二度目のワクチン接種完了(更新)〜コロナ医療末端現場の苦悩と誤算

　前回よりもずっとスムーズだった。
　病院が違ったからか､柳川市のワクチン接種も一段落ついたのだろうか､接種受付には誰もいなかった。前回の病院よりも大きい筈だが､一般患者も含め､人混みはずっと少なかった。

　予定時間よりも30分ほど早く着いたせいか､待ち時間ゼロでモタ付きもゼロ。
　危機対策もそうだが､何でも早く取り掛かればスムーズに事が進む。
　事実､私が接種し終わった後､ゾロゾロと(3時からの)予約の人達が入ってきて､大部屋の接種会場の3/4ほどがすぐに埋まった。

副反応も全くなし

　前回は右肩だったので､今回は左肩に打った。注射時の痛みは前回よりも明らかに少なかった。それに前回とは大きく異なり､晴天だ。これだけでも不安は吹っ飛ぶ。
　ただ､今回は大規模集団接種に近く､看護師とスタッフが移動しながら､一定間隔で並べられた椅子に座って待機してる人に順番に接種していく。

　ただ､2回目の方が副反応が明らかに強いという事で心配はしてたが､痛みも殆どない。勿論､熱やだるさは全くない。
　これほど何ともなければ､副反応の噂は全くのデマだったのかと疑いたくもなる。いや､それとも私が単に鈍いだけか・・・副反応の大半はブラセボ(思い込み)というのも､強ち外れてはいない様にも思う。
　大半の人は､(垂直に2.5cmほどズブっと突き刺す)筋肉注射が初めて(多分)なので､それによる筋肉の痛みに慣れずに､だるさや発熱を経験するのだろうか。
　ワクチンによる純粋な副反応の頻度はかなり稀だと(個人的には)思う。特に女性は肩の筋肉量が少ないから､垂直に突き刺されると骨近くにまで達し､大きな違和感と痛みを感じ､パニックに陷るのかもしれない。

　mRNAワクチン(ファイザー)は､体内の細胞にウイルスの外来たんぱく質を作らないと免疫反応が始まらない。故に､たんぱく質を作る筋肉細胞が沢山ある筋肉に注射した方が効果が高いとされる。
　私の場合､年齢の割りには運動を全くしない。しかし､筋肉量は多い方なので､特に2回目は殆ど痛みを感じなかった。

ワクチンの希釈と再充填

　私達は何も知らずに､ワクチンは敵だとか生物兵器だとか､人口削減の最終兵器だとか､色んな陰謀論に振り回される。まるでワクチンを打たない方がカッコいいと､接種反対をアピールした方がリベラルだと､大きく勘違いしてる節があるのも事実。
　そういう私も変異株が猛威を振るう前は､ワクチン接種を様子見するつもりだった。余りにも､ワクチン副反応による危篤死？のケースが､メディアやサイトによって大大的に報じられてたからだ。
　しかし､急速に変異株が猛威を振う等身大の危機を直視すれば､早く動いた奴が勝ちである。何でもそうだが､危機対策は早く動くほどに混乱や動揺は少ない。
　事実､東京都渋谷では予約なし接種を急ぐ若者が行列をなして殺到し､お陰で会場側が整理券を配布し､ドタキャンする異例の事態となった。

　コラムやブログでも､ワクチン否定派の記事は未だに人気が根強い。
　ただ､ワクチンの希釈と再充填の動画を見たら､考え方が180度変わった。
　ワクチン接種現場の最前線で働く人の苦悩と誤解を思い知らされたからである。

　私が看護師の免許を持ってて､ワクチン接種の下準備であるワクチンの希釈と再充填の作業を任されたら､即座に言い訳を考え､逃げ去るだろう。
　タイヤの検査は出来るが(笑)､ワクチンの検査なんてとても出来ないし､そもそもそんなスキルも経験も自信も精神的タフさも､持ち合わせてはいない。
　因みに､国内に送られてくるワクチンは冷凍保存された”原液”で､とても小さいワクチン用のバイアル(ガラス製の容器)に入っている。
　ワクチンの希釈と再充填ですが､これが結構大変な作業である。以下の手順は､解凍が必要なファイザー製mRNAワクチンのケースです。

①まず､生理食塩液のプラスチックアンプルとワクチンバイアルをアルコール綿で清拭し､
希釈用シリンジ(注射器)に1.8mLの生理食塩液をアンプルから､気泡が入らない様に注意深く正確に吸引し､(解凍した)ワクチンバイアル内に注入する。
②次に､ワクチンバイアルから針を抜く前に､空になった希釈用シリンジ(注射器)に空気を1.8mL吸引する。この時､無菌操作を徹底する為に1つの生理食塩液のプラスチックアンプルで､2つ以上のワクチンバイアルを希釈せず､余った生理食塩液は廃棄する。
③生理食塩水を注入したバイアルを上下にゆっくりと10回反転させる。この時､バイアルは激しく振ってはならない。これは薄い油膜で覆われた､らせん状のmRNAが壊れない様にする為だとか。
④希釈した日時をワクチン希釈液バイアルのラベルに記録し､室温で保管する。この時､再冷凍せずに6時間以内に接種する。
⑤接種用の注射針及びシリンジを準備し､④の希釈したバイアルから接種量0.3mLの溶液を接種用のシリンジに吸い上げる。
　但し､バイアルには6回接種分の接種液が入ってるが､容量に余剰がない為､注射針を刺した状態で余分な接種液を戻す､空気を抜くなどの操作を行う。
⑥ 接種液を充填したシリンジを医療用バット等の上に置く。
　

ワクチン接種の現場の苦悩と誤算

　以上の氣の遠くなる様な一連の作業を､コロナ医療最前線の看護師は独りで行うのだ。
　ワクチン接種の現場では､希釈を忘れて原液をそのまま接種したり､希釈用の生理食塩水を接種するなどのミスがなくならない。勿論､絶対にあってはいけない人為的単純なミスだが､起こり得る事は想像に難くない。

　事実､高齢者施設の職員に新型コロナワクチン接種を行った際､誤って薄めずに原液のまま6人に接種したという事例が報告された。
　1人で接種の準備に当たってた看護師が希釈するのを忘れ､医師が原液のまま6人に､それぞれ0.3mLを注射した。
　施設職員30人がワクチンを接種する予定だったが､6人が接種した時点で用意した原液の瓶6本が全てなくなり､ミスに気付いたという。看護師は”うっかり､薄めるのを忘れてしまった”と話している。
　しかし､うっかりミスでワクチン原液を連続6回誤注射する事は有り得ないとされる。つまり､ファイザー製ワクチンは希釈する必要がある事を､単に知らされてなかったと思う。
　これは看護師だけの問題ではなく､管理をしている医師にも大きな責任がある。

　末端で従事する人や現場を責めるのは､簡単だ。しかし､現場の苦悩や誤算を理解する事は､現場を知らない(または経験しない)限り不可能に近い。
　勉強が出来なくても現場の苦悩は理解出来るというのは､全くの嘘だ。嫌な勉強も､目を背けたくなる程の苦悩や誤解の理解も､大切な学習能力の1つである。

　我々は学習能力を駆使し､仕事を覚える。
　難しくミスの多い危険な仕事ほど､高い学習能力を求められる。勿論､今の日本政府に欠損してる危機管理能力も､その学習能力の欠陥から生じたものだ。
　”現場がかわいそう〜”とはバカでも言える。要は､苦悩する最前線の現場を窮地から救う為に､如何に効率のいい(致命的ミスのない)システムを構築するかに掛かってると思う。
　これを無視すれば､誰も危険でかつ困難な現場で働く者は､誰一人いなくなる。美少女アイドルを宣伝媒体に使い､歯の浮く様な綺麗事を言っても誰もついてこない。
　誰だってタダで､責任が重くキツい仕事はしたくはない筈だ。
　

最後に〜ミスをなくす為に

　精神力と根性で頑張れとか､1億総活躍時代とか､そんなアホ臭な理論では救える命も苦悩する現場も救えないし､現場もまず戦えない。
　幾ら､医者が偉そうな事を言っても､現場に伝わらなければ､何もしないのと同じである。
　”ファイザー製ワクチンは希釈する必要がある”と何度も何度も確認し､徹底しなかった医者は､今頃は”子供でも冒さない様な単純なミス”と､全てを看護師の責任に押し付けてるに違いない。
　ワイドショーなんかでは､専門家や医師会の理事が”絶対にあってはならないミスだ”とか偉そうに語るが､あってはならないのがミスの本質であり､”あってはならないミス”と口にする事こそが最悪のミスなのだろう。

　人類は､”あってはならないミス”を侵すから成長するし､それを学習し､進化する。
　勿論､殺人などの取り返しのつかないミスもある。しかし､反省は出来る。その反省から少なくとも何かを学ぶ事は出来る筈だ。
　つまり､学ぶ事を忘れた時､識者も凡人も狂気と化す。そう思うのは私だけだろうか？