NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#77 V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 7: BLUES REVIVALS」(MCA/Rhino R2 71128)

2022-01-30 05:55:00 | Weblog

2001年12月8日(土)



V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 7: BLUES REVIVALS」(MCA/Rhino R2 71128)

1.BABY, WHAT YOU WANT ME TO DO(JIMMY REED)

2.THREE ACES ON THE BOTTOM OF THE DEAL (AKA BLUES FOR GAMBLERS & EVERYBODY'S BLUE)(LIGHTNIN' HOPKINS, SONNY TERRY, BROWNIE MCGEE WITH BIG JOE WILLIAMS)

3.CANDY MAN(MISSISSIPPI JOHN HURT)

4.FANNIN STREET(DAVE "SNAKER" RAY)

5.WRITE ME A FEW LINES(MISSISSIPPI FRED MCDOWELL) 

6.DEATH LETTER(SON HOUSE)

7.BOOM BOOM(JOHN LEE HOOKER) 

8.GOT MY MOjO WORKING(MUDDY WATERS)

9.BORN IN CHICAGO(PAUL BUTTERFIELD BLUES BAND)

10.GOOD MORNING LITTLE SCHOOLGIRL(JUNIOR WELLS' CHICAGO BLUES BAND)

11.THE BLUES NEVER DIE(OTIS SPANN)

12.BABY SCRATCH MY BACK(SLIM HARPO)

13.COMING HOME TO YOU BABY(SONNY BOY WILLIAMSON II)

14.THE DEATH OF J.B. LENOIR(JOHN MAYALL & THE BLUESBREAKERS)

15.ON THE ROAD AGAIN(CANNED HEAT)

16.BLUES POWER(ALBERT KING)

17.THE THRILL IS GONE(B.B. KING)

先月の10日分でも紹介した、「BLUES MASTERS」シリーズの続編である。1993年リリース。

MCA系のみならず、レーベルを超えてさまざまなアーティストがコンパイルされているので、なかなか「お買い得感」の高い一枚だ。

まずは、ジミー・リードの歌による(1)から。リード自身のオリジナルで、59年録音。翌年にはR&Bチャートで大ヒットしている。

tRICK bAGもメドレー中で取上げている、おなじみの曲。tbファンなら要チェキである。

やたら長いタイトルの(2)は、メンバーも実に豪華。

ライトニンに、ソニー&ブラウニーのコンビ、非公式ながらビッグ・ジョーも加わって、和気あいあい、セッション風の演奏を繰り広げてくれる。60年録音。

達者なフィンガー・ピッキングでのアコギ演奏を聴かせてくれるのは、1893年生まれの伝説的カントリー・ブルースマン、ミシシッピー・ジョン・ハートによる(3)。彼自身のオリジナル。

63年ニューポートにての録音だから、すでにおん年70歳。でも、年齢にまるで関係なく、実にみずみずしい歌と演奏だ。必聴!

(4)はちょっと毛色の変わった、フォーク調ブルース。レッドベリーのナンバーを、日本ではまったく知られていないスネイカー・レイというシンガーが12弦ギターを弾きつつ歌う。

ジャカジャカと、コード・ストロークを弾きっぱなしのスタイルが、妙に新鮮に聴こえる。とにかくパワフル!な一曲だ。

「ミシシッピー」と名づけられたミュージシャンは何人もいるが、そのひとり、フレッド・マクダウェルによる(5)が続く。自身のオリジナル、64年録音。

こちらも弾き語りスタイル。いかにもダウンホームなスライド・ギター・プレイに、ヘタウマ系の枯れたヴォーカル。

マニアにはこたえられない「味わい」の一曲だ。

カントリー・ブルース系をもう一曲。リゾネイターを弾きつつ歌う、サン・ハウスの(6)だ。彼のオリジナル、65年録音。

その起伏の激しいギター・プレイ、そして野太くエモーショナルな歌声には、ただただ圧倒される。

ロバート・ジョンスンに多大の影響を与えたといわれるのも、納得。たしかに、「Walkin' Blues」は彼の影響なしには生まれえなかったように思う。

「情念」のほとばしるような一曲である。

続いて、先日83歳で亡くなったばかりのジョン・リー・フッカーによる(7)。自身のオリジナル、61年録音。

アニマルズにカバーされたことで、一気にメジャーになったナンバーだ。

前の何曲かと比べると、ものすごくモダンなビートだな~と感じる。でも、どちらもブルースであることに変わりない。

わが道を行き、かつ極めたワン・アンド・オンリーなブルースマン、ジョン・リーの真骨頂を示す一曲。とにかく、カッコいい。

続くは、ブルース・コンサートのキラー・チューンと呼ばれる(8)。

「BLUES ORIGINALS」ではオリジナルのアン・コールによるヴァージョンを紹介していたが、こちらでは世に広めた張本人、マディ版を収録。

もちろん、かのニューポート・フェスティバルでの初演版だ。60年録音。

当時から、キラー・チューンだったと感じるくらい、マディ、観客、ともにノリノリのライヴである。

さらには、ホワイト・ブルースも登場。バターフィールド・ブルース・バンドによる(9)である。

ニック・グレイヴナイツの作品。65年録音、彼らのファースト・アルバムから。

ここでは、バターフィールドがヴォーカル、ハープとフルに活躍。とくに黒人顔負けの熱っぽいハープ・プレイが聴きもの。

さすが、初めて黒人街へ踏み込んだ白人ブルースマンだけのことはある。

続いては、ジュニア・ウェルズ率いるバンドによる(10)。サニーボーイ一世の代表作のカバー。65年録音。

これぞシカゴ・ブルースという感じのコテコテなヴォーカル&バンド・スタイル。

ギターはバディ・ガイ。現在のブルース界を代表するプレイヤーの、若き日のプレイが聴ける。

シカゴ・ブルースといえば、ピアニストとしてトップの座にいたのがオーティス・スパン。そんな彼のリーダー作が(11)。

自身のオリジナル、65年録音。

彼のアンニュイなヴォーカルとシブいピアノ演奏はもちろんだが、バックにマディがギターで参加しているのも注目である。

マディ・バンドへの長年の参加への、恩返しといったところか。

シャウトしないクールなヴォーカルといえば、スリム・ハーポ。「BLUES ORIGINALS」でも、彼の特徴ある歌声が聴けたが、ここでも同じヤーディーズによってカバー(「ラック・マイ・マインド」と改題)された(12)を収録。

おかしな歌詞に、粋なヴォーカル。独特な世界を持っているひとだ。

サニーボーイ二世は(13)で登場。マット・ギター・マーフィのアコギのみをバックに聴かせる歌とハープは、まことにディープ。

自身のオリジナル、63年録音。

彼のチェスでの代表的アルバムからではなく、「Portraits In Blues」というかなりマイナーな、ストーリーヴィルでのアルバムからの選曲というのも、泣かせます。

再び、白人勢の登場。ジョン・メイオールは(14)で、個性的なブルースマン、J・B・ルノアーの死を悼んで自作曲を歌う。

67年録音、ミック・テイラー参加後のアルバム「Crusade」から。ミックのギターはもちろん、リップ・カントによるバリトン・サックスのソロが実にフンイキを出している。

白人バンドで、もう一曲。キャンド・ヒートの代表的ヒット、(15)である。リード・ヴォーカル、アル・ウィルスンの作品。68年録音。

ブルースに通暁したウィルスンならではの、ツボをおさえた曲作りが光る、オリジナル・ナンバー。シャウトせず、ファルセットで歌う、ヴォーカル・スタイルも面白い。これまたブルース。

さて、(15)でアルバート・キングが登場。すでにこの「一日一枚」でもご紹介した、究極のライヴ盤「LIVE WIRE / BLUES POWER」に収められた、究極の一曲だ。

自身のオリジナル、68年録音。

そのスゴさ、素晴らしさは、もう、聴いていただくほかない。

コンピレーション盤にもかかわらず、カットせず、フルで収録されているのも、大変うれしいところだ。

さて、どんじりに控えしは、やはりこのお方に登場していただくほかはないという、御大B・B・キング。

69年録音、大ヒットとなった(17)を収録。これはベンスン=ぺティットのコンビによる作品。

当時先端のファンクなリズムにのせて、歌われるマイナーなメロディ。B・B一流のヴォーカル・テクが冴え渡る一曲。

これまた、泣かせますな!

1960年代に入って、おもに英米の白人層によりブルースが再発見・再評価され、一大ブームになっていく。

このコンピレーションは、その時代を検証するべく編まれたわけだが、一枚を通して聴くと、実にさまざまなタイプのブルース・アーティストが同時期に存在し、それぞれに自分たちの個性を表現していったことが、よくわかる。

「百家争鳴」といいますか、「百花繚乱」といいますか。

ビートにしても、実にさまざまなものがあり、その多様なDNAがいまだに引き継がれている。

音楽構成としてはシンプルでありながら、その中身は多様で、奥行きが深い。

「ひとつの型にはまらない」、これこそが21世紀になってもブルースという音楽が脈々と生き続けている理由だと筆者は思いますが、いかがでしょうか?