2001年12月2日(日)
憂歌団「ベスト・オブ・憂歌団ライブ」(フォーライフ 28K-116)
1.渚のボード・ウォーク
2.All Of Me
3.Midnight Drinker
4.嘘は罪
5.ザ・エン歌
6.ドロボー
7.パチンコ組曲
8.Stealin'
9.シカゴ・バウンド
憂歌団、86年5月24日、新宿シアターアプルにてのライヴ。
「ベスト・オブ」と銘打たれただけあって、彼らのいくつかあるライヴ・レコーディングの中でも出色の出来ばえである。
「赤い灯、青い灯、道頓堀の、川面に映る恋の灯よ…」
今は亡き作家、景山民夫さんの名調子のMCとともに、憂歌団登場。
まずは、ストーンズのカバーでも知られるドリフターズ64年の大ヒット、(1)でスタート。アーサー・レズニックとケニー・ヤングの作品。
おなじみのアコギ・サウンドにのった木村秀勝(現・充揮)のしゃがれ声は、なんとも艶っぽい。
続いて、ジャズ・スタンダード中のスタンダード、(2)へ。シーモア・サイモンズ、ジェラルド・マークスの作品。
堤夏の訳詩も、実にせつないムードをかもし出していて、ナイス。
女心を歌わせれば「天才的」ともいえる木村の歌唱が、これまた光っている。
さて、憂歌団のステージの一番の特徴といえば、演奏する側も観客の側も、一杯ひっかけてリラックス・モードに入っているということ。
いささかウルサイ声援もあるものの、実にいい雰囲気が漂っている。
インナー・スリーヴの写真で見るに、憂歌団のメンバーは、ウィスキーの水割りをプラコップに二杯、足元に置いて、一曲終わるごとに少しずつひっかけて行く。
当然、ステージが進むにつれて、気分がどんどんハイになっていくという寸法だ。
そんな酒好きな彼らをそのまま歌にしたようなナンバーが、お次の(3)だ。沖てる夫の詞、内田勘太郎の曲。
こういう曲では、ほんと、客席も盛り上がる。手拍子、足ぶみ、なんでもあり。
あげく、「1万リッターのゲ●を吐け」の歌詞である。ちと汚ないが、これには観客も狂喜乱舞(笑)。
さて、口直しなのか、またしっとり系のスタンダード、(4)。ビリー・メイヒュー作。
ジャズ・ヴォーカリストでこの曲を歌ったことのない人は、いないという位の、超有名曲。
またまた木村は、女性になりきった、やるせない歌唱。これにオブリを付け、ソロを奏でる内田のギターといったら、もう絶品。
この人のアコギは、なんでこんなにも美しい音色を紡ぎ出せるのだろう!
A面(アナログで聴いておるのだよ)のラストは、木村のオリジナル、(5)。
大阪出身の彼らしい、文字通りド演歌なナンバーなのだが、これがまたいい。
とにかく、彼のような天才の歌を聴くと、歌とは心ぢゃ!と痛感しますね。
テクや声量、それも重要ではあるが、すべてではない。最終的にはいかに歌の中に心を込められるか、これだと思いますです。
B面のトップは、木村作のノヴェルティ・ソング、(6)。ちょっと放送は出来そうにない、ヤバイ系の歌詞。
でも、彼らが歌うとサイコーにユーモラスで、楽しい。客席も大歓喜。
さらに追いうちをかけるのが、同じく木村作の(7)。
これがもう、抱腹絶倒の出来。ぜひ、聴いてみて欲しい。
おなじみの「パチンコ、パチンコ!」の連呼をしていたかと思うと、突然、曲調は一変、マイナーに。
なにが始まるかと思いきや、「けさ来た、新聞に、近頃は、パチンコが出ない~」と来たもんだ。
そう、井上陽水の「傘がない」のロコツな引用だ。
それを歌っているうちに、いつのまにかGFRの「ハートブレイカー」に変わっていたなんてご愛嬌も。
またまた、ロックン・ロール調へ一変。チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」だ。
大盛り上がりの中、ワメきまくる木村。
それでもまだ終わらず、マイナー・ブルース調「パチンコ」へ。
勘太郎のギターからは、「エリーゼのために」やら「天国への階段」やらのフレーズも飛び出したりして、大ウケ。
最後は正調「パチンコ」に戻って、大団円。いやー、ほんまに笑わせてもらいました。
「それでは皆さん、コーラスの時間です」と、木村が観客をリードして、(8)へなだれ込む。
ガス・キャノン作、内田と有山淳司が日本詞をつけた名曲だ。
場内の大合唱で、ステージはクライマックスへ。
ラストは、名古屋のブルース・バンド「尾関ブラザーズ」がオリジナル、憂歌団のデビュー・アルバムにも収録されていた、尾関真作のスロー・ブルース・ナンバー、(9)。
一音一音に魂を込めるかのような、内田のスライド・プレイが最高にカッコよい。
そして、もちろん、その心をすべてしぼり出すかのような、木村のダミ声も…。
静と動、陰と陽、躁と鬱。あらゆる憂歌団の魅力がつまった、最高の出来。
日本のバンドだってこれだけスゴいことが出来るんだって、マジで感動した一枚。ほんまもんの名盤です!