象が転んだ

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ヤりたい男と”ヤラせたくない”女の哀しい関係〜ショートストーリーその1

2019年08月31日 13時00分47秒 | ショートショート

 何だか私めのブログが長すぎて、堅すぎるという悪評があり、そこで今回は気分転換と悪評撤回の為にショートストーリーをです(少し長めですが・・・)。
 勿論、書いてる事は全くのフィクションです。


〜エリート男と美女の哀しい関係〜

 一流大出のエリート(24)がいる。彼が勤める会社には、グラマーで鳴らす美女(20)がいた。高嶺の華らしく、他の同僚は誰も近づけない。 
 エリートには勿論、プライドがあった。
 ”オレならあの美女を落とせる。オレの家系は絶頂の一族なんだ”と、自信満々だった。
 男は早速、名家の家宝である派手な額縁で飾られた墨書を女に差し出した。
 しかし、女は”昇竜”と書かれた墨絵を一瞥し、せせら笑う。
 ”こんな絵で私を口説くなんて、冗談じゃないわ”
 女は表情一つ変えず、その場をあとにした。

 エリートは本気になった。
 ”この女には女神が宿ってる。元総理大臣である親父が書いた墨書にも全く動じない”
 早速男は、”結婚したい女がいる。少しお金を工面してほしい”と、父親に頼み込んだ。
 親父はすぐさま切り返す。
 ”一族に見合うだけの女なんだな?”
 息子は自慢げに言い放つ。
 ”ああ、間違いない、紛れもなく超の付く上物だ”

 男は早速、豊富な資金をバックに女を口説きに掛った。
 しかし、一向に女は折れない。それどころか、距離が離れていくばかりだ。
 ダイヤにルビー、バッグにドレス。どれもブランド物の超一級品だ。お陰で、あっという間に資金を使い果す。
 親父にはバカ呼ばわりされた。深く傷ついた若者はグレた。同僚たちと羽目を外し、生まれて初めて夜遊びを経験した。

 同僚達は、美女の本性を知り抜いていた。だから敢えて近づかなかったのだ。
 つまり、彼らは待っていたのだ。エリート男を壊滅させるチャンスを。
 ”このままのさばらせておけば、奴は自動階段を駆け上がる様に出世する筈だ。そうは問屋が下ろすものか”
 彼らは男を誘い、美女が勤める会員制の高級”エステパブ”へ連れて行った。下調べは十分だった。

 店に入ると、会員証の提示を求められた。同僚の一人は、”元総理の息子を連れてきたぜ”とマネージャの耳元で小さく囁いた。
 中年男のマネージャはニヤリとした。
 ”プランAでいいんですね?”
 ”ああ、後は任せたぜ”

 エリートは店のシステムが分ってなかった。エステ嬢の素性がバレない様に、客は皆マスクを被せられるのだ。
 男は不安になった。何か悪い予感が閃いた。
 ”ここはイヤだ。ここを出よう”
 同僚の一人は怒鳴りつけた。
 ”今更何をビクついてる、将来総理になろうとする男が”
 男は泣く泣く従い、怪しげで薄暗い店内へと恐る恐る歩を進めた。
 一番奥のシートに座らされ、マスクを被せられた。
 不安だったが、不思議と度胸が湧いてきた。

 4、5分経ったろうか。女がやって来た。
 ”エリカで〜す。膝が少し震えてるようだけど、ここは初めて?でも緊張しなくてもいいのよ、みんな最初は初めてなんだから”
 エリートは何も答えなかった。
 ”膝の上に乗っていい?一応お触りとキスはOKだけど、手マンとクンニ弄りは別料金ね”

 目をマスクで覆われた男は答えれる筈もなかった。
 しかし声の主が、あの女なのは明らかだった。混乱と失望と動揺が男を襲った。
 エリートは自分を捨てた。今までの全てを脱ぎ去った。
 いきなり、女の柔らかで豊満な肉体をぐいっと抱き寄せた。半分ハダけたブラウスを引っ剥がし、有無を言わせずに2つの白い肉塊を揉みしごいた。 
 赤く変色した乳房が全てを、そして男の本気度を物語っていた。
 女は思わず喘ぎ声を発した。いつもとは全く異なる雰囲気に、なす術もなく圧倒された。

 男は全てがどうでもよくなった。
 ”オレが本気で惚れ込んだ女が、高級淫売だったとは?” 
 エリートは、無我夢中で女の肉体の中を彷徨った。
 女は、男の不器用な奇襲になす術もなく従った。
 しかし、やがて女は欲情し、今度は女が男を支配する。
 ジッパーを外し、男のイチモツを強引に掴み出し、いきなりシャブリついた。

 包茎の客は初めてだった。女は余計に興奮した。男は奇怪な喘ぎ声を発すると、またたく間に萎えた。白い精液が男の全てとなり、勢いよく女の顔を濡らした。
 一瞬、女は怒りを覚えたが、悦楽と恍惚と戸惑いがそれを上回った。
 女は目の前の男が誰なのか、想像はついてたが、確かめるまでもなかった。マスク越しから、エリート男の放心しきった表情が垣間見えるようだった。

 男は、全てが終わった様に感じた。
 ”オレは、一瞬でもあの女を支配した。それだけでも十分じゃないか”
 エリートは何も言わず、女に誘われるがままに店の外に出た。マスクを脱ぐと、先程のマネージャがいた。
 ”何だか凄く激しかったみたいですね。でも別料金は取りません。No.1のエリカさんに好かれるなんて、貴方はホントにラッキーな方だ”

 男は会釈する事なく外に出た。いつもはギラギラした夜の繁華街が、死に絶えた瓦礫のように思えた。



8 コメント

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#114さん (象が転んだ)
2021-05-22 10:52:15
よく気づきましたね。
岸信介も晩年は田中角栄の愛人(芸者)を口説き落とそうと、宝物の墨絵?をプレゼントしようとした所、あっさりと断られたというエピソードがあります。

ショートストーリーは書いてて難しいですね。ネタが殆ど浮かばないし・・・
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小泉進次郎 (#114)
2021-05-22 09:17:37
を見てるみたいだけど
彼も同じような事してきたんだろう
今は美人ほど夜の仕事につきたがる
お金と男が
手っ取り早く手に入るから

目隠しの風俗店
という設定もユニークだけど
女へのプレゼントが墨絵というのも
何だか岸信介の晩年を思い出すね
芸者と風俗嬢の違いだけど
粋なショートに仕上がってるとは思う
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unknownさん (象が転んだ)
2019-11-07 13:40:29
ピンポーン
でもアレンジするのに苦労しました。
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たけしネタ (unknown)
2019-11-07 11:31:07
どっかで見た様なネタだけど
うまくアレンジしたな
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こちらこそ (象が転んだ)
2019-09-02 04:37:01
ヒントの元ネタ、助かりました。
こちらこそアリガトです。

できれば1000文字以下にしたかったんですが、エリート男に感情移入してしまい、長くなってしもた。

お褒め頂いて恐縮です。
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ありがとね〜 (HooRoo)
2019-09-02 02:04:25

うわあ〜^_^、ありがとね〜(^^♪

こうなるんだぁ、少し長いけどやはり本格的よね。
コメントの元ネタは、あるTVで知ったんだけど、ここまで作り上げるとは、転んだサンこそ神の筆よ。

これからもその調子で頑張ってちょうだいな👋
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ビコさんへ (象が転んだ)
2019-08-31 21:02:26
読んで頂いて恐縮です。

夏目漱石が言ってた様に、自分で上手く書けたと思う文章ほど、後で見返すと気不味く感じると。

もっと短くし、サラッと流したかったですが、少しクドすぎましたかね。慣れるまでは時間が掛かりそうです。反省!反省!

大雨の方ですが、その後全く降りませんでした。呆気ないほどでした。隣の佐賀の方は、ボランティアを募集してました。ただ、雨の方は殆ど降ってない筈なので、最悪にはならなかったみたいです。

それと、便秘の方は何とか治りました。これもブログにする予定です。
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転象さんのblogは (びこ)
2019-08-31 20:21:12
ルポタージュ記事が優れていると思います。

このミドルミドル?は若い女性なら喜ばれるかもしれませんが、私にはイマイチでした。
ごめんなさい。

それよりも、大雨のその後はいかがですか?
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