昨年5月に立てたブログですが、消そうと思い、久しぶりに読んでみたら、不思議と面白く映った。単なるイチロー批判の様に見えて、引退と現役続行の間で揺れ動く、イチローの人なりを眺めてるみたいで、自分が書いた記事ながら、上手く書いてるもんだと感心、いや歓心した。
そこで、更新と追記を兼ねて、新しく投稿します。悪しからずです。
イチローがやって来る!
それも現役メジャーとしての凱旋だ。昨年の現役復帰のニュースには正直複雑な気持ちだったが。イチローらしいと言えばそれまでだろうか。
”試練はそれに相応しい人にしか与えられない”という、イチローお得意の名言に大きく励まされた人も多いだろうか。
表向きは、生涯マリナーズの一員として、昨季のチームの好スタートに貢献したご褒美とのつもりだろうが。明らかに、引退を勧める球団側と暗に決裂してると思えなくもない。しかし日本のメディアは、驚くほど好意的に伝えている。
でもこれは、明らかな延命(契約)と見るべきか。フロントとしては、大谷との対戦後に引退というシナリオを描いてた筈が。イチローは”50まで現役”を譲らなかったのか、或いはこの”奇怪な契約”を、実質上の引退と見るべきか。
安楽的引退と延命の二項定理と
ただ、今のイチローを見てると、”安楽と延命の二項定理”が、実によく当てはまる。
球団側は、イチローに強く安楽的引退を望んでるのは明らかで、メディアも引退を仄めかしていた。ファンとしても、これ以上惨めで憐れなイチローを見たくないという気持が、正直な所だ。残した成績に見合う引き様ってもんがあるとは思うが。
しかし、イチローは”延命”と”記録”に拘った。一年でも長く、一本でも多くヒットを積み重ね、自らが持つ歴史上の記録に、少しでも威厳と箔をつけようと。
だが、”過ぎたるは”という諺がある様に、これ以上、延命と記録に拘ると取り返しのつかない事が起こらないとも限らない。
数字だけが全て?
確かに、プロは結果が数字が全ての世界ではある。しかし、それらに拘ったが故に、ドーピングや不正に手を染め、長年積み重ねた記録と記憶をお釈迦にした数々の例は、誰もが知りえる所だろう。
勿論、イチローはドーピングや不正とは全くの無縁だ。典型の完全主義者のイチローだが、彼の打撃スタイルは”割り箸ヒッター”とか”内安打依存症”とか、揶揄されがちなのもまた事実ではある。
イチローが延命や記録に拘る程に、こういった関係者の”アテツケ”がキツくなる。
チーム内での孤立、メディアへの閉鎖的な対応、独りよがりの人格とコメント。これら全てが彼の”セコい”打撃スタイルと重なり合うのも偶然か。いやそうでもないか。
本来のイチローとは?
元々イチローは、活発で快活な好青年だった。オリックスの頃は、打撃も性格も自由奔放で豪快。そういう彼が私も大好きだった。こんな”スーパー好青年”が日本にもいるんだと驚いた程だ。
でも、メジャーに渡り、イチローは変わった。いや変わらざるを得なかった。メジャーでも記録に拘り過ぎるが故、メディアへの対応同様、打撃も人格も考え方も閉塞的になった。
内安打は、イチローのこの閉塞的な性癖が生み出した”負の依存症”であり、イチロー自身を支え続けた代名詞でもあるとも言えるが。この内安打と共存する事で、安打の世界記録を打ち立て、過去の偉大なメジャーリーガーと肩を並べる事が出来たのだ。
多分、前世界記録保持者のシスラーの遺族は、この内安打の数が気に食わなかったんだろうか。イチローの偉業に対し、”内安打さえなければ”といった誤解があったのも事実。
かつてイチローのファンであった私は、そういった事に全く気付かず、手放しで喜んだ。しかし天下のNHKが、彼の偉大な262本の金字塔に内安打という”オチ”をつけてくれたお陰で、私は彼の記録ではなく、イチローという人間そのものを疑う様になった。
イチローのこのメジャー4年目の生涯最高のシーズンは、内安打が露骨に目立つ程ではなく、イチロービームも華麗な走塁も健在だった。しかし、彼がこの年に生み出した59の内安打は、当時のメディアが揶揄した”走りながら打つ”というイチロー独自の打法の恩恵でもあった。それでも、走攻守に渡り高度なパフォーマンスを見せるイチローに、私も日本列島も湧いた。
数字で見る等身大のイチロー
ただ、イチローが数字に異常なまでの執着を見せるならば、ファンとしてもその数字に応えようではないか。
この59の内安打を差し引いた打率は、3割7分2厘から3割1分5厘に急降下する。当然、安打数も203本に激減。NHKが揶揄した様に、3割が内安打というのは間違いで、22.5%が正解だ。因みに、打席数もその分減らします。内安打が全てアウトという想定は、流石に不公平ですからな。
イチローはメジャーのキャリアで、10度の200本以上安打と、同じく10度の3割越えを残してる。それだけでも凄い事だが、内安打を除くとそれぞれ一度だけという虚しい結果になる。これこそがイチローの”知られざる傑作”?なのか。
ただ、メジャー1、2年目に内安打が25%(62)、35%(52)と、イチローの内安打製造機は既にフル回転していた。これを武器に彼は大きく飛躍し、メジャーを代表するスーパースターに君臨するのだが。
イチローだからといって我が儘が許される筈もないが。日本と異なりアメリカは、浪花節のお情けの文化ではない。”クビになるか、自分から去っていくか”の二者択一の厳しい世界。何だかMLB版の”奇怪な天下り”を見てるようで、スッキリしないのも事実ではある。
天才を超えたイチローの偉大さと執着
ただ、数字のみでイチローを評価するなら、ファンとしてもそれに応えようではないか。まず3000本安打はメジャー史上30人いるが、デビューから16年で達成したのはピート•ローズとイチローのみ。
それに、3000安打と500盗塁と打率3割以上を達成したのはタイ•カッブ、ポール•モリター、エディー•コリンズ、ホーナス•ワグナーに続き、イチローは史上5人目となる偉業だ。
つまり数字だけで見れば、神様ベーブ・ルースと肩を並べたとも言える。故にイチローを正しく評価する事は、不特定多数の偉大な選手たちと比べても、非常に難しいのだ。
これは、イチローが全てを犠牲にして記録に拘った故の、輝かしい栄光でもあり、奇怪な弊害でもある。イチローのこの天才を超えた規格外の偉大さと執着は、常にイチローを悩まし、孤立させ、周りとの軋轢を生み続けるのだろうか。
イチローが打つだけの選手でない事は誰もが知りうる事です。メジャーでも最高峰の資質を持つイチローが記録に拘るのは当然ですし、揶揄される覚えは全くないのです。ましてステロイドや不正に染まった訳でもないのです。
私はオリックス時代からずっとイチローのファンで、メジャーに移ってからはもっと好きになりました。ごく一部でイチローを非難する声もなくはないですが。私から見れば、単なる嫉妬にしか見えません。
アメリカでもイチローのファンは沢山いますし、チームメイトからもとても尊敬されてます。英語もぺらぺらだそうですよ。日本人で彼の事を悪く言う人の気持ちが知れません。アドバイザーとしても選手としても立派に務めを果たしてくれると思います。来年の日本でのイチローの雄姿を見るのが楽しみです。
ホントは私もイチローの側に立ったブログを立てたかったんですが。こういう嫉妬深い性格なんで、バルザックやゾラ風の逆説的な意地悪な闇深い独特の人間観察をしてしまうのです。
でも、イチローの”嫌われる美学”を参考にして、私も敢えて批判を誘う様なブログを立ててみたんですが。でも、悪くはないかと。イチロー風に言えば、”Not Bad”ですかな。
ま、様々な視点でイチローを述べるのは楽しいものですし、私が立てた揶揄的なイチロー批判は、彼も腐る程聞いてきたでしょうし、今更驚く事のものでもないかと。
そういう意味では、イチローというのはプレースタイルも人格もメディアの、いやコラムやブログのネタになり易いのかも知れないです。
これも、書いてる本人が楽しい訳で、unknownさんの純和風な正攻法のコメントもとても有り難いです。”その2”では、もっとイチローをこき下ろしますので、宜しくです(笑)。
大半のいや殆どのイチローファンも、表面上はイチローを手放しで称賛してますが。心の底では、稼ぐだけ稼いだんだから、もうエエやろってトコですかね。
私だって、松井がヤンキースに入った時、イチローに比べ待遇良すぎるなって松井に嫉妬し、イチローに同情しましたもの。でもマリナーズと癒着の様な関係になり、何だか彼が厭になったんです。勿論、松井はもっと厭だったんですがね。
万年最下位のチームの先頭打者でマンネリ化し、衰落したんですかね。全盛期の時にシアトルを捨て、有力チームのクリーンアップを打ってたら、彼の打撃スタイルも性格も含め全てが変わってた様な気もします。
いよいよGWも今日で終わりですね。
何だかあっという間でしたね。
イチローに関しては、色んな見方があって、色んな角度から議論を交わすのも楽しいですね。今、日本列島は一億総イチロー評論家状態ですね(笑)。
tokoさんコメントの様に、3番を打ったら面白かったですね。打撃スタイルも含め、全てがいい方向に変わったでしょうにね。
イチローに近い、典型のチョッパー打法のタイカップも、結構強く振ってますもの。いくら安打製造機といっても、最低限のパワーは必要ですね。特に昔は、飛ばないボールだったから、余計にです。
大谷とイチロー見たかったんですが、イチローの分も頑張ってほしいです。
もし、イチローがクリーンアップを打ってたら多分ダメになったと思います。内安打も彼にとっては極限に追い詰められた苦肉の策だったと。
特に、メジャーのチェンジアップをハードヒットするのは、日本人ではまだまだですかね。
大谷だって、チェンジアップにはタイミング狂いっ放しで、当てるのが精一杯です。つまり、強く振ったら当たる筈の球も当たらない。割り箸みたいな軽いバットでチョコンと当てるしか他に方法がないのだと思います。
揶揄されてもイチローにはそれ以外になす術がなかったのです。
それでも200本に拘ったのは、彼のプライドのなせる業では。ただ、メディアへの対応は全く頂けませんがね。
昨今のプロスポーツは放映権で成り立ってます。つまり、メディアのお陰でプロスポーツは成り立ち、選手は多額の契約金を得てます。勿論、放映権潰れやスポンサー潰れと隣り合せで、非常に危ういシステムですが。転んださんが言う様にイチローの致命傷かもしれません。
でも、イチローの場合、守備や走塁で最高のパフォーマンスを見せてますから、それだけでも充分ですが。一度でも実質の3割を打ったのは凄い事です。ヤクルトの青木なんて日本では最高打率を誇ってんですが、メジャーでは全くでした。
メジャーで通用するハードヒッターが日本から登場するのは、少し先の世代になるのかもしれません。そういう事でイチローお疲れ様です。
毎回的確なコメントとても参考に勉強になります。
ところで、チェンジアップときますか。流石にお目が高いです。
日本では先ずお目にかかれない球種。ファーストムービング系なら、日本でも投げる投手がいるので、慣れれば何とかなるかもですが。
メジャーでは、これを決め球にする投手が多いので、日本の打者がハードコンタクト出来ない状況にありますね。振り初める頃に失速する、このクセ球を何とか打てるのは、日本狭しといえども(笑)イチローくらいですか。
でも、外国人はリーチが長く、腕力があるので、あのチェンジアップでもバットの先で引っ掛けるようにスタンドインする。腕を伸ばした時の腕力に雲泥の差があるんです。
天才イチローに、この打撃が出来ないのかなと、少し残念です。paulさん言う通り、少し時間が掛かるかもですね。
でも、TVで見る限り、元気そうで良かったです。ある程度は作ってんでしょうが。大谷もイチローの前では気合入ってたし。
イチローは、不正に染まったピートローズよりも上です。日本で残した実績もメジャーはもっと評価すべきです。彼が現役に拘るのは、記録や自分の為でなく、日米の野球界の事を思っての事です。でなければ、”野球の研究者に、伝道者になりたい”とのコメントが出る筈もありませんから。
イチローは日本の世界の誇りです。ノーベル賞に値する人物だと思いますよ。
続•純和風な解答、とても参考になります。
しかし、懐疑深い私はそうは思えないのです。
普通、プロスポーツ選手は引退したら、プーです。運良くアドバイザーになったとしても、フロントとの一員としての仕事が出来る筈もない。ポツンと椅子に座ってるのが精一杯でしょう。彼らは野球しか出来ないのです。江川氏みたいに、コミニュ力と学があれば、人気の局付きキャスターにでもなれるんですが。
イチローもその例外ではなく、一度でも大金を手にしたら、その境遇に永遠に浸りたいというのが人間です。それも銀行強盗をしても、得られない様な額です。
彼がメジャー最低年棒でも、現役に拘ってきたのも、金持ちのプーになるよりかは、都合が良いのかと。引退しても、アドバイザーとして選手と同行した方が、居心地が良いのでしょう。
こういうのも、イチローならではの賢い計算で。勿論、代理人の浅薄な入れ知恵が殆どですが。でも、アメリカは典型の契約社会でありながら、平気で契約を踏み躙る国でもあります。マクドナルドのレイクロックの様に(笑)。
今年中はまだ、イチローショックに免疫があるのですが。来年になれば、誰もが彼の事を忘れるでしょう。その時、球団は掌を返すでしょう。かつて、シアトルがNYにイチローを捨てた様に。つまり、プロスポーツ選手は現役で結果を残し続けてのみ、有効な商品なのです。
そういう意味では、ルースは幸せ者だったんですね。ホームランの代名詞のまま、ベースボールの象徴のまま、死んでいったんですから。