象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

どうやって牛は解体されるの?(更新)〜屠殺の現場を知らない人へ

2020年03月16日 22時00分00秒 | 健康

 「幻のカツランチ」を読んで頂いた方、有難うです。食の贅沢や娯楽化は、確実に人類を腐敗させますね。
 そこで、今日はその食の基盤を支える、家畜の屠殺と解体のお話です。概観は、「植物ミート」でも述べましたが、少し突っ込んで詳しく紹介です。因みに、「食物ミート、その2」も宜しくです。(注)下線付きはクリックすると、その記事に飛びます。

 多分、業界以外の人で、屠殺の全ての工程を見た人はどれ位いるのだろうか?多分そう多くはない筈だ。今では”見学ツアー”というのもあるらしいが、目に出来るのは、解体し洗浄した後の”クリーンゾーン”だけの様だ。
 私が幼い頃は、二度ほど屠殺場に行った事があるので、その記憶を元に”牛の解体”の現場を再現してみます。今とは随分異なるかもですが、悪しからずです。
 先ずは、イラストを見ながら説明します。イラストと記事は、「加古川食肉センターを見学して来ました」を一部参考にしてます。


解体の始まり

 最初は、①の”ノッキング”。これが一番残酷なシーンです。デカいハンマーを持ったベテランの職人が、ハンマーを隠し持ち、スルスルっと牛に近づき、殴打一閃、まさに電光石火の早技。これで失敗すると、牛は喚き散らし、大暴れします。
 故に、経験とカンのみが命綱ですね。牛に痛みを感じさせない為にもとても大切な作業ですね。
 しかし今では、エアガンや電気や麻酔で気絶させるそうで、嫌がる牛の追い込みも電動化&自動化されてるらしく、見学ツアーでも、肝心の屠殺する所は見せないそうです。

 正確無比に眉間を殴打された牛は、気絶してガクンと前足が折れます。そして、間髪入れずに、喉元を切り、出血死させ、前足の踝部とツノを電動ノコで切断します。これが、”放血”です。
 ここら辺も一瞬の早業です。知らない人が見たら、信じられない光景ですね。

 ああ、それに言い忘れましたが。昔はこの時点で、牛の生首をストンと切り落とすんですね。映画「グレートハンティング」(1975)に出てくる様な、大きなギロチンを使い、ストンと切り落としたような記憶が・・・。そして、生首は処分場へ直行でしたね。
 因みに、ここで肛門を抜き、内蔵を分断させ、臓器を取出し易い様にしておきます。ここにて、やっと死ぬそうです。出血だけでは死なないんですね。

 その後、③”懸吊&剥皮”と、これも早業です。この皮を履いだ時の匂いが、エグ過ぎて&キツ過ぎて、お陰で今も牛肉が食えなくなりました(悲)。
 今の見学ツアーでは、屠殺場の中へは直接入れず、ガラス越しで見るので、匂いは殆どしないそうで。でも、これじゃ見学とは言えませんね。屠殺の残忍さの大半は匂いで、まるで生臭い怨霊に満ちた匂いに近かったです。
 一応、ここまでが、ダーティーゾーンで、このゾーンは今では見学出来ませんとの事です。


グリーンゾーンへ

 さてと、クリーンゾーンに入ります。
 まずは、⑤洗浄を経て、⑥頭部切除へ。これも少し残酷です。頭部は切開され、脊椎を吸引し、BSE検査に回されます。
 前述した様に、私が子供の頃は多分この検査工程はなかった様で、ノッキングの後、そのまま処分場へ直行だったかな。
 でも、死に絶えた筈の生首だけの牛に睨まれた時は、流石に膝が震え、ホント怖かった。

 頭部切除された牛は、腹を裂かれ、⑦の内蔵摘出です。この内蔵摘出には、白モノ(胃や腸)と赤モノ(心臓やレバーや肺など)とに分けられ、これまた検査され、内蔵処理に回されます。
 肛門を抜かれてるので、一気に内蔵が飛び出してくる感じですね。この時の匂いも強烈です。因みに、この内蔵検査工程も昔はなかった様で、昔は頭も内臓も食わなかったので、殆どが飼料とかに回されてたみたいです。
 この工程も残酷で、臭くて油ベットリで、一番タフな作業でもあります。当番の人ご苦労さんです。
 最後に、⑧の”背割り”をして、魚でいう二枚に下ろすヤツです。後は、肉(枝肉)の検査と計量をして、冷凍庫に送られます。

 因みに、成牛全体重の60%が枝肉(頭部、内蔵&肢端を除いた部位)で、その内の55%が精肉と。つまり、700キロの和牛から、33%の約230キロの精肉が取れます。
 因みに、豚は全体重の50%程が精肉となり、90キロの豚からは44キロだから、牛は精肉含有率が低いです。鶏も一羽当り辺り2.6キロから、1.2キロの肉が取れますから、45%弱ですかね。
 ま、この”食肉の効率”に関しては、後にブログ立てようかと。

 
生きる為に牛を殺すのか?それとも

 時間的には、2時間掛かるくらいかな。ずっと昔の事なので、もう忘れましたが。
 因みに、今はクリーンゾーンとダーティーゾーンに分かれてますが。昔は、グルッと一周回るようにレイアウトされてたから、家で飼ってた牛が屠殺され、冷凍庫に入るまで、全てを眺める事ができました。
 つまり、全てがダーティーゾーンで、見学し放題でもあったんですがね。どっちがいいのやらですが・・・

 しかし驚いた事に、昔(50年ほど前)と殆ど変わってないんですね。未だに、人力を頼って、手作業で一頭一頭、家畜を屠殺&解体していくんです。
 生きていく為、生活の為とはいえ、やはり残酷ですね。でも、それを上回る淡々とした、流れる様な作業にも感心させられます。日常とは残酷さ以上に軽薄なんです。 
 そういう私は、屠殺の一番残酷なシーンを幼稚園の時に、2度見せ付けられた。その当時は親父を恨みましたが、今になって思えば、親父がオレに屠殺の現場を敢えて見せたのには、ちゃんとした理由があったのだ。

 故に、私は贅沢の為にブランド牛を、生きる為にハンバーガーを食いたいとは思わない。わざとらしいベジタリアンやヴィーガンになろうとは思わないけど、大豆や魚や鶏だけで、動物性タンパクは十分過ぎると思うが。賛否分かれそうですね。
 でもまずは、親父に感謝です。生きてる時に感謝したかったが。直ぐに他界したので、どうしようもない。

 やはり、屠殺の一番残酷なシーンを大衆に見せなアカンですね。そして、生首だけになった牛から睨まれる恐怖を是非味わって貰いたい。完全に死んだ筈の牛の眼がいきなり開いて、じろりとコチラを剥いて、睨み付ける。
 そういった恐怖の体験すれば、牛を毎日食おうという気にはならないかもですが、それでも食う奴は食うか。


最後に

 ここで、内輪話を一つ。普段は超のつくドケチの親父が、屠殺場の見学の後、牛の生首が捨てられる処分場に隣接する、ボロ食堂に連れて行かれた。
 そこで、親父が注文したのが、何と牛丼である。幼稚園児の私は流石にキレた。丼をひっくり返し、食堂の外へ飛び出した。全てがイヤになったのだ。

 流石に反省した親父は、トラックを飛ばし、少し離れたドライブインへ連れて行った。しかし、である。そこのメニューも屠殺場の食堂と同じく、丼モノしかない。
 ここでもボクはキレた。メニューにはない、”サンドイッチが食いたい”と言い張った。親父は流石に怒ったが、私は引き下がらなかった。

 すると、奥の方から若く可愛いオネーが出てきて、ニッコリと微笑んだ。”少し時間がかかるけど、我慢して頂戴ね”
 彼女は、メニューにないサンドイッチを作ろうと、直ぐに近くのスーパーに駆け込んだのだ。マヨネーズをベースにしたハムのサンドイッチの美味しかったこと。
 それ以来、ハムのサンドイッチが大好物となった。そして、牛丼は牛スジと並ぶ最大の憎きメニューとなった。

 以上、牛の解体の現場を幼い頃の記憶とサイトを元に紹介しました。テーマとしては微妙ですが、知ってて損はないと思います。
 「続編」も書いてますんで、宜しかったらです。


20 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 (のらニャー)
2018-08-23 15:33:09
怖くてノッキングのところまでしか読めませんでした(ごめんなさい)、
豊かになるほど命を奪う事になる、奪われる動物達の恐怖は凄まじいものでしょう、

人類は豊かさだけ求めて社会を見ようとはしないですね、本当はもっとのんびりと生きて行く方が人類にとって価値があることなのにね、

勉強になりました。
返信する
牛は優しい目をしています (びこ)
2018-08-23 16:17:45
それなのに、こんな残酷な殺され方をされて食べられる。なんと理不尽なことでしょう。

せめてその肉をいただくときは、殺された牛の無念に思いを致して感謝して食べたいと思います。

子供の頃の私は、お肉はいっさい食べられませんでした。食べようとすると、牛や豚や鶏の姿が浮かんで口にできなかったのです。食べられるようになったのは子供を産んでからです。最近、またあまり食べられなくなってきていますから、できれば、このまま食べないでいられたらと思います。
返信する
命、いいタイトルですね。 (lemonwater2017)
2018-08-23 20:39:00
ネコニャーさん、こんばんわです。
象が転んだです。

”豊かになるほど命を奪う事になる”、まさにその通りです。

”豊かさのみを求める人種”って、戦争か競争かのどちらかにしか興味が持てないんですかね。全く哀しくも残酷な人種です。

人類もいつかは、家畜に学ぶ日が来るでしょうね。いや、家畜の奴隷になる日が来るんでしょうか。

ただ、ノッキングに関しては、非常に呆気ないです。悍ましいのは、内蔵摘出ですね。食事中にこういうコメントも失礼なんですが。
返信する
牛は、全てにおいて優しいんですよ (lemonwater2017)
2018-08-23 20:47:12
ビコさん、こんばんわです。象が転んだです。

牛は豚と並んで、非常に優しい生き物ですね。

 彼をして、私達は食べてるんですから。全く、人生が理不尽な様に、人間が理不尽な生き物な様に、人間に狩られた家畜たちは、理不尽な死に方をして、食肉となるんですから、やり切れないです。

 勿論、場で働いてる人に罪はなく、我々大衆が家畜の肉を食べるから、仕事になるんですが。あるデータによると、牛から得られる、タンパク質の変換効率は非常に悪く、飼料の無駄使いとも言われてます。もう、牛や豚を食うのは自粛すべきですね。
返信する
Unknown (ゑんぢんぶろぐ ぶろぐ主)
2018-08-23 20:55:20
それは貴重な体験でしたね。

残念ながら、直接触れた経験はありませんが、屠畜場の日常を撮った「ある精肉店のはなし」というドキュメンタリー映画を見たことはあります。
ゑんぢんぶろぐでもレビューを書いております。
https://blog.goo.ne.jp/takemoto-engine/e/9c9e953fa0103793174b127296b95387

生き物が食肉、皮革になる過程をしっかりとらえた作品です。
もしご覧になる機会があればぜひ。
返信する
ある精肉店のはなし (lemonwater2017)
2018-08-23 23:45:35
ゑんぢんぶろぐさん、こんばんわです。

ドキュメント映画と実物の一番の違いは、何と言っても”匂い”ですね。映画でこの匂いが表現出来れば、ドキュメント映画や戦争映画は、バカ売れでしょうか。

 牛や豚はやはり可愛そうですね。勿論、植物も可哀想そうかもしれませんが(笑)。でも、牛や豚肉は格別に美味しいんですよね。”植物ミート”ブログでも述べた様に、直後の死後硬直後の肉をステーキにした時のあの美味しさは、今でも鮮明な記憶に残ってます。

 人間は私も含め、下衆で残酷な生き物です。でも、ホントに生きていく為に、家畜をあえてする必要があるのか?大豆や藻だけで生きていけないのか?とても難しい所です。個人的には、牛や豚は制限し、鶏くらいは自由に食わせてと(笑)。身勝手な意見ですが。
返信する
Unknown (Viva)
2018-08-24 20:24:24
レモンウォーターさん、


この記事物凄くショックです・・
しかし、皆が読まなければならない
ほどの貴重な内容だと思いました。
動物への考え方や、
思想が素晴らしいです。


知識も広くて、何者?って思います。

それにくらべ、
私のブログは浅すぎて・・


返信する
Re:Vivaさんへ (lemonwater2017)
2018-08-25 06:42:39
おはようございます。
象が転んだです。

こればかりはしようがないですかね。
人間は残酷を食べ、冷酷に生きるというか。

 でも、方法はなくはないか。週に一回でも牛や豚を食ってはいけない日を作れば、その日くらいはされる牛や豚の事を、否応なく考えるでしょうから。でも、実物見ないと、ドキュメント映画やYoutubeを見た位では、効き目ないか。

 一番アカンのは、ビーカン。カルト系ベジタリアンぽくて、こっちの方がずっと怖いですかね。でも最近は、菜食主義の健康に対する弊害も出てるみたいで。

 結局、の現場が悍ましかろうと、生きていくには動物性タンパクは必須で、問題なのはする数でしょうか。まこれに関しては、炎上しない程度にブログを立てていこうかと。
返信する
Unknown (muda00)
2019-05-23 10:08:58
考えさせられる記事です。
多くにとっては自分には出来ないことをお金を払って他人にやってもらうということですね。

自分1人の力では本来手に入らない物が手に入るという文明、社会にいるんだと感じました。
返信する
muda00さんへ (lemonwater2017)
2019-05-23 13:09:25
はじめましてです。

人が牛を殺し、食うだけの事ですが。ただするその数が異常過ぎますか。殺される牛の怨念が吹っ飛びそうな数です。

それにせめて挽肉にだけはしないでくれって感じですかね。
返信する

コメントを投稿