象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

鏡張りの部屋と、その3。〜深夜のホテルカリフォルニアと〜

2018年03月30日 04時37分33秒 | 鏡張りの部屋

3月4日以来の”鏡張りの部屋”その3です。かなり間が空きましたが、悪しからずです。


 深夜にホテルカリフォルニアへと、ぶらりと立ち寄った男が幻想と現実の中で、彷徨い苦しむ場面からです。本当に彼は自殺したのか、それとも生きてるのか。


俺が死んだって、この俺が自殺したって。
そんな馬鹿な”

”これ貴方の身分証でしょ。
血がベットリと付いてたわ”

若い女は俺を蔑むように見下す。

支配人はニンマリする。
”これで貴方も、このホテルの住人ですよ
何の心配もなく、ここで過ごせるんです
永久にね。でも安心して下さい。
悪い事はしませんから”


改めて、ようこそ我がホテルカリフォルニアへ
ここは素敵な場所でしょ
ここには素敵な人達が沢山いますよ

”さあ、飲みましょ、踊りましょ。
スピリッツは、貴方のハートの中にある筈よ
貴方にとってここは、天国のはずだわ”


”ちょっと待ってくれ。俺は死んじゃいない
生身の熱い肉体も、感情も血液も、
迸るスピリッツも煮え滾る魂も、ちゃんとここにある。
冷え切ったアンタらとは、違うんだ”

”判ってないのね。
貴方は、仕事に捨てられ、仲間に裏切られ
家族にも、友人にも捨てられたのよ。
もう何処にも行く所がないの、
戻れる所なんて、何処にもないのよ”

”現実の世界には、貴方が住む場所なんてないの。いい加減に目を冷ましたら”


支配人が付け加える。
”お客様、今日はもうお休みになった方が、
書類は全て、こちらで処理しますから。
何か事あれば、彼女がお世話します。
どうぞご安心を、ゆっくりとお休みなさい”

女と支配人は、すっと姿を消す。


俺は一人部屋に戻る
勿論、冷えたシャンパンなんてなかった。
それに、鏡の部屋ですらない
酷く錆びついた部屋

やはりあれは幻想か妄想か、
それとも闇の深淵か。
あのコリタスの香りは甘い罠だったのか

俺が死んだって?
だって、ちゃんと肉体があるじゃないか。
傷一つない、まっさらな熱い肉体が。


俺は目を閉じて、神経を集中した。
これは現実じゃない
アイツらが勝手に作り出した幻想の闇だ。
俺はマリファナで酔ってるだけなんだ。

もうドラッグもアルコールも辞めてやる。
頭の中で描く快楽ともオサラバだ。
俺には現実だけが全てさ
どんなに汚い世界も、荒んだ友情も
どんなに仲間や家族から嫌われても、
それら全てを受け入れてやる。


素敵な場所が
素敵な人達が
痺れる程の快楽が
何の役に立つ
それらは全て悪魔の妄想に過ぎない。

甘い幻想に酔うよりも、
荒んだ現実に怯えてた方がずっとマシさ。
支配人の青ざめた顔、
それに女の氷みたいに冷え切った手のひら
 
全てが悪の悍ましい彫像
アイツらは俺から
生身の健全なスピリッツを
抜き取ろうとしてる
そうはさせるもんか


しかし、今の俺はあいつらに支配されてる
俺の心と脳内はあいつらにコントロールされてる。
闇が俺の全てを支配してる


ああ、俺はどうすればいい。


ようこそ、我がホテルカリフォルニアへ
🎵素敵な場所でしょ
🎵素敵な人達でしょ



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Re:やっぱり死んじゃうんですかね (lemonwater2017)
2018-04-02 02:16:03
こちらこそ、お久しぶりです。

確かに落とし所は難しいですね。

生と死、妄想と現実、快楽と虚無という二元定理に悩まされる男の葛藤を描きますか。

少し自信ないですが、駄目なときは駄目で、その時はスミマセン。
返信する
やっぱり死んじゃうんですかね (tomas)
2018-04-01 09:38:54
お久しぶりです。

やはり男は死んじゃうんですかね。
生と死を彷徨う男の幻想が闇を覆い、安易に快楽を求めるとか。

厳しい現実より安易な妄想が良く、心地いい悦楽よりも陰鬱な虚無の方がいいとか。
落とし所が難しいですね。
返信する

コメントを投稿