LUSTYHOUSE

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「Sicko」シッコ

2008年11月05日 | 映画

 マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー、「Sicko」シッコを見た。「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」に続くドキュメンタリー。タイトルのSickoは「病的な」アメリカ? という意味だろうか。堂々とした体格。糖尿病で無ければよいが、金持ちだから関係ないか。写真はWikipediaから拝借。
 どんな社会にも病巣は潜む。誰もが銃を持ち、年間3万人もの人が撃たれて死ぬアメリカ。イラク戦争のアメリカ兵士の死者は年間1000人、実に30倍になる。健康保険が無いことによって障害が残る、あるいは死ぬ人の数はどれほどになるのか。新生児の死亡も多いというし、寿命も短いという。先進国の中で国民皆保険が無いのはアメリカだけだそうな。明るく健康的なアメリカ人。全く気にしてないのか、国民皆保険が出来る兆しはないようだ。だが、この映画は保険に入っている人の悲劇をドキュメントしているのだ。保険に入ってない人はそもそも医療を受けられないという。
 日本には一応国民皆保険があり、誰もが必要な治療を受けられるはずだった。数カ月前、夜中に腹痛になりトイレに行ってもますます激しくなる一方。経験のない痛みで、朝まで耐える自信は無く、救急車をお願いする。ほどなく救急搬送されたが、いつまでたっても走り出す気配はない。救急隊員は何度も電話をかけている。30分くらいたったろうか、腹痛も少し和らいだので丁重にお礼を言って救急車を降りた。救急隊員は申し訳なさそうに「遠慮せず、ひどくなったら電話して下さい」とやさしい。何で救急隊員が申し訳なく思う必要があるのか。保険があっても医療を受けられない場合もあるのだ。
 このように、最近ちょっと雲行きがあやしい。急病人がたらい回しされたあげく死亡する、保険証を取り上げられる、年金がらみで健康保険証が失効する、など健康的でないニュースが連日報道される。国民皆保険は無くてはならない制度だ。こんな保険をアメリカのように一企業にやらせていて、ろくなことにならないことは明白だ。生命保険会社の不払いが横行しているからだ。製薬会社、医者、政治家が結託した国の医療が健全なものになるはずはない。医療健康保険は国が誠実に管理すべきだろう。
 また、国民は多くの税金を使って医者を育てる。なぜ医者は公務員でないのか。医者を公務員にすれば、山積する医療現場の苦悩はほとんど解消されるように思うが素人考えだろうか。定年までゆったり医療や研究に専念できるし、無医村など存在しない。殺人的な医師の勤務も解消されルだろう。優秀な医師には豊かな人生が約束され、凡庸な医師にも勉強時間が十分与えられる。アメリカの保険会社で働く医師のように、必要な医療を妨害し良心にさいなまれるようなこともない。まっとうな、国の機関が誠実に管理さえすればいいのだ。必要な人に必要な医療を施すシステム、簡単なことだ。医療は無料であるべきだ。そこに保険会社を介入させる余地など無い。現在の健康保険制度でも、入院時に1万円の給付金は必要ないのだ。死亡保険金だけならずっと少ない保険料で済むはずだ。医療費無料化を実現している国が現実にあるのだ、世界2位のGDPを誇る日本が実現できないはずはない。
 日本は医療立国を目指すべきとの指摘は、はるか昔、野坂昭如のエッセーで読んだ記憶がある。もう一つ彼の予想では、日本はきっと飢える。杞憂に終わることを願う。

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