ブログで自分の事を書くのは大嫌いだ。
恥ずかしいとか照れくさいとか、そういうんじゃなく、自分の事を書くと、どうも気分が落ち込み、暗黒の闇の中を彷徨ってるみたいで頭がおかしくなる気がするのだ。
それ以上に書いてて、こんな事誰が信じるかって、我ながらアホらしくもなる。それこそ、”陰キャ”って揶揄されそうだ。
しかし、自分自身へのルポルタージュとして捉えれば、まんざら悪くはないかもしれない。
”真夜中の訪問者”シリーズは、その殆どが夢で見た事を書き綴ったものだ。
しかし、この真夜中の訪問者は正真正銘の実話である。約3年前に書いた記事だが、改めて読み返してみると、背筋が寒くなる程だが、逆に非常に懐かしくもある。
当時はヤバ過ぎて書こうか少し迷ったが。45年近くも前の事なので、時効かなとも思ったし、”アポ電”殺害事件の報道を見た途端、45年前の恐怖の体験を思い出したからだ。
実は、この”45年前の恐怖”とは何と、連続強盗殺人犯から殺されかけた体験である。
詰まんない旅行?
親父を亡くし、塞ぎ込んでいた私を慰めようと思ったのか、お袋は家族旅行を思いついた。兄と私とお袋の3人でのちっぽけな質素な旅行の筈だった。しかし兄は、高校の山岳部の大会のスケジュールが入ってたから、私とお袋の二人だけで山口の秋芳洞に出掛けた。
1泊2日の旅で、これといって良い思い出も特別な思い出もなかった。
到着が遅れ、アポ無しで入った旅館がやけにみすぼらしく、女将さんの人相がやけに怖かったのを覚えてる。夜遅くラーメンを食いに行ったが、そこで遭遇した中年ホステスの人相も化け物に近かった。
お陰で何度も夜中に目を覚ました。もうこの時点で何か起こりそうな気配してたんですね。
しかし、1つだけいい思い出?があった。山口から帰途に着く途中、駅の名は忘れたが、ある母娘に出会った。
相手の娘さんは多分20才前後だったろうが、パンツがモロに見える程の大胆なミニスカートだった。私が小学生という事もあり、全く警戒がなかったのか、モロダシのパンツが見られてるのが解ってても、平気な顔していた。
大して魅力的な女には見えなかったが、”詰まんない”旅行の中では、唯一の”イベント”ではあった。
危機一髪
全く詰まんない無味乾燥な旅行だったから、早く帰りたかった。お袋も私以上に詰んなさそうだった。
夕方5時頃に福岡県の久留米駅に着き、夕食をそこでとるか?家で食べるか?迷った。
私は早く帰りたかったから、家で食べたかったが、お袋は夕食を作るのは嫌だと言い、駅近くのレストランで夕飯を済ませる事にした。
平日の夕方だったから、駅構内のどの食堂も混んでいた。仕方なく中心街に出掛け、空いてる食堂を探すのに時間が掛った。お陰で、夕食を済ませたのが7時頃になった。
食事が終わってすぐに帰ろうとしたお袋だったが、今度は私が駄々をこねた。そのまま帰るのは詰まらないからと、プラモデル屋さんを探して周った。
お袋はうんざりしてたが、結果的に私のこの駄々こそが、親子2人の命を救う事になるのだが。持論そんな事は、その時は露知らずである。
なかなか気に入ったプラモデルが見つからず、延々と探して回った挙げ句、結局バルサで出来た貧相な飛行機を買い、終電の1つ前の電車で帰宅した。
因みに、この紙飛行機は一度も空を飛ぶ事なく、お払い箱になったのだが、結果的にはこの憐れな紙飛行機こそが母と私の命を救ったのだ。その意味では、紙飛行機というより”神”飛行機と言うべきか(笑)。
家に着いたのは夜の10時過ぎだったろうか。兄は山岳部の大会で明日帰る予定だったが、部屋には明かりがアカアカと点いてたし、玄関は開きっぱなしだ。
ひょっとして予定が変わり、兄が帰ってきたと思いきや、誰もいない。
さらしに巻かれた出刃包丁
一瞬、背筋が凍り付く。
居間のテーブルの中央に、さらしに巻かれた出刃包丁が几帳面に置かれてあった。
何だかおかしいと思い、裏口に周ると、壊れかけた軟弱なドアが開いたままだった。
お袋は直ぐに警察に電話した。
深夜の田舎に、ド派手なサイレンが響き、直ぐに赤赤と光を灯したパトカーが到着する。
殺人課の警察は、さらしに巻かれた出刃包丁を見て、直ぐに連続強盗殺人と断定した。現場検証が慌ただしく行われ、すぐに結論がでた。
犯人は昼の3時頃(推定)に裏の戸口をこじ開け侵入した。その上、刃物で脅し金品を盗む予定だったが、誰もいない為に、夜の9時くらいまで居間の中央でデンと構え待ってたらしい。
なかなか帰ってこない親子に、流石にしびれを切らした犯人は、出刃包丁をさらしに巻いてテーブルの中央に置き、その場を去っていったという訳だ。
”もし泥棒がいた時間帯に君達が帰宅してたら、100%殺されてたね”と、殺人課は呆気なく語った。
それを聞いて、小学生の私は再び背筋が凍り付いた。流石に場慣れした殺人課らしく、恐ろしく冷たい言い方だったのを覚えてる。
この泥棒は刃物で脅し、金品を盗み、その上人を殺すという、当時では類を見ない、珍しい強盗殺人犯だったのだ。
連続強盗殺人犯
この凶悪犯は、数週間前から我が自宅の周りを度々彷徨い歩いてたという。
これは隣の団地に住む人の証言から明らかになった。私達2人が山口に一泊2日の旅行をし、夕方頃に帰宅する事も、犯人には全てがお見通しだったのだ。
ちょうど今回の”アポ電”殺人と同じケースではある。情報を全て知り抜いた上での計画的で冷静な犯行だ。
夕方に帰ってくる筈が、母が夕食を作るのを嫌がり、帰宅時間が2時間ほど伸びた。犯人はそれも想定内だった。しかし、夕食後の私の”駄々”は想定外だった。この僅かに1時間強のズレが犯人のプランを狂わせたのだ。
サイコパスでも書いた様に、殺人犯という人種は異常なまでに冷静だ。”冷たい脳”がやけに発達してるから、その計画は几帳面に練られてはいる。しかし、激情や感情を抑制する”熱い脳”が腐ってるので、少しでも計画が乱れると途端に我を忘れ、混乱してしまう。
結局、この強盗殺人犯は我が家で”未遂”に終り、一ヶ月もしないうちに隣町で同じく強盗を働いた所を、警察に捕まったという。あまりにも呆気ない幕切れで、肩透かしを食らった気分になった程だ。
この間抜けな殺人犯は、1件目はまんまと成功し、その勢いで私の家を狙った訳だが。隣人に目撃され、その上プランが狂った事が致命傷となり、3件目でアウトになった。
バックドアの脆弱さと
何故、私の家族が犠牲になりかけたのか?
考えられるのは、父親が死んだばかりで、空き巣に入るには格好のエサではあった事。だがそれ以上に裏の戸口のカギが脆弱だった事も、大きな要因ではあると思う。
昔の田舎の家は、大体において玄関が堅固にできてるが、裏ドアは非常に脆く出来てる。親密な知り合いが裏に周り、そのまま出入りするという事はよくあった。
その為にわざと裏ドアの鍵を貧弱なものにしてたのだろうか?警戒心の強い親父が生きてた頃も、この裏ドアの鍵は”チョン掛け”の簡易なものだった。子供の力でも強く引っ張ればすぐに外れた。
仮に”泥棒が入るとすれば、この裏ドアから簡単に入れるだろう”と、子供心に思ってたもんだ。
勿論犯人は、裏ドアの位置もチョン掛けの鍵も知ってた筈だ。故に、父親という堅固な鍵は家族には絶対必要なのだ。
母親が1人で家を守るには当然無理がある。昨今はシングルマザーといって、母が1人で子供を育てるってのが流行りとか、カッコいいみたいに思われる風潮があるが、大きな誤りだ。危機は常に脆弱さに纏い付く。
それ以来、旅行に出かける時は隣人に一言残し、出かける様になった。
強盗殺人という名のアポ電殺人
45年前のこの”恐怖”は、今回の”アポ電”殺人と非常に似たケースではある。
我が家には、親父が必死で働いてた為に多少の遺産はあった。故に、資産目当てに母子家庭を狙っても不思議はない。
特に一人暮らしの女性の高齢者で、それも資産家であれば尚更だろう。アポ電殺人では一人の老女に、3人の大男が襲いかかった。つまり、100%ミスしない状況である。
今回のアポ電殺人を見て、40年前を急に思い出した。人は人を簡単に殺すし、殺せるものだ。そして人は思う以上に簡単に死ぬし、殺される。犯行はあっという間だし、死ぬのもあっという間だ。
実際に犯人の標的にされ、ロックされたら、それで万事休すなのである。そこに狂いやミスは殆どない。
選択された死
私達はそんな危険な世の中に生きている。平和な筈の日本にもそういう恐怖と危険はゴマンと存在する。一人殺されようが40人殺されようが、殺人は殺人であり、恐怖には変りはない。
そういう私も、この”45年前の恐怖”を最後に、死に対する等身大の恐怖を忘れかけていた。いや全く忘れていた。
”死”には自分自身が選択するものと、他人が選択するものがある。自殺や安楽死以上に、本当に怖い死というのは、”他人に選択された死”なのかもしれない。
勿論、45年前以外にも何度か殺された経験はある。しかし、この時ほど怖かった記憶もない。他人に選択された死でも衝動的に殺されかけるのと、計画的に殺されかけるのでは雲泥の違いがある。
今回の”アポ電殺人”では色んな事を考えさせられた。僅か一人の老女の死が日本列島を震撼させたのだ。
基本的に過去は振り返らない方ですが、たまにはいいもんですかね。死にそうになった経験は結構あるんですが、あまり褒められた事でもないので、振り返りたくないというのが本音でしょうか。
コワーイ体験ですこと。何だか映画見てるみたいよ。
シンガポールも辺鄙なところでは、イヤな犯罪起きてる。転んだサンはそんな辺鄙なところにすんでるの?
駄々こねなかったら、このブログも私との出会いもなかったかもね。でもボクシングやってたなら、ヘボな泥棒なんて一発でKOできそうな気がするんだけど。子供の頃だったから無理かな。
ミニスカの女性はラッキーでしたね。
ではバイバイ。
以前、刃物突き付けられた事あるんですが。何もできんかったね。人間て弱い生き物だと思った。
Hoo嬢も何かあるか分かんないから、気を付けた方がいいよ。今の時代、誰がオオカミかわからないもんね。
ではバイバイ。
こういうことって本当にあるんですね。
少し恐ろしくなりました。
殺人犯にとっては全てが想定内の行動で、唯一想定外だったのが駄々をこねた子供の行動って。
そんなことって
少し振り返ってみたんですが、訂正する部分が多々あるみたいで、暇があれば更新してみます。
40年前じゃなく、当時にして45年前ほどですか。
でもあの時は人の命って羽ほどに軽く、危ういもんだなと痛感しました。
そんな事って、そんな事が起こりうるんですよね。
コメントどうもです。