夢の中で
私は大学の中庭にいた。
もうすぐGWというのに、私には彼女がいない。
”ああ、今年も独りで寂しくGWを過ごすのか”と思うと、何だかやりきれなくなった。
やる事もないので、食事でもしようと生協の食堂へ向おうとしたその時、何処かで見たようなオタク風の小男が近付いてくる。
”オイ、連休はどーせヒマだろう?麻雀でもやろうぜ”
私はキレた。
”お前はバカか!GWに麻雀やるくらいなら、舌を噛んで死んだ方がマシだ”
私は食事をする気も起こらなくなっていた。
”こんなバカに腹を立てても仕方がない”
私は近くのベンチに腰を落ち着けた。
目の前には、あたかも見せ付けるかのように、色とりどりのカップル(古臭な言い方か)が目立つ。
”法律さえ許せば、みんな犯してやりたいんだが・・・”
女の視線
私には(先程から)、ずっとこっちを見てるある女の視線に気づいてはいた。
私はあえて気付かない振りをし、相手が声を掛けるのを待っていた。というのも、女子大生にしては少し老けてる様に思えたからだ。
女は私をからかうかのようにずっと笑っている。
”何だか悔しそうね。イヤな事でもあったの?”
私は女の方を見た。
顔色は少しくすんでいたが、間違いなく”アンヌ隊員”いや、ヌードを披露した頃の(少しくたびれかけた)”ひし美ゆり子”だった。
”アナタの思ってる事、当ててみましょうか”
私は女をずっと見つめていた。
少し日焼けしてたが、ひし美ゆり子に違いはなかった。
”私とヤれるとでも思ってるんでしょ?”
私はすぐに開き直った。
”ああ、正解だよ。全くの図星さ”
女は少し笑った様に思えた。
”今すぐにでもヤれると思ってるでしょ?”
私も少し吹き出しそうになった。
”ああ、その気になりゃ、ここでもヤれるさ”
女は冷ややかな笑みを浮かべる。
”そんなに簡単じゃなかったら?”
私は、薄手の黒いブラウスに覆われた女の胸部に視点を集中した。
”もし、簡単だったらどうする?”
”そんな女に見える?”
”ずっと笑ってたろ?ヤリたいって証拠さ”
”そんな単純かな”
”ああ単純だね。その単純な中に、複雑で奇怪な女の心理が埋まっている”
”単純そうで単純じゃない?”
”「NP問題」と同じさ”
”単純な問題も全ては複雑ってこと?”
”ま、そんなとこかな・・・”
私はもう一度、女を見た。
アンヌ隊員程に若く魅惑的でもなかったが、確かにひし美ゆり子だった。
”今ボクが、君のブラウスに手を掛けたらどうする?”
”やめて!と拒絶したら?”
”拒絶するには勇気がいるさね”
私は、彼女の背中に左腕をゆっくりと忍び込ませ、背後から女の躰をガッチリと締め上げた。
”俺は今、アンタの背後に回ったぜ。さぁ、どーする?”
女は、形の良い豊満な胸をガードする様に両腕を前に固める。背中はガラ空きになり、私はブラのホックを外そうと手を掛けた。
女は諦めた様に微笑んだ。
”最初からこう来るのは判ってたわ。アナタは私の寂しい背中を見抜いてたのよね”
私は彼女から離れた。
”寂しいのはお互い様よ。アンタだって私の孤独な背中をずっと見てたろ?”
”幾ら強がっても、背中を見れば判る?”
女の頬が少し色味を帯びつつある。
”しかし、ここはどーだろ?”
私は、彼女のパンツの中に強引に手を忍び込ませた。
それから後の展開は、倦怠期の男と女のそれと同じである。
中庭のベンチではあまりに目立つので、図書館に場所を変え、再び行為にふけった。
しかし不思議と、欲情も躍動も感じなかった。ひし美ゆり子という肉の塊が、ただそこに存在しただけである。
峠を過ぎた感があったが、中途に満たされないまま、夢から覚めた。
最後に
”ひし美ゆり子”さんに関しては、記事を書こうとずっと前に準備をしてはいた。
しかし、ブログにするのは諦めた。それは彼女が”当り前な美人”に思えたからだ。
彼女がヌードになったのは、ウルトラセブンのアンヌ隊員を卒業し、東宝との契約が切れた24歳の頃である。
フリーの(売れない)カメラマンに”セミヌードを撮らせてくれ”ってしつこく付きまとわれ、”記念のつもりで”撮らせてしまう。
彼女は、カメラマンが(私に何の相談もなく)”勝手に週刊誌に売ってしまって・・・”と悔しがるが、明らかに男に(同情し)心を許し、まんまと騙されてしまったと思えなくもない。
夢の中でも彼女は、一度は”拒絶”した。
しかし、夢の中でも彼女は身体を許してしまう。つまり、私が予想した事が夢の中で現実となったのだ。
ただ、彼女の当時のヌード写真を見ると、とても美しくバランスもとれてはいる。が、躍動する魂が抜けたリアルドールの様な気がしないでもない。
私が夢の中で見た彼女の裸体は、魅惑的というより無味乾燥な肉の塊にも思えた。
脱いだが故に失速する女優も多い。ひし美ゆり子もその一人かもしれない。
しかし彼女は、自分の意志で脱いだのだ。
美しさのピークを過ぎた感を自覚していた24歳の彼女は、その記念として哀れな男にヌードを(敢えて)撮らせたのだろうか?
夢で見た彼女の”自虐的な微笑み”は、ヌード写真に見られる彼女の”渇いた微笑み”と同質であったようにも思えた。
男がもし、彼女のヌード写真を(彼女の為に)秘密にしていてくれたなら、ひし美ゆり子が女優になる事はなかったであろうか。そして彼女は、ごく普通の美人として平和な家庭を築いてたであろうか。
夢に出てきた彼女は、カメラマンにまんまと逃げられた”ひし美ゆり子”そのものだったのかもしれない。
哀れな普通の男にとって、当り前過ぎる美人は魅惑的には映らなかったのだろうか。事実、ひし美ゆり子本人も”自分の顔は個性がなくて好きじゃない”と語る。
私が彼女を記事にするのを諦めたのも、全く同じ理由による。
そういう事を教えてくれた夢のような気がした。
この頃は乾いてたような気がする
でも僅か24歳ですよ
老いるには若すぎるし、冒険するにも若すぎる。
カメラマンの事が心底好きだったのかはわからないけど
ヌード写真を見る限り本気だったような気もする。
ですよね。
アイヌ隊員の時がピークだった。
貧相なカメラマンに同情したんでしょうか。
結局は、まんまと騙され、ポルノ路線に走ったんですが、意外にも当時の日活ポルノはレヴェル高かったんですよね。
コメントありがとうございます。