象が転んだ

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ハーバード的”柿の種”白熱教室〜6対4から7対3への変更の謎

2022年02月25日 07時19分58秒 | お題

 どうも酒を飲んだ後は”柿の種”(柿ピー)が欲しくなるのは、私だけだろうか?
 子供の頃は(亀田製菓の)柿ピーが大好きだった。大人になってからも酒のツマミとして柿の種をよく食っていた。
 柿の種のカリッと感とピーナツのサクッと感が、私の食感に実にマッチしていたのだ。
 実は、この柿の種とピーナツの重量比は従来は(黄金比率の)6対4だった。しかし、大きな議論が国民レベルで起きたらしく、2019年の国民投票の結果、”7対3”に変更されたと(知らんかった)。
 つまり、50年以上続いた”6対4伝説”がひっくり返されたのだ。


亀田の”柿の種”は終わった?

 個人的には、最近の(亀田製菓の)柿ピーは微妙に美味しくないと感じてはいた。
 ピーナツが少ないから食った気がしないし、柿の種としては物足りなく感じてしまう。それで、他のメーカーの(ピーナツがやや多く入った)安価な柿の種を買う様になっていた。
 多分、私がよく食う(亀田ではない)柿ピーは(昔ながらの)6対4の配合らしく、ピーナツがふんだんに入ってる感じがして、食感も食べごたえも満足するものである。
 ちょうど、キャラメルコーンのピーナツを思い浮かべると解りやすい。コーンを食べ終わった後に、袋の底に僅かに取り残されてるピーナツを食ってる時の、あの侘しさというか、戦後日本の貧相さとダブってしまう所がある。
 ”セコい事せずに、もっと多くのピーナツを入れろ!日本はもう戦後だ”と亀田製菓には怒鳴りたくもなる。

 しかし多くの日本人は柿の種派が多いらしく、私の様な昔ながらのピーナツ派は少ない。正直を言えば、5対5でもいいくらいだ。
 そこで亀田製菓は、こうした柿の種派とピーナツ派の双方の意向を踏まえ、柿の種だけとピーナツだけの商品を今回、全国で販売したという。
 実は、国民投票以降も柿の種派とピーナツ派の対立は(ウクライナ危機と同様に)燻り続けてたらしく、こういう不自然な形になった。
 しかしだ。
 私が何時も通ってるスーパー(ルミエール)には、(亀田以外で)3種類の柿ピーは昔から存在していた。(今回の亀田と同じく)柿の種のみとピーナツのみと、従来の”柿ピー”である。
 経験から言うと、柿の種のみとピーナツのみはその存在自体が??である。特に、柿の種だけは(安っぽい単調な味の)煎餅の欠片を食ってるみたいでケンナリする。一方でピーナツのみは食えなくもないが、これでは胃もたれを起こす。

 こういう幼稚な戦略を見ると、亀田製菓も過去のメーカーに成り下がったのかと、憐れみを感じなくもない。


なぜ、”6対4伝説”はひっくり返されたのか?

 冒頭で述べた国民投票(総票数、約25万6千)では、”7対3”が29.5%と第一位の支持率を得た。
 以下、2位は”8対2”で19.8%、3位は”6対4”の17.9%、4位は”5対5”の14%だった。因みに、柿の種のみは7位で3.7%、ピーナツのみは11位の0.3%。
 意外だったのは、日本人が柿の種好きなのと、5対5が上位に食い込んだ事。

 あるサイトでの調査によると、新”7対3”は柿の種25gに対しピーナツ10gで、比率は7対2.8。一方、旧”6対4”は22gと11gで、比率は6対3。つまり、公表されてるより若干ピーナツが少ない結果となったと。
 しかし、他のメーカーは亀田製菓よりも安い”柿ピー”を販売している。
 事実、ルミエールでは135gで99円の柿の種が売られている。亀田製菓は220gで199円だから、(100g当り)前者は73.3円で、後者は90.4円。それにピーナツの量も(昔ながらの6対4に拘ってるせいか)少し多めだ。
 味は”7対3”の新亀田の方が(ピーナツが少ないせいか)やや塩っぽいとされるが、胃もたれという点では(同じ様な理由で)やや亀田に軍配が上がりそうだ。

 ”7対3”に変更した理由は、ピーナツを少なくする事で余分な油が酸化するのを防ぐ為だとされるが、私にはどうも政治臭く感じてしまう。つまり、コストの掛かるピーナツを減らす事でセコく利益をあげようとしてるのでは? 
 が、こんなキナ臭い商法で”THE No.1 Rice Snack in JAPAN”を名乗れるのだろうか?

 柿ピーは(歴史的にも伝統的に見ても)ピーナツあってこそのコメ菓子である。”Rice Snack”ではなく、”Rice&Peanuts Snack”と呼ぶべきだろう。
 この流れが続けば、(最悪)柿ピーからピーナツが消えるかもしれない。そして、亀田の”柿の種”も消え去るかもしれない。
 これは、柿の種という駄菓子の本質を見間違えた典型でもある(と思う)。
 ”亀田の柿の種”という伝統と国内の根強い人気だけで海外へ進出というのも、今更な気がする。
 それに、コメ菓子は世界中にも沢山ある。わざわざ柿の種をブランド化する事自体、無謀だと思えるのだが・・・


柿の種は、世界に受け容れられるのか?

 事実、「ハーバードはなぜ日本の基本を大事にするのか」では、ハーバード大学で亀田製菓が注目される理由を解説する。
 亀田の柿の種の世界進出が成功するかは否かは、未だ誰にも解ってはいない。
 亀田製菓の田中社長は、”柿の種だけでいいというお客さまもいるし、ピーナツがあるから美味しいんだ、というお客さまもいる。お客さまの中には袋を開けてから、ピーナッツが増えたんじゃないか?とか・・・中にはお電話を頂く事もある”と語る。
 日本では美味しいと評判の柿ピーも、アメリカでは苦戦してるという。
 社内では、”宣伝方法を変えたら”、”置き場所を考えたら”、”食べ方を啓蒙したら”とかの意見が出る。

 ”論理的に最も正しい”と思われる方法で国外に進出しても、失敗する時は失敗する。結局はやってみないと分からない。
 日本は戦後、自動車や家電製品で成功した多くの経験がある。ソニーのウォークマンなどは”瞬く間に”アメリカ市場を席巻した。故に、日本で人気の製品を海外で売り出せば数年で結果が出ると思いがちだ。
 文化に関わる製品を売り出すのは、そう簡単ではない。しかも国によっても違う。
 ”人間は子どもの頃に食べたもので、食の好みがほぼ決まる。味覚や食習慣は簡単に変えられない。フムス(地中海料理)もアメリカに根付くに10~15年かかった。スシは20~30年、ラーメンも同じぐらい掛かってるのではないでしょうか”(エリー・オフェク教授)

 ”謙虚に学習する姿勢”は、日本企業の大きな強みだと言われている。しかし、単に柿の種からピーナツを減らす事が謙虚だとしたら、これほど悲しい事はない。
 日本は”基本を大切にする国”だとハーバード大では教えられる。
 しかし、伝統の”6対4”から”7対3”に鞍替えした事実は、基本を無視した様に思えてならない。
 アメリカに進出するに辺り、”6対4”から”5対5”に進化させるのであれば、多少は受け容れられたかもしれない(いや、受け容れられないかもしれない)。
 ハリウッド映画では、アメリカの一般家庭の食卓にピーナツバターの大缶があるのをよく見かける。だったら、ピーナツを増やすのも一つの手ではないだろうか。

 しかし、柿の種というコメ菓子がアメリカを席巻するのは、あり得ない現実のような気がする。事実、日本でも柿ピーは(お茶の間の駄菓子としては)下火になりつつあるのだから・・・
 たまに食うなら美味しいが、何時もは食いたくはないのが、柿の種の駄菓子としての実像なのかもしれない。



4 コメント

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tokoさん (象が転んだ)
2022-02-26 04:34:58
今では、同じ新潟県でライバル同士の関係なんでしょうか。
本家本元も柿の種が、ここまでヒットすると思ってなかったんでしょうね。
聞いた話によると亀田製菓の柿の種は中が空洞になってて、カリサク感が違うらしい。
こういう細かい所が繊細な日本人には受けるんでしょう。

色々調べてくださりありがどうです。
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柿の種と柿ピー (tokotokoto)
2022-02-25 23:19:31
私も少し調べました。

柿の種のシェアは新潟県新潟市に本社を置く亀田製菓がトップですが、柿の種の起源は同県県長岡市に本社を置く浪花屋製菓です。
しかし商標登録を行わず、製法を公開した為、多くの業者が参入した。つまり柿の種は早くから日本中に広まってた名前だと。

柿ピーも諸説があり、亀田製菓の特許でもない。
最初は8対2から始まり、その後転んだサンの好む5対5に変わり、黄金比率の6対4に長く落ち着いていました。
中国やアメリカに進出してるみたいですが、名前とブランドだけではね・・・
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エンタメさん (象が転んだ)
2022-02-25 20:05:46
いえいえ
たまたま柿ピーの記事を読んでたら、やたら食いたくなって、記事も熱くなってしまいました。
個人的には柿ピーよりも”いかピー”が好きなんですが、地域ではポリピーなんて呼び方するんですかね。
ただ亀田製菓の柿の種は色んなバージョンを出しすぎて、柿ピーの基本を見失ってるような気がするんですね。
例えばピーナツにチョコを被せるのはいいアイデアですが、(食った事ないんですが)柿の種にチョコは少し安直すぎますよね。

なんだかコメント返しも熱くなってしまいました。
悪しからずです。
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柿の種論 (平成エンタメ研究所)
2022-02-25 09:25:00
「柿の種」でこれだけ熱く論を展開できる象転さん、素晴らしいです!

ただ僕も「柿の種」は画期的な食べ物だと思っていました。
せんべいと違って、小粒だから口の中で噛んだときに弾ける。
ピーナッツがあるから時折、別の味と食感を楽しめる。
素晴らしい発明です。
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