最近は晩酌の日本酒で深酔いするせいか、夢をあまり見なくなった。と思ってたら、短編に出来そうな夢を3つ立て続けに見た。
そこで、今日はこの3つの夢を順に紹介する。
レイ・ジョンソンと”おなら”
「ボクシング偉人伝」という番組で、80年代の”黄金のミドル”を支えたボクサーの1人であるシュガー・レイ・レナード氏が紹介されていた。
好きなボクサーの1人だから、思わず見入ってしまう。
レナードと言えば、互いに死力を尽くし激闘を交わしたハーンズ戦が有名だが、本人は意外にもケロッとしていた。
”実は子供の頃、オナラに悩まされ、登校拒否に陥る程の鬱になったんだ。医者や神父さんにも相談し、色んな方法を試したけど、何やっても上手く行かない。
そこで、オナラの事は忘れて何か他の一点に集中する様にした。そしたらオナラが治っちまった。それ以来、パニックに陥りそうになるとオナラの件を思い出すようにしている。
ハーンズ戦の時もそうだったな。序盤でオナラが出そうになり、試合に集中できなくて劣勢に追いやられたが、他の一点に集中し、徐々に自分を取り戻せた。試合自体は周りが思う程にタフでもなかったさ。オナラの方がずっと厄介だったよ”
レナードは笑いながら続けた。
”皆、過去の試合を色々と複雑で血生臭いシリアスなストーリーに仕立て上げるけど、ボクシングって意外にも単純でね・・・殴り合ってる内に色んな事を考えたり、思い出したりするんだ。
本名はレイ・ジョンソンだけど、プロモーターが平凡すぎるって、レイ・レナードに勝手に変えちゃったのさ”
ここで私は、少し変に思った。
確か、レイ・レナードの”レイ”は両親が息子をミュージシャンにしようと、レイ・チャールズに因んで付けたものと思ってたからだ。
そうこう思う内に夢から覚めた。
事実を確認する為にウィキをググると、本名はレイ・チャールズ・レナードとある。
つまり、シュガー(華麗)という芸名を、レナード自身が尊敬するシュガー・レイ・ロビンソンからとり、リング上では”シュガー”レイを名乗った。
史実では、レイ・チャールズのファンだった母親が、彼の名前(レイ)をそのまま息子の名前にしたらしい。
ナポレオンの迂回
次に見た夢では、かのナポレオンが登場した。
ナポレオンと言えば(一般には)、ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン1世)を指すが、イタリアやオーストリアを征服し、1804年にフランス皇帝(第一帝政)に君臨するも、ロシア遠征に敗れて失速し、1814年にエルバ島に流された。翌年再起したものの、ワーテルローの戦に敗れ(百日天下)、セントヘレナ島に流されて没する(享年51歳)。
夢の中では、歴史の講義の中で、ナポレオンがエルバ島からなぜ再起できたか?を学者らしき人物が説明していた。
その人が言うには、(イタリア半島西岸にある)エルバ島から脱出する際に、直接フランスのパリに向かうではなく、イタリア半島を反時計回りにグルッと迂回し、政府軍の裏を付いたと説明していた。
私はアレ?って感じた。
確か、ナポレオンはパリへ一気に攻め込んだのではなかったか?
私は敢えて異論をぶつけた。
”迂回する必要はあったんでしょうか?ナポレオンなき後のフランスは全くの混乱状態で、落ちぶれた亡命貴族がパリをを支配してるだけで、ブルジョアや労働者や農民らはナポレオン復活を願ってました。そのまま一気に攻め込んでも、彼らが援軍になり、ナポレオン軍は勝利してた筈です”
学者らしき人は、”事実だからしょうがないじゃないか。どんな屁理屈を述べようが、君は間違っている”とだけ言い残し、教室を去る。
周りの学生から白い目で見られ、逃げ場をなくした私だったが、運良く夢から覚めた。
実際には、エルバ島から脱出する時には、僅か千名足らずの兵士を引き連れ、王党派の襲撃を警戒して迂回路をとるも、20日足らずでパリに戻り、一時は自殺まで図ったナポレオンだったが奇跡的に復位した。
つまり、夢の中では学者らしき人は正しい事を言ってたのである。
ボクサーと古女房
3つ目の夢では、中南米から来た新しい王者と復活を狙う長谷川穂積との試合が行われていた。
長谷川はすでに引退したんじゃないのか?と首を傾げながら、私はリングサイドで試合を眺めていた。
典型のファイタータイプの長谷川だが、これまた典型のボクサータイプの王者を最後まで追い詰める事が出来ず、僅差の判定で呆気なく敗れてしまう。
しかし、試合自体はとても充実していた。距離を詰め、強引にプレスを掛け続ける長谷川に対し、メキシコ出身の王者はガードを固くし、時折見事なまでのカウンターを的確にヒットさせる。長谷川もガードの上から自慢のハードブローを浴びせ続けるが、王者は精密機械が如く、精確にかわしていた。
内容的には殆ど互角だが、ボクシングの質で言えば、王者が圧倒していた。シュガー・レイ・ロビンソン程には”華麗”でもなかったが、芸術的でもあった。
フックやアッパーに依存しない左右のストレートだけのシンプルな攻撃だが、私は我を忘れて見入っていた。
”ボクシングは単なる殴り合いじゃなく、その本質は防御を含めた完成度の高さにある”と再認識させるものだった。
私は何とか初防衛を果たした王者の控室へと向かう。”本気でやればKO出来たのか?”を聞きたかったからだ。
敗れた長谷川もわざわざ控室を訪れ、王者を讃えている。多分、本人も完敗を認めたのであろう。僅差で負けたにしては颯爽としていた。
その後、プレスルームに姿を表した王者は”長く王者でいたいから、リスクを犯す事はしなかった。ハセガワはとてもタフな選手で経験も豊富だから、無理をする必要はなかった。私は勝つ為に日本に来た。そしてこれからも、勝つ為に戦う。だたそれだけだ”と静かに呟く。
一方、長谷川も機嫌がよく、試合後の翌日というのに、私を自宅に招いて夕食をご馳走してくれた。美人で有名な奥さんも一緒だったが、流石に老いていた。
どんな美人も歳には勝てない。TV用の派手なメイクが劣化を加速させたのであろうか、王者の古女房にしては哀れに思えた。
色々とボクシングの話や息子たちの話をしてくれて充実した時間だったが、数日後、彼の豪邸に強盗が侵入した。
話によると、バールを持った大男が強引に鍵をこじ開け、女房の部屋に侵入し、宝石やアクセサリーなどの貴重品を盗もうとしたらしい。
しかし、偶々長谷川邸へ遊びに来ていた王者が犯人をKOして、事なきを得たという。
警察の調べによると、犯人は刃物を持っていて止めに入った王者に振り回したが、王者は華麗なステップで大男の襲撃を難なくかわし、左ジャブの一発だけで仕留めたという。
強盗犯の右目は完全に塞がり、その後は”殆ど暴れる事もなく逮捕された”と、長谷川さんから聞かされた。
”貴方が言ってた様に、ボクシングの本質は攻守の精度の高さにある事を教えてもらいました。そんな彼と戦えた事は光栄でした”
私は照れくさいやら、何かを言おうとしたら、夢から覚めた。
最後に
モーパッサンほどではないが、よく出来た夢物語だと思う。
これは憶測に過ぎないが、モーパッサンもよく夢を見たのではないかと思う。彼の短編小説を見てると、見た夢をそのまま書いてる気がするのだ。
モーパッサンの特徴として、厭世的な傾向が強く、人間の愚かさや惨めさを描いた短編が目立つ。
バルザックが台頭するブルジョアと落ちぶれ貴族の対比をユーモラスに描き、ゾラは雄々しい庶民の像を悲劇的にかつシリアスに描いたのとは、とても対照的でもある。
そのモーパッサンだがパリ大学法学部へ進むも、普仏戦争の遊撃隊として召集され、敗走し、生涯戦争を憎んだ。
その後パリに上京し、小説家の道を歩んだ。30になる頃には「死亡の塊」と「女の一生」で文豪としての地位を確立。その後は順風満帆な暮らしが続いたが、30後半になると持病の目が悪化し、不眠症を患い奇行が目立つようになる。更には麻酔薬を乱用し、自殺未遂と発狂を繰り返し、精神病院の中でその生涯を閉じた(今日42歳)。
よほど戦争が憎かったのだろうか。女性との交流は派手だったらしいが、生涯結婚する事はなかった。
彼には夢多き作家のイメージが強いが、私が夢を記事にしたがるのは、私もモーパッサン同様に厭世的な傾向が強く、人間の愚かさや惨めさに人類の本質が隠されてるように思えるからだ。
今日紹介した3編の夢も奇妙な物語ではあるが、私の隠された欲望を満たすに十分な物語でもある。
確かに世の中は嫌な事ばかりだ。その諸々を頭の中で整理し、夢の中で物語に置き換え、自分を慰める。
そういう意味では、夢を見る事も生存本能の一つなのかもしれない。
嫌な夢も結構見るんですよ。
でもあんまり覚えてないというか・・思い出したくないというか
ただ言えるのは
寝る事は人間が持ち得る最大の特権ですから、出来るだけいい事を考えるようにしてます。すると意外にも思ってる事が夢に出てきたりもするんですよね。
ビコさんも色んな所旅行して気分転換になってると思います。
ほんとに鬱になってたら、旅行なんて出来ませんから。
でもイヤーな奴って誰にでも1人や2人いるんですよね。本当に嫌な奴が。
そういう奴って夢の中でも嫌な奴なんですよ。
もうこればかりは、脳内を整理して記憶から抹殺するしかない。
という事で慰めにもなってませんが、コメントいつもありがとうです。