「無双の鉄拳」(Unstoppable、2018)でも紹介したが、マ・ドンソクの豪腕は見てて頼もしい。
今、ハリウッド一の肉体派であるドウェイン・ジョンソンよりも(ガチンコなら)強いかもしれない。いや、そう思えるほどの破壊力を、この男の拳は秘めている。
とにかく殴る!殴る!他に芸がないのかと思えるほどに殴りまくる。
「悪人伝」(2019)を見た後だっただけに、その印象が強く頭の中に残っていた。
一方で、アクション系俳優の限界も(悲しいかな)見えてくる。
”安室奈美恵”の夢を見て、その続編を期待してた後だっただけに、マ・ドンソクが登場した時は少し拍子抜けした。”清原”の後だったら丁度よかったのに・・・
しかし、夢に出てきた彼はやはり強く、思った以上に大きかった。
実は、彼が夢に出てきたのは”その82”以来、2度目なんですよね。その時も、とても怖かったんですが・・・
夢の舞台は、アメリカ西海岸のとある映画スタジオである。
私とマ・ドンソクは”やられ役”の典型の2流スタントであった。
私と彼は交互に殴られる役柄で、ほぼ使い捨ての仕事で代りはナンボでもきく。が故に、殆どがアジア系で占められていた。事実、私は日本人で彼は韓国人である。
想定外の衝撃
ある撮影で、私と彼は殴り合う事になった。
私は彼を”唯のデブだ”とナメきっていた。勿論、打ち合わせなんてある筈もない。お互い(一応は)プロのスタントなので、本気で殴り合っても怪我しない自信はあった。
準備運動すらないまま、スタッフがGOの合図をする。
マ・ドンソクがいきなり殴りかかってきた。私は両手で彼の豪腕をブロックする。超重量級の拳だったが、思った以上にキレがある。
”死の拳”を何とか逃れた私は身体をやや右にスエイしながら、その反動で右のロングフックを見舞った。
男のテンプルを掠めたと思いきや、その瞬間右の回し蹴りが逆に、私のテンプルを襲う。
”まさか回し蹴りで来るとは?”
まるで、ダンプカーにでもぶつかったような衝撃である。
想定外の攻撃に防戦一方になり、私は何も出来ないまま、撮影のカットを終えた。
お陰で彼は評価を上げ、悪役だが準主役という絶好のポジションを得る。一方で私は、殴られ役という2流スタントに再び舞い戻りである。
目の前の大男は(勿論、夢の中ではあるが)、スタジオでも縦横無尽に躍動していた。その破壊力は映画で見る、まさにそれだった。
完全に立場は逆転し、彼の評判はスタジオ内外でも急速に広がっていく。一方で私は、スタントとしての仕事をも失いかけていく。
ラウンド1
マ・ドンソクは主役をかけて、あるスクリーンテストを行う所にまでのし上がっていた。
相手はブルース・リーに似た華奢で細身の男だ。台湾系?らしく日本人に似ていて、私は彼に興味を覚えた。
”これはテストなんかじゃない。ガチのセメントだ。負けた方が主役の座から転落する。本気で仕留めるつもりじゃないと、大怪我をするし、それまでのキャリアもパーになる”
華奢な男はポツリと漏らす。
”大丈夫、こう見えてもタフに出来てるんだ。大男とは何度も喧嘩した事があるし、対策は十分に練ってるから・・・でも色々と気を遣ってくれてありがとう”
私は少し不安になった。
”奴の強さは本物だ。そこら辺の大男とは訳が違う。パンチもキックも超一流だ。まずはローキックで奴の膝をしつこく痛めて、それから・・・”
と付け加えようとしたその時、男は真顔になった。
”いろんな凄い噂は聞いてるけど、本当らしいね。とにかくタフな闘いになりそうだけど、それだけのトレーニングはしてきたから、負けた時は負けた時さ”
私はホッとした。
”それだけの覚悟が出来てるのなら大丈夫。君ならやれる”
小柄な男は俯きながら、スクリーンテストに挑んだ。一方で、マ・ドンソクは自信たっぷりに小男を睨みつける。
”カット”という合図でテスト(試合)が始まった。
小男は、大男の周囲を軽いフットワークで旋回し、上体を優雅にダッキングさせながら、ローキックをコツコツと当てる。
大男はなかなか距離が取れない。すると、いきなり小男が大男の膝下にタックルし、足を取ろうとした。がその瞬間、大男は小男の首根っこを掴まえ、満身の力を込めて道具部屋を遮る壁に突き飛ばす。
鈍い衝撃音と共に、小男は崩れ落ちる様に床にへばりついた。
”勝負ありだな、パワーが違いすぎる”
私は観念した。
ラウンド2
小男は何事もなかったかように立ち上がり、襟を直す振りをして大男をニヤリと睨みつける。
”投げ技もできるんだね。ウドの大木だと勘違いしてた”
大男は少し血相を変え、強引に回し蹴りを見舞う。そのタイミングを見計らってたのか、大男の(一瞬だが)伸び切った軸足の膝にスライディングを見舞う。満身の力を込めたローキックが大男の膝にのめり込んだ。
完璧なタイミングである。
大男の表情が微妙に歪む。
小男は体勢を立て直し、ハイアングルのサイドキックを大男のテンプルに見舞うと、その巨体が僅かだが仰け反った。
その瞬間、大男の膝下にタックルし、(デスロールのワニみたいに)身体を素早く反転させ、片方の膝をグイッと捻じりあげる。
流石のコリアンモンスターも苦痛で表情が歪み、堪らず尻もちを付く。
小男は更に、捻じりあげた膝を逆に折り曲げ、膝十字で締め付けた。大男は小男の首元に腕を回し、力任せに壁にぶつけようとする。
その時、小男の首元に絡んだ太い腕に脚を絡ませ、大男の伸び切った腕を逆十字で締め上げた。見事なまでの流れる様な連続技である。
スタジオ内は思わずざわついた。
大男は(痛めた)膝の踏ん張りが効かず、締め上げられた太い腕で強引に小男を持ち上げようとする。が、中途な体勢で崩れ落ちる。
丸太みたいな腕は自らの重い体重と小男の体重が重なり合い、完全に逆に伸び切ってしまった。
まるで、芸術を見てるみたいだ。
格闘技という名のバレエ(舞い)である。
”柔よく剛を制すとはこの事か?”
”カット”
万事休すである。
小男は主役の座を大男から奪い取ったのだ。本来なら私がやるべき事を、私よりずっと小さい男が成し遂げたのである。
マ・ドンソクをデカいだけのデブ男と見くびった私は、目の前に横たわる大男にいいようにやられてしまった。そして、その大男も何も出来ずに、小男にやられてしまう。
小男は汗1つ掻いてはいない。
まるで、全てが想定内という軽やかな表情をしている。
私には、目の前の光景が夢のように感じられた。
そしてその時、夢から覚めた。
最後に
「悪人伝」では、マ・ドンソクが敢えて刑務所に入り、自分を殺そうとした連続殺人犯(キム・ソンギュ)に復讐するという幕切れだが、まるで二人の対決を見てるようだった。
映画では二人が対決するシーンはなく、マ・ドンソクが男を睨みつける所で幕を閉じる。
実は、ここまで正確に夢を覚えてた筈もない。ハッキリと覚えてるのは、私がマ・ドンソクに殴られ防戦一方になったのと、小男が大男に突き飛ばされたのと、最後に大男が小男にKOされるシーンの3つである。
しかし、後で夢の記憶を紐解くと、色んな事が朧げに浮かんでくる。そして不思議な事に、全てが上手く繋がっていく。
多分、「悪人伝」の強烈なイメージがそのまま夢の中でセッティングされたのだろうか。
確かに夢の中での私は、映画の中のマ・ドンソクの相棒(キム・ムヨル)と瓜二つであり、彼もまた殴られてばかりだ。一方で、イケメンで細身の殺人犯は、夢の中の小男程には華奢じゃないが、映画の中では彼にめった刺しにあい、殺されかける。事実、夢の中でも小男にいいようにあしらわれた。
私が夢を自由なシナリオに転換出来るのは、脳が(眠ってる内に)あらゆる蓄積された記憶の断片をランダムに整理し、物語を作ってくれてるからだろうか。
ランダムとても、60年近くの経験と記憶が錯綜した情報の蓄積である。当然、ある種の固有のパターン(傾向)が現れる筈だが、その”偏り”に基づいて、シナリオが無意識に作られるとしたら。
因みに、勘のいい人は”モンテカルロ法”を思い浮かべただろう。これは、ランダムなデータの平均から近未来を予測する数理モデルの一種だ。但し、データが膨大になる程に的中率は高くなる
つまり夢とは、無意識に存在するシナリオライターなのであろうか。
人の記憶は非常に曖昧である。それが悲惨で苦い記憶であるほど、相手には伝わりにくい。最悪、”アンタだけじゃないんだよ、苦しいのは”って、逆ギレを誘う。
しかし夢の中の記憶は、現実程には感情的でも複雑でもない。故に、思考の中でキレイに蘇り、不思議と相手の共感を得る。
どんな些細な夢もつまらない夢も、スムーズに誤解なく伝わるから、夢の中の出来事は相手にストレスを与えない。
95%の人は論理ではなく(主観や経験で物事を捉え)感情で動く。故に、僅か5%の冷静な論理は感情にかき消され、理解されないまま切り捨てられる。
夢に罪がないのは、(脳の中だけで)記憶というデータと論理で練り上げられたシンプルな物語だからなのだろうか。
前回登場した時はマドンソクが上司として現れ、転んださんに脅しをかけた。
それで大男にスコップを振り落とそうとした時に夢が覚めた。
今回はそのリターンマッチという事で、そこでも防戦一方でした。
しかしここで終わらないのが夢。
華奢な優男が転んださんに代わり復讐してくれた。
やはり正義は存在する。夢の中にも現実にも存在する。シナリオライターを脳内に持つ人は羨ましいね。
今度は転んださんのその拳で韓国のデブ男をフルボコにしましょう。そういう事で続々編を期待です。
寄せられたコメにある様に、続編としてみると興味深い。
私も指摘された後で知ったんですが、前回もやられてんですよね。それでリベンジと思いきや今度もやられる。
力道山というより、憎きコリアン豚野郎ですね。
感謝で一杯です。
一応は、マ・ドンソクのファンなんで、夢に出た時は少し興奮して、以前の事をてっきり忘れてました。
あの時もかなり絞られたんですよ。内心悔しくて、ロベスピエールの話まで持ち出して・・・
でも私の脳内シナリオライターはよく出来てんですよね。しっかりとレベンジを果たしてくれました。
今度は私自身の拳でリベンジを果たすべきですが、今から続々編が見たくなってきました。
マ・ドンソク💕
憎きコリアン豚野郎なんですか? 愛するが故のお言葉でしょうか?
今や"マブリー"の愛称もあり、カワイイお人ですよね。
「悪人伝」観ましたが(テレビで)記憶にあるのは、マ・ドンソクが、ジムでサンドバッグを打ちまくっていたら中から血だらけのヤクザが出てきたシーンです。ビックリした、でした。
どうぞ恐い映画より「新感染ファイナル・エクスプレス」「グッバイ・ シングル」「神と共に」「白頭山大噴火」などの人間味あふれるマブリーで夢を見てください~♪
(マブリーを愛するシニア女子より)失礼しました。
マドンソクの映画は好きでよく見るんですが。特にファイナルエクスプレスは良かったです。
でも、夢に2度出てきた彼はとても怖かったです。事実、ああいう側面もあるんじゃないかな?と思いました。
マブリーって呼ばれてんですね(笑) 。知らんかったです。女性にも人気があるんですね。
ミュージカルにも挑戦した事があるというので、そういった新たな分野も開拓して欲しいです。
マブリーに下手な復讐を誓うマブリーファンより・・・