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リーマン予想と素数の謎”2の3”(20/7/25更新)〜素数の謎と無限大の考察と逆数の和と

2019年03月12日 02時14分50秒 | リーマンの謎

 ”2の1””2の2”で述べた様に、素数が無限に存在する事は、ギリシャ時代に既に研究され、ユーグリッドの背理法(直接法)で一応の証明がなされ、”オイラー積”により、2000年ぶりに自明な証明が得られた。

素数はどれだけ沢山あるのか?

 そこでオイラーは、”素数がどれだけ沢山あるか”に注目した。勿論素数が無数に存在する事はわかったが、”この素数がどれだけ沢山あるか?”に対する答えは、これで終りではない。
 有限の数に大小がある様に、無限にも大小がある。故に、素数は自然数の中でどれ位の割合を占めるのか? 
 実は、この”素数の個数の無限大の大きさ”こそが、現代数学の主要な未解明問題であり、ゼータ関数の謎やリーマン予想という現代数学最大とも言われる未解決問題に直結してる、と小川信也氏は熱く語る(「素数からゼータへ」)。

 つまり、”素数がどれだけ沢山あるか”という素数の謎を解決する為に、ゼータ関数が開発され、リーマン予想が提唱された。そしてこれは、全人類の”最終目標”でもあるとも。でも少し大げさですかな(笑)。 


ゼロにより近い無限大とは?

 まずオイラーは、素数がどの間隔で並んでるか?という素数が出現する頻度を考えた。
 この頻度が高ければ(素数の密度が高ければ)、”大きな無限大”であり、頻度が低ければ(密度が低ければ)、”小さな無限大”であると。

 実際に、素数はどれ位沢山あるのか?素数を扱う前に、先ずは簡単な例として、2倍する操作を繰り返す事で得られる数の列(2のべき乗で表されるから、”2べき”と呼ぶ)を例に取る。
 数列1,2,4,8,16,32,64,,,,は、2⁰,2¹,2²,2³,2⁴,2⁵,2⁶,,,,と、指数の部分の数が、0,1,2,3,4,,,,と無数にあるので、”2べき”も無数にある。しかし、これらが自然数の中ではどれ位の量を占めてるのか?
 自然数は偶数と奇数に分けられ、偶数の占める割合は、50%という事は明らかです。同様に5の倍数は20%。5で割った余りは1,2,3,4のみで、それらが1/5間隔で周期的に繰り返されるので、明らかですね。

 では、”2べき”の占める割合は?
 "2べき"は等間隔ではなく、分布も周期的じゃない。10以下では4個(40%)だが、100以下では7個(7%)と激減する。100以上となるともっと激減する。故に、”2べき”の割合は、如何なる%でも表せない。強いて言えば0%と言える。
 しかし、この0%とというのは日常生活では存在しないもの、つまり有限集合では0(空集合)なのだ。
 ところが無限集合だと、どんな大きな有限部分集合も占める割合は0%となる。ここら辺は数学が現実世界とは大きくかけ離れていて、非常に取っつき難い原因となってます。

 例えば、自然数全体で1万以下の数の占める割合は0%である。これは、仮に1%とすると、自然数全体は1万個の100倍である100万個しかない事となり、明らかに矛盾する。
 故に、無限の中の0%とは存在しないのではなく、”非常に少ない”という意味です。ここまで来ると、数という摩訶不思議な世界にドップリと浸かってきましたな。”万物は数である”いや”数こそが闇である”とは言い得て妙ですね。

 以上より、2べきが無数にあるとはいえ、”非常に少ない無限大”なんです。それを何とかして、式で表現したいというのが人間の”知欲”ですが。つまり、オイラーの知欲は半端ないと。
 

素数が自然数の中で占める割合は0%?
 
 そこで素数に戻ります。
 素数が自然数全体の中で占める割合は、何%だろうか?結論から言えば、0%である。
 この証明は、素数定理(ガウス)と明示公式(リーマン)によりますが。x以下の素数の個数が、前者ではπ(x)~x/logx、後者ではπ(x)=Li(x)+O(Li(x^ρ))~Li(x)で表されます。
 但し、Li(x)=∫ₓ[2,x]dt/logt、Re(ρ)=1/2(リーマン予想)、Liは対数積分、Oは誤差項(ランダウの記号)。
 故に、π(x)~Li(x)~x/logxとなり、Li(x)=x/logx+1!x/(logx)²+2!x/(logx)³+・・・となるので、logxのべき乗の展開となり、xのべきとしては”1乗”に最も近い。
 つまり、素数の数π(x)は自然数の中では0%である。勿論、この詳しい証明は省きます。

 因みに、素数定理はガウスが僅か15歳の1792年に予想し、明示公式(素数公式)はリーマンが1859年の論文で発表した明示公式です。


素数の間隔はどれだけ大きいか?

 少し横道逸れましたが。オイラーは前述した様に、素数がどの間隔で並んでるか?つまり素数が出現する頻度を考えたんですが。
 この素数にても、隣り合うもの同士の間隔が幾らでも広くなり得る事を、”階乗”という合成数の概念を使って説明できます。 
 例えば、5!=5・4・3・2・1ですが。5!+2,5!+3,5!+4,5!+5の4つの数が素数でない事は明らかです。つまり、5!+2は2で括れ、2の倍数になり、素数ではない。以下同様に、5!+3は3の倍数に、5!+3は3の倍数に、5!+3は3の倍数に、5!+4は4の倍数に、5!+5は5の倍数になり、それぞれ素数ではないですね。

 そこで、素数ではない数を”合成数”と呼びますが。つまり5の階乗を使う事で、少なくとも4つの連続した合成数を得られます。この方法により、連続したどんな長い列も作る事が出来ますね。
 例えば、100の階乗を使えば、100個の連続した合成数が作れます。故に、隣り合う素数の間隔は幾らでも広くなり得るんです。
 これは、(前述した)”2べき”の間隔が幾らでも広くなる現象と似ており、素数の割合が0%になる事の”遠い証明”にもなってますね。

 しかし素数は、2べきよりもずっと深遠だ。
 というのも、2べきは数が大きくなる程に単調増加するが、素数は幾らでも広くなる一方で、狭い所も不規則に発生するらしい。 
 これは、3以上の素数の間隔が少なくとも2は空いてる訳で、間隔が2の素数の組(3と5、11と13、41と43など)を”双子素数”と言い、この双子素数が無限に存在する事が予想されてるが、証明はなされてないからだ。
 故に、無限に広がる事だけを見て、0%と断言する事は出来ないが、上述した様に0%が正しい事は素数定理で証明されている。


オイラーが考えた”逆数の和”の発想

 では、自然数全体に占める割合が0%である2べきと素数をどう比較するのか?その一つとしてオイラーが考えたのが、いわゆる”逆数の和”である。
 つまり、”無限の考察”には巨大な数が立ちはだかるが、逆数を取る事で、その巨大な困難さを逆利用するという奇想天外な発想です。

 例えば、2べきの逆数の和は、1+1/2+1/2²+1/2³+1/2⁴+•••=2ですね。初項1、公比1/2の無限等比級数の公式(1/(1−1/2))を使えば明らかですが。タテが1ヨコが2の長方形を半分ずつに分割すると、長方形内の全ての面積(=2)が、2べきの逆数の形になってる事からも明らかです。
 これは、前々回”2の1”で述べた、自然数の逆数の和が無限大(オーレムの定理)であるという事実と照らし合わせると、非常に興味深い。

 因みに、この自然数の2乗の逆数の和は、2という有限値に収束します(ベルヌーイにより証明)。これは、1/4²=1/4•1/4<1/3•1/4=1/3−1/4のように各項を分解すれば明らかで、1+1/2²+1/3²+1/4²+•••<1+(1−1/2)+(1/2−1/3)+(1/3−1/4)+•••=2。
 そこでオイラーは、この収束値がπ/6²である事を突き止めました(バーゼル問題=1737)。この事により、無限大の自然数の中では、平方数は”非常に少ない”事が解り、同じ様に、2べきも”非常に少ない”事も解りますね。
 つまり、1+1/2+1/3+1/4+•••=∞(オーレム)、1+1/2+1/2²+1/2³+1/2⁴+•••=2(ヤコブ)、1+1/2²+1/3²+1/4²+•••=π/6²(オイラー)の3つの式を、ずっと眺めてたんでしょうね。

 一方で、先程は直感的な表現で、”2べき”からなる数列が自然数全体の中で”非常に少ない”事を述べましたが。オイラーの神がかりなこの洞察により、逆数をとる事で、”非常に少ない”という概念を客観的に表現する1つの方法が見つかったんですね。 
 すなわち、逆数の和を考えると、自然数全体では無限大になるが、それを"2べき”に限ると有限に、同様に平方数に限っても有限になると。全体が無限大である中の有限だから、非常に小さい割合なのだ。

 つまり、無限の一部である”無限の小ささ”を、逆数の和を求める事で数学的に表現出来たんです。
 因みに、自然数の逆数の和の挙動は、Σ1/n~logx(x→∞)で表されます。故に、自然数の様々な無限部分集合に対し、逆数の和を計算する事で無限の中の大小を比較&イメージできるんですね。

 という事で次回”2の4”は、素数の謎の心臓部である”素数の和はどれだけ沢山あるのか”について、本格的にメスを入れていきます。



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
逆数をとって和となす (tomas )
2019-03-28 07:24:58
お久し振りです。

転んだサンのリーマンブログも、素数の謎になってから少しは読みやすくなりましたか。それまでは関数や公式ばっかで、顔背けてました。

でも不思議と気になるんです。なぜ素数の謎がリーマンの謎なのか。この素数の数こそがリーマンの謎なんですね。

そういう事に気付いたら、少しは取っ付きやすくなりました。

でも本当は数学に詳しい友人に少しヒントを貰ったんですが。そうでもしない限りついていけないからね。

そういう事で、これからもリーマンブログ応援してます。
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tomasさんへ (lemonwater2017)
2019-03-28 08:36:20
こちらこそお久しぶりです。

素数の謎が素数の個数の研究に進み、リーマンの謎に至る過程は凄くワクワクしますね。

まるで金脈が埋まってる洞窟に入り込んだみたいで、書いててゾクゾクっとします。

でも数学に詳しい友人がいてラッキーだったですね。周りにそういう人がいると全然違いますもんね。

これからも宜しくです。
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