はなく、ピクリともしない。
一軍昇格
怖くなった私は、男を近くの掘割にまで引きずり込むと、ドポンと投げ込んだ。
”これで前科2犯か、全くツキのない人生だな”
私は練習場へと急いだ。
ロッカーへ到着すると、何かしらミーティングがあってるらしく、誰もまだグラウンドにはいなかった。
それに、ロッカー内がざわついてるではないか・・・
そして何とそこにいたのは、かの栄光の巨人軍だったV9時代の川上哲治監督である。
私は軽く会釈をすると、監督は静かに語りかけてきたではないか。
”君が〇〇君か?最近は調子良さそうだな。いきなりだが、一軍に来てくれないか?”
私は、息が止まりそうになった。
数分前は最悪の事態に陥ったのに、その数分後には最高の事態が待っていたのだ。
私は気が動転しながらも、口を開いた。
”一体、どういう事でしょう?”
監督は少し微笑んだ。
”背番号も15で決まってる。悪い数字じゃないだろ。すぐに来てくれ、車も用意してあるから・・”
私は目の前の出来事が信じられなく、ため息を漏らすのみであった。
しかし、川上氏は意外な質問を加えた
”ああ忘れてた。君ね、血液型は?”
私には嫌な予感がした。
”なぜ血液型が必要なんですか?”
老監督は笑いながら、”ほら、長嶋はB型だったから”と、青ざめた私をからかう様に冗談を噛ます。
私はホッと胸をなでおろし、”AB型です”とウソをついた。
ひょっとして、前科2犯がバレるかもしれないと慎重を期したつもりだったが、もう今となっては遅い。何と言われようとシラを切り続けるしかないのだ。
川上氏は背中をくるりと向け、過ぎ去っていく。
私は黒い背中から目をそらす事なく、ずっと追いかけていたが、その背中は次第に遠ざかっていく。
私は訳も解らず、その場に立ち尽くしていた。
喜んでいいのやら、悲しいのやら・・・
そしてその時、夢から覚めた。
最後に
プロの世界では、結果が全てである。
生い立ちがどうであろうが、親が誰であろうが、前科者であろうが、そういう事は二の次である。
性格も人格も育ちも教養も、最初からどうでもいい。
カルロス・ゴーンみたいに、親が殺人犯であっても、猛禽類みたいな眼つきをしてても、数字さえ残せば、大企業のCEOに君臨し、大金が転がり込み、結婚も出来て、一端の家庭も築ける。
しかし、そういう叩き上げ系のスポ根ワールドも、今のプーチンを見てるみたいで嫌気が刺す。
結果が売上が全てなら、それは勝利至上主義の戦争も同じである。勝利や結果や売上の為には、殺戮でも盗みでも何でもする。
夢に出てきた男はもう1人の自分であり、追い詰められた時の、悪い自分かもしれない。
現場の最前線に送られた兵士には、夢も希望もない。あるのは、上からの矛盾した殺害命令と僅かな日当だけである。
そんな矛盾の大海の中を我々庶民は泳いでるのだ。”多少の過ちがあっても何ら不思議じゃない”
そういう事を思わせてくれた些細な悪夢でもあった。
でも天下の川上哲治監督に会えたんだから
ラッキーでもありました。
プロの世界って数字が全てだから
過去はあまり言われないんですよ。
でも引退した後が問題になります。
社会人は信用が全てですから
とは言っても、権力者や一部の特権階級はやり放題ですが
ところで
佐々木朗希の快投は海の向こうにも十分伝わってる見たいです。
言われる通り、大谷より上だとされてますね。
特に制球力の凄さは高く評価されてます。
今季の大谷は投手では?ですが、打つ方は問題ないみたいですね。
マジでやばいと思いましたね。
夢にしてはとてもリアルでした。
確かに数字が全てとは言え、何でも許される世界ではないですから、普段の行いも長い目で見ればとても大切な事ですよね。
佐々木は大谷を超えると見てましたが、その通りになりそうです。
ただ、このまま調子漕いて投げ続けると高い確率で怪我をしそうですから、慎重になる必要があるのかな。
大谷に関しては、フルシーズン戦えるかは疑問ですね。多分途中でリタイヤすると私は見てますが・・・