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「地方紙を買う女」は、松本清張の短編小説(1957)で、「危険な女」のタイトルで1959年に日活で映画化、また9度に渡り、テレビドラマ化された有名すぎるほどの作品ではある。
勿論、9回もドラマ化されれば、当然原作とドラマのあらすじは時代と共に大きく変わっていく。
大まかな展開だが、潮田芳子は地方の二流作家の杉本隆治が地方紙に連載する「野盗伝奇」の購読申し込みをする。
しかし、1か月も経たないうちに”小説がつまらなくなった”と、彼女から購読打ち切りの葉書が届く。一方的な購読の中止を不審に思う杉本は、その地方紙に(偶然にも)載っていた男女の服毒心中事件の記事に目を留め、芳子の新聞購読の目的は彼の小説ではなく、この事件だと推論する。
つまり、男女の心中事件に芳子が関わってると確信するのだが・・・
ここまで書けば、後の展開はある程度読める筈だが、2016年の”田村正和版”では時代背景もラストも原作とは大きく変わっている。
実は、「鳩の撃退法」に大きく失望したあと、「地方紙を買う女」という作品をアマプラで知った。
心中事件を扱う推理ドラマは慢性的によく見かけるが、これも例外じゃない。
芳子が杉本に一ファンを装って近づき、毒殺しようと計画するも、一方で杉本が助手や私立探偵らを使い、クラブのホステスでもあり、大臣の秘書を旦那に持つ、彼女の隠された正体に探りを入れる。
ここら辺の流れは、とてもシンプルで見ごたえがあった。しかし、女が2人の男女を毒殺する理由が曖昧で浅薄すぎる。
万引きを偽装され、グルになってた男女2人の警備員に恐喝され続けてた事が心中を偽装した原因だが、逆に大臣という権力を使って脅せば、簡単にもみ消せる問題でもあった。
原作との一番の違いは、まさにここにある。
59年前の原作では、戦地から復員する夫に警備員(庄田)との関係を知られたくなかった芳子だが、男を心中事件に見せかけて毒殺し、自らもその毒で自殺する。
確かにシンプルな展開とプロットだが、”戦争はまだ終わっちゃいない”と、戦後の右肩上がりの時代に警鐘を鳴らす作品でもあった。
しかし、2016年のドラマは原作の表面を塗り替えただけの今風の軽い薄っぺらな作品に思えた。
勿論、お茶の間で楽しむTVドラマだから、重くて深ければいいってものでもないが、昨今の薄っぺらな時代には、逆に原作に近い展開の方が良かったのではないだろうか。
ところで私から見ると転象さんもお若いのですが夫が復員した妻の立場とか理解できますか?
例えば、旦那の愛人を旦那と愛人が心中したように見せかけ、2人纏めて殺すとか
そういうシンプルな展開に持ち込めば、潮田芳子役の広末涼子も少しはやり甲斐があったかなと・・・
少なくとも万引の偽装という理由での殺人は軽すぎるし、勿体ない。
コメントいつもありがとです。