10月の日曜劇場は予算が多いとされる。通常、1時間のドラマの制作費は3000万円台だが、その2倍以上と言われる。
事実、主演級と準主演級の超有名俳優がズラリと顔を揃える。プライム帯(午後7時~11時)の新作”秋ドラ”はNHKと民放を合わせ13本だ。
その中でも不思議と興味を引いたのが、西島秀俊主演の「真犯人フラグ」である。
「日本沈没」も大きな話題にはなってるが、初回を見た限り、「真犯人フラグ」の方が登場人物も少なく、展開的にも熟れた感じのする無難な作品の様にも感じた。
それに、私の歳に近い?西島秀俊(50)には親近感をも覚える。顔も”しょうゆ顔”で他人には思えない。
それにタイトルが大人し目なのがいい。宮沢りえも多少オバサンにはなったが、まだまだ美しい。
お決まりのパターン?
秋元康が企画・原案を務めたという事で、”パターンが陳腐すぎる”との中傷も目立つが、そうした初歩的な不足を、西島秀俊と宮沢りえの緻密な演技力と暖かみある人間味が見事にカバーしてる様な気がする。
日本人は推理ドラマとなると、”犯人は誰だ”という単純な議論で簡単に尽くされる。
しかし、ミステリーの中核をなすのは展開の過程そのものである。結果なんていくらでも作れるし、犯人が誰であろうと、ドラマの作りや本質には相容れないものであるべきだ。
東野圭吾の作品の様に、大方の予想の如く犯人像が決まってて、展開の幼稚さを登場人物の多さと伏線(フラグ)の複雑さで補うといった推理ものが、日本島民には大受けするという欠点もなくはない。
しかし、「真犯人フラグ」はシンプルなタイトルの通り、作品の中核をなすのは”犯人は誰だ?”でも登場人物でもなく、微妙に錯綜するフラグ(伏線)に帰着する。
因みにフラグとは、特定の展開・状況を引き出す事柄を指す専門用語で”伏線”と同義ではあるが、フラグは比較的単純で定型化された”お決まりのパターン”の含意がある。
つまり犯人探しの論点で見れば、パターンは単純なのだ。故に、展開や人間模様を十分に楽しむ推理ドラマとも言える。そこを勘違いすると、コアな推理ファンから見れば、”どっかで見た様な”と見透かされるのかもしれない。
平凡な運送会社課長の相良(西島秀俊)の妻と娘が突然失踪し、西島本人がSNS上で犯人扱いされるという現代ミステリーの王道を行く様な展開だが、小さなマイホームを夢見る家族の何気ない描写が妙に心を打つ。
友人であり週刊誌編集長の河村(田中哲司)が”お前みたいな才能のある奴が平凡なサラリーマンとはね”と見下し、相良は”俺はこの平凡な生活で十分満足してる”とやり返すシーンも実に心憎い。
警察は”家出の可能性もあり、事件として認められない”とまともに打ち合わないが、失踪事件の基本は一番身近な者を疑えというから、最初に相良本人が疑われても当然ではある。
そこで、”記事にすれば警察も動く”と考えた相良は、河村が編集する週刊誌に実名で家族の写真を紹介する。
しかし、これが裏目に出るのは明らかだった。最初は記事によって失踪した家族への関心が高まったが、あるSNSの投稿により世論はガラリと一変。その投稿には”ダンナが殺したんじゃないの?”と書かれていた。
実は家族が失踪した晩に、友人の店で飲みふざけた写真がSNS上で出回ってたのだ。
答えのないドラマ
最後に少し気になったのが、相良の援軍となる職場の部下・二宮(芳根京子)も親身になって真犯人探しを手伝うが、彼女が何気なく渡した(社名入り)ボールペンで、相良の素性がバレた事を考えると、”真性フラグ=犯人”の疑いもなくはない。
しかし、犯人の決め手となる伏線(フラグ)を追うと、他にこれと目立つものはない様な気もする。
ここまで書けば、大体の結末は推測できそうだが、個人的には犯人を特定してほしくはない。つまり、映画「ゾディアック」(2007)みたいに犯人がわからないまま、ドラマを終えてほしいのだ。逆に犯人を特定してしまえば、答えを逆算して作った受験問題と同レベルに成り下がる。
故に、”犯人探し”のミステリーほど浅薄でアホ臭なドラマはない。
数学に答えがないのと同じで(だから数学という学問は偉大なのだが)、推理にも答えがある筈がない。
あるのは、主観に凝り固まった身勝手な推測と”お決まり”のフラグ(伏線)だけである。
そう思うのは私だけだろうか?
感じですよ。
こういうのは目の超えたコアな推理ファンがいて
すぐに犯人を見つけ出すんです。
「あなたの番です」の逆バージョンともされてますが
言われる通り
犯人探しだけのドラマなら
これほど単純な問題はないですよね。
フラグ(伏線)を必要に追いかければ
すべての伏線がドラマ内で消化されることはまずないですから・・・
よって明確な伏線だけに焦点を絞れば
答え(犯人)は出てきます。
フラグ=お決まりのパターン
という副意がこのドラマの回答もしれませんね。
暗号の解読などもありましたし。
最後まで犯人がわからないこと。
ただ、これは現実の未解決事件だから出来ることかもしれません。
「3億円事件」「グリコ森永事件」しかり。
今作の良さは、10話をかけて真相を追う構造になっていることですよね。
1話完結で犯人がわかってしまうミステリードラマが多い中、この試みは褒めていい気がします。
実際、僕たちも「○○が怪しい」「××は伏線だ」と思って見てしまっているわけですし。
物語は「過程」を愉しむもの。
ラストでの、あっと驚く犯人&真相を期待したい所ですが、まずは過程を愉しみたいと思っています。
私が相良だったら直ぐに騙されます。喜んで騙されます。家族捨ててついていきます(嘘)。
でも眞子さまだったら引きますが・・・(悲)
多分、第1話で大方の犯人像がSNS上でも拡散しつつあるから、制作側も脚本の変更を考えてる最中でしょうか。第2クール辺りからドンデン返しを狙ってる筈です。
とにかく、久々に心の底から興奮する展開を期待したいですね。
「真相フラグ」の制作側もネット上の噂は知ってる筈でしょうから、少しずつ展開を変えていくでしょうが。
でも繊細な人間模様と微妙に揺れ動く展開を重視して欲しいですよね。
10話完結で思い出したんですが、「キッドナップ」(2007)というアメリカのTVドラマでブログにもしたんですが。共産党員が誘拐に絡むという絶妙で微妙な展開すぎて、22話完結から13話で打ち切りとなったそうです。
典型な犯人探しのミステリーでしたが、これはこれで難解なパズルを解くみたいでとても面白かったです。
この事件には、私立探偵とFBIと共産党員が絡むという微妙にヤバい展開でした。
最後は男の秘書が誘拐犯という事でドラマは幕を下ろしますが、背後に共産党が絡んでたことは明らかでしたね。
本当はこの共産党の悪行を暴く展開に移行する予定でしたが、圧力が掛かったんでしょうか、途中で打ち切りとなりました。
転んださんのブログで興味を覚え、DVDを借りて見たんですが、AXNでも配信してたんですよね。
でも今回のドラマは個人の単なる恨みによる誘拐事件のような気がしてます。そのほうが無難でしょうから。
メディアへの国家統制という点では、中国や北朝鮮ばかりが問題になってますが、肝心な部分はアメリカも同じですよね。
個人的には政権や政党批判だとしても、エンタメとしての出来が良ければ規制すべきではないし、我ら庶民はそういう(無差別の)楽しみを享受する権利があると思う。
でも「真成フラグ」は、ごくありふれた日常性をベースにした繊細なミステリーである事を望むばかりですね。