2001年7月8日(日)
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スティーヴィ・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル「ライヴ・アライヴ」(EPIC)
この8月で、スティーヴィ・レイ・ヴォーンが35才の若さで亡くなってからまる11年が経つという。
へえ、もうそんなになるのかいのーと思いつつ、86年に発表されたこのライヴ・アルバムを聴いてみる。
全13曲、70分におよぶパフォーマンスが収録されている。85年モントルー、86年オースティン、ダラスでの録音。
ワウワウ全開のインスト・ナンバー「セイ・ホワット」からスタート。ミディアム・テンポでのっけから快調に観客を引っ張る。つかみはOKだ。
続いて、スロー・ブルース「ギヴ・アップ・オン・ラヴ」。なめらかなボーカル、そして泣きのギターを聴かせる。
このへんの「切り替え」が実に巧い。
おなじみのシャッフル・ビート・ナンバーは「プライド・アンド・ジョイ」。はねるようなメロディ・ラインが印象的。
ここでは、キーボードのリース・ワイナンスが乗りのいいピアノを聴かせてくれる。
3曲、オリジナルで固めてきたかと思えば、次はバディ・ガイの「マリー・ハド・ア・リトル・ラム」をカバー。
ガイも彼のお気に入りのギタリストのひとりなのである。トリッキーで攻撃的なギター・プレイは、どこかガイに通ずるものがある。
さらにはスティーヴィつながり(?)か、スティーヴィ・ワンダーの「迷信」もカバー。
レイ・ヴォーン・バージョンは、おどろおどろしいところもなく、意外にさらっとしたアレンジのファンク・ナンバーに仕上がっている。後半からはスティーヴィ節のギターが聴かれるのだが。
ワンダー・バージョン、BBAバージョンと聴き比べてみると面白いだろう。
続いてハウリン・ウルフの「アイム・リーヴィング・ユー」。典型的なワン・コード・ブルースだ。
この曲では、ウルフにせまるド迫力ボーカルを聴くことが出来る。そのギター・プレイにのみ注目されがちなレイ・ヴォーンだが、その骨太でワイルドな歌声もまた、彼の魅力のひとつだろう。
セカンド・アルバム収録の「コールド・ショット」はミディアム・テンポのナンバー。ステディなビートに乗せて、派手にスクウィーズするギター・プレイが聴きもの。
以下、「ウィーリー・ザ・ウィンプ」「ルック・アット・リトル・シスター」と続くが、これにはスティーヴィの実兄、ファビュラス・サンダーバーズを率いるジミー・ヴォーンがゲスト出演しているのが目を引く。
デビュー・アルバム(83年)のタイトル・チューン「テキサス・フラッド」では、彼を一躍時代の寵児たらしめた、まさに洪水の奔流のごときフレーズが堪能出来る。スロー・ブルースの名作だ。
そして、ハイライトは、「ヴードゥー・チャイル」。いうまでもなく、彼に最も影響を与えたギタリストのひとり、ジミ・ヘンドリクスに捧げられたナンバー。9分半におよぶ大熱演。
聴いて総毛が立つ、そんな感じの実にスリリングなパフォーマンス。
ジミの魂が乗り移ったかのような、ガッツにあふれたプレイ、これは一聴の価値あり。
最後の2曲では、ふたたびジミー・ヴォーンが登場。
珍しくアップ・テンポの「ラヴ・ストラック・ベイビー」では、ノリノリのロックン・ロール大会。
そして、これもデビュー・アルバム所収のミディアム・テンポ・ナンバー、「チェンジ・イット」でエンディング。
看板の哀愁味あふれるギター・プレイで締めくくってくれる。
筆者が思うに、スティーヴィ・レイ・ヴォーンのサウンドの最大の魅力とは、一聴してすぐ彼のと判るギターの「音色」、エッジの立った独特のストラト・トーン、これではないだろうか。
彼が師と仰ぐアルバート・キングが、聴けばすぐ判る彼特有の音色を持っていたように、彼もさまざまなアーティストの影響を受けつつも、やはり彼にしか出せない「音色」を確かに出している。
ロックだのブルースだのとカテゴライズする意味も必要もない、「SRV」という名のジャンルを、そのユニークな音色で彼は打ち立てた。
これが死後10年以上を経てもなお、多くのリスナーに愛聴され続けている理由ではないかと思う。
この1枚、もともとアナログ盤では2枚組だっただけに、ボリューム満点、聴き応え十分。
あなたも、ぜひ、このライヴ盤でSRVワールドを満喫して欲しい。