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リーマン予想と素数の謎”2の2”〜ユークリッドの背理法と素数の初等的考察と

2019年03月11日 03時05分11秒 | リーマンの謎

 前回”2の1”では、”オイラー積”により素数が無限に存在する事が解ったんですが。素数がどれだけ沢山あるか?という疑問にぶつかる。これこそが素数の本当の謎です。
 オイラーが発見した、素数が無限にあるという事は、とてつもなく大きな発見ですが、一つの進展に過ぎない。”有限に色んな数があるのと同様に、無限にも色んな大きさがある”と、「素数からゼータへ」の著者小山信也氏は語る。 


素数の初等的考察

 素数について語る時、素数という基本的定義を知らない人は多いと思う。勿論、私もその一人です(悲)。
 素数とは初等的に言えば、自然数でちょうど”2個の正の約数を持つ”ものである。
 故に1は1個の正の約数を持たないから素数ではない。2は1と2という2個の正の約数を持つから素数。3も同様で、4は1と2と4の約数を持つから素数ではない。同様に5は素数だが、6は素数ではない。
 案外こういった、素数に対する”初等的”な考察が出来る人は少ないであろうか。初歩的と初等的とは別モンなんですね。

 素数の列、2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、、、が、一体何処まで続くのか?つまり素数がどれだけ沢山あるのか?という問題は古くからあったのだ。 


ユークリッドの背理法

 元々、素数が無限に存在する事自体は、紀元前の古代ギリシアの数学者で、天文学者でもあったユークリッド(Euclid=Eukleídēs 紀元前3世紀頃)が得ていた定理です。
 因みに、ユークリッドは”幾何学の父”ともいわれてます(イラスト右下)。

 ”ユークリッドの背理法”を使った一般的な証明では、有限個の素数があれば、それら全ての積に1を加えた数は、どの素数で割っても1余るから、それ自体が全く新しい素数になる。故に、素数が有限個である事に矛盾する。
 これを数学的に言えば、素数の個数が有限と仮定し、p₁,…,pₙが素数の全てとする。その積P=p₁ו••×pₙに1を加えた数P+1は、p₁,…,pₙのいずれでも割り切れないので、素数でなければならない。しかしこれは、p₁,…,pₙが素数の全てであるとの仮定に反する。故に、仮定が誤りであり、素数は無限に存在する。 
 因みに、ゴールドバッハ(1690-1764=イラスト左下)は1730年、オイラーに宛てた手紙の中で、フェルマー数Fₙ=2^(2ⁿ)+1を利用し、素数が無数にある事を証明した。
 また1878年に、クンマー(1810-1893=イラスト中下)は、1を加える代りに1を差し引いても、同様に証明できる事を注意した。

 ここで普通の人は、”自然数が無数にあるんだから、その構成要素である素数もまた無限にあるから当り前だろう”と。
 しかし、仮に素数が有限個だとしても、その組合せは無数に存在するから、結果として得られる自然数は無数にあるのだ。 
 勿論、上記の証明は背理法を使ってはいるが、実は背理法ではない。
 ”素数が全部でn個ある”という仮定で始め、(n+1)個目の素数の存在を示し、仮定との矛盾を導いてるから、その意味では背理法とも言える。しかし、どんな証明でも最初に結論を否定する仮定をおき、その後に直接法で普通に証明すれば、仮定が否定され矛盾が生じる。

 しかしユークリッドは、直接法で素数を求めた。つまり、3つの素数から全く新しい素数を順を追って発見した。
 故に新しい素数の存在という事であれば、この背理法は、新たな素数の”直接構成法”と呼ぶべきではないかと小山氏。


ユークリッドの素数列

 事実ユークリッドは、素数が3つある所から始めている。abc+1を割り切る素数dが存在する。すると、dはa,b,cとは異なる素数となる。
 何故なら、dはabc+1を割り切るが、a,b,cはabc+1を割り切らない。故に、延々と新しい素数が登場するので、素数は無限にあると。
 実際に、素数2から始めると、1を足して3が出るから、これを割り切る最小の数は素数3。2と3を掛けて、1を足すと素数7が出る。
 2,3,7を全て掛けて1を足すと43という素数を得る。次に、2,3,7,43を全て掛けて1を足すと1807だが、これは素数ではない。故に、これを割り切る1でない最小の数は13×139=1807より、素数13を得る。
 こうして、2,3,7,43,13と5つの素数が得られる。これを続けると、1段ごとに素因数分解(積分解)を行えば、素数が1つづつ増え、素数が無限個出る事が解る。

 同様にして、2,3,7,43,13,53,5,6221671,,,という素数列を得る。これは”ユーグリッド素数列”と呼ばれ、全ての素数が現れると予想されてるが、いまだ未解決の難問とされるが。
 これは同時に、素因数分解という積分解の始まりでもあった。
 因みに"その2=プロローグ”でも述べたが、(2から開始した時の)第44項目の計算では15年余の時間を掛け、68桁の素因数が発見された(2010)。更に第48項では、75桁の素数(256桁の素因数)が発見され(2012)、現在は第51項までが判ってる。第52項の計算には335桁の素因数を計算する事が必要とされ、莫大な時間が掛かるとされる。

 このユークリッド素数列は、最小素因数をとる代りに、最大素因数や素因数全部をとって行うなど、多くの変形版が存在する。
 例えば、2から始めれば、5などの現れない素数があるのは明らかで、現れない素数が無限に存在する事もA•R•ブーカーにより証明されている(2012)。
 つまり、ユークリッド素数列は積分解の見事さと共に、大きな困難さも含んでいる(以上、「オイラーのゼータ関数論」から一部抜粋)。


素数を作ろう

 ここで、非常に面白い現象が起きる。"素数を作ろう"というイベントで、実際に上述のユークリッドの方法で、子供達に素数を作ってもらう。
 特に、2ではなく11から始めると、11,2,23,7,10627と6番目の素数は非常に大きな数字となる。これが素数であるかを実際に親子で調べてもらった。
 すると子供達は一心不乱に計算し、一方大人達は”何か公式を使ったいい方法はないか”と不平を言う。子供の無垢な集中力と無駄な手間を省こうとする大人の知恵は、非常に顕著で対比に映る。

 実はこの2つこそが数学を発展させてきた両輪でもあり、人間の持つ2つの力だと、小山氏は考える。
 しかし、この作業では大人の知恵は通用しなかった。10627が素数である事を確かめるには、小さな素数から順に一つ一つ割っていく以外にないのだ。
 規則性をあくまで拒絶する素数の頑固な性質のお陰で、素数は暗号に応用され、また純粋数学で最高の魅力を持ち続ける未解決の問題の宝庫として君臨してるのだ。 


大きな素数ってどうやって確かめるの?

 しかしここで疑問が湧く。10627が素数である事を、2,3,5,7,11,13,,,から順にバカ正直に割る必要が本当にあるのか?何かいい方法はないのか?ここで大人の論理が生きるのです。
 実は103までの27個の素数で十分なのだ。これは、10627が素数でないと仮定する。判り易い様に10000という数字を考えると、100×100の正方形で表される。これを長辺が100を超える長方形に変形する(勿論、短辺は<100)。
 つまり、素数を幾何学的に考える、ギリシャ数学の応用ですね。
 この2つの数はどちらで割っても、10000を割り切る。よって、10000がどんな数で割り切れるかを調べる時、100より小さな数で割れる事が判った段階で、100より大きな数で割り切れる事が判る。
 故に、100より大きな数で割り切れるかは調べる必要はない。
 以上より、10000程の大きさの数が素数である事を調べるには、100程の素数で割ってみれば十分なのだ。100は10000の平方根なので、10627が素数であるか調べるには、その平方根に近い素数(103)で割って調べれば十分である。な、な、なるほど。

 計算機の時代になったからとて、人間の数学的思考の価値が消える事はあり得ない。つまり、数学的思考は永久に不滅なんですね。
 素数をギリシャ時代にまで遡り、初等的に考えるとはこういう事なんですね。こうしてみると、素数って偉大で不可思議な数字です。

 今日は少し”番外編”ぽくなりましたが、たまには息抜きも必要ですね。とにかく素数に関しては歴史も深く長く混み入ってるので、ゆっくりと進めたいと思います。



4 コメント

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こうやって素数を作るんだ (HooRoo)
2019-03-12 18:22:18
へえー、素数を掛け合わせて素数を作るんだね。もうびっくりよ。

トランプのハゲとハゲを掛け合わせると、もっと酷いハゲができるってもんね。

素数をハゲに置き換えると分かりやすいかもね。どちらも自分以外にはワリキレマセン。

ハゲって、煮ても食えないし、政治家や企業家になったら、すぐに暴走するし、素数が無限大にあるのと同じように、無限大に暴走するんでしょうね。

どう?転んだサン、素数とハゲの危険な関係で論文出してよ。ノーベル賞も夢ではないかもね。

でもトランプのイラスト、ピュリッツァー賞
ものよね、最高すぎるわ。

ではバイバイ。



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Hoo嬢へ (lemonwater2017)
2019-03-13 05:26:42
結構数学には強いんですな。感心歓心です。

いやそういったセンスが必要なんですよ数学者には。大学院で数学を専攻したら面白いんじゃないかな。

素数とハゲについては、全くの言い得て妙です。これこそピューリッツァー賞もんですな。

いつもセンス抜群のコメ有難うです。
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素数とハゲの危険な関係 (paulkuroneko )
2019-03-13 13:35:30
全く同感です。
ハゲとハゲを掛け合わせて1を足すと化け物ができる。確かに、ヒトラーとチャーチルとスターリンを掛け合わせたら、人類史最強で最悪の独裁者の誕生間違いなしです。

いよいよ素数の謎の心臓部にメスが入るんですが。この謎こそが無限級数のゼータの、そしてリーマンの謎に繋がるんですが。素数定理に進展していく過程で偶然に得られたのがリーマン予想です。

一方、素数が無限に存在することはオイラーだけでなく、ゴールドバッハやクンマーも証明したんですが、フェルマー数を用いたゴールドバッハの偉業も忘れてはならないですね。
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Re.素数とハゲの危険な関係 (lemonwater2017)
2019-03-13 19:48:53
ゴールドバッハもそうですが、クンマーも凄いですね。当り前の様ですが、一気に2つの新たな素数が得られるんですから。

こうしてみると、数学って恐ろしくアナログ的な学問かなと感心します。

素数とハゲの関係もブログ立てようかなです。
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