NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#51 エリック・クラプトン「エリック・クラプトン・ライヴ(E.C. WAS HERE)」(POLYDOR)

2022-01-04 05:04:00 | Weblog

2001年6月23日(土)



エリック・クラプトン「エリック・クラプトン・ライヴ(E.C. WAS HERE)」(POLYDOR)

最近、完全引退するだの、いやレコーディングは続けるだのと、なにかと世間をお騒がせしているクラプトン。

まあ、引退をほのめかしたのは今回が初めてじゃないから、「またか」という気もしたのだが、ファンのひとりとして、まるで気にならないというとウソになる。

だいたい、引退うんぬんを語ること自体、人生すなわちブルースを歌うことという「ブルースマン」像からほど遠いことなのだが。

そのへんの論議はとりあえずおいといて、今日の一枚である。

74年から75年にかけての、英米各地でのライヴ録音。

以前、「BLUES」でのライヴ・プレイに不満をもらした筆者だが、この一枚は結構いいとおもう。

まずはスロー・ブルース、「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」。

「レイラ」にも収録されていたが、8分以内という、ほどよい長さでまとめたのはマル。

「ストーミー・マンデイ」のように12分もやられた日には、この手の曲、聴かせられる側もウンザリするんである。

ステージを固唾を飲んで観ているぶんには、さほど冗長に感じないのだろうが、レコード化したものを聴くとなると、そこに展開される「音」だけで純粋に判断するわけで、当然シビアにならざるをえない。

「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」、これはブラインド・フェイス時代の曲。クラプトン自身の作品。

スティーヴィ・ウィンウッドのような声量やテクニックがあるわけではないが、クラプトンも自分なりに消化して歌いこなしているのには好感が持てた。

実力派の女性歌手、イヴォンヌ・エリマンと組んだのも大正解。

クラプトンの歌の線の細さを見事にカバーして、ブラインド・フェイス版以上にソウルフルなナンバーに仕上がっている。

続いてはチャールズ・ブラウンの代表曲「ドリフティング・ブルース」。

クラプトンはここでは、まずアコースティック・ギターを使って、ダウンホームなサウンドを奏でている。

これぞブルース、という感じの音だ。

ジョージ・テリーも、派手さはないが正統派ブルース・ギターの弾き手で、クラプトンの音とよくなじんでいる。

後半ではクラプトンのスライド・ギターも聴ける。そして、なぜか5曲目にも出てくる「ランブリング・オン・マイ・マインド」をつないで歌っている。11分以上という時間の長さを感じさせない、実に気合いの入った演奏だ。

こういうガッツが、ここ10年ほどのレコーディングには余り感じられないんだよな~。

金もガッポリ稼いだし、うんと若い彼女もできたし、音楽への意欲がわかなくなるのもしかたないのかも知れんが…。

言ってみれば、今のクラプトンは「昔の名前で出ています」という感じで、ヴェンチャーズなんかとさほど変わらないって気がする。長くやっているだけあって、CD、出せば売れるし。

そんなこんなが、今回の引退(?)発言につながっていったってところやね。

さて、アルバムの後半はブラインド・フェイス時代のナンバー「マイ・ウェイ・ホーム」から。ウィンウッドの作品。

こちらもイヴォンヌとのデュエットがいい感じである。

また、アコースティック・ギターのソロも味わい深い。今聴いても名曲だと思います、これ。

さらには、ロバート・ジョンスンの「ランブリング・オン・マイ・マインド」。

ゆったりとしたミディアム・スローのテンポで、最初はつぶやくように歌いだし、じわじわと盛り上げていく構成だ。

半音ずつ転調につぐ転調を重ねていくギター・ソロもカッコ良し。

やっぱ、クラプトンは、バリバリ弾きまくってこそクラプトンだと思う。

ラストはおなじみ「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」。

いくつかのライヴ・バージョンが録音されているナンバーだが、これも快演。

クラプトンのギターも実に軽快にドライヴしている。

テリーのギター・プレイは控えめで、クラプトンをうまく「立てて」いる感じだ。

アルバート・リーと共演したヴァージョンでは、リーの超絶技巧にクラプトンが完全に食われてしまっていたが、この盤ではそういうこともない。いいアンサンブルだ。

筆者が考えるに、クラプトンの最盛期は65年から75年までの10年ではないだろうか。とくにギタリストとしては。

それからあとの四半世紀はその「遺産」で食っているという感じだ。

筆者は、クラプトンが親友ジョージ・ハリスンとともに来日して東京ドームで公演したとき、はじめてライヴを観たのだが、憧れの神様に会えたわりには、いまひとつそのプレイにハマれなかった。

ドームの音響の悪さもその一因だったが、なんだか、彼が過去の自分のプレイの「再生産」をしているだけに見えてならなかったのである。

65年からの10年間のプレイには、彼の音楽との苦闘のあとがはっきりと感じられる。音楽への深い愛情が感じられる。それがリスナーの心をうつのだ。

金がたまったから、引退してのんびり暮したい、そんなひとのCDには興味がないな。

彼が一番いい音を出していた頃、つまり60~70年代の音盤を聴いていたほうがよっぽどましだ。

ということで、皆さんにもぜひ聴いていただきたい。

ただし、ジャケ写のセンスの悪さはなんとかならんもんかな、と思う。

表ジャケはまだ許すとして、持っているかたはおわかりだろうが、ライナー裏の写真を見たときは、なんたる悪趣味!と思っちまったぞ。

クラプトンって、そーいうセンスのひとなのかいね~(爆)。