NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#73 V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 6: BLUES ORIGINALS」(MCA/Rhino R2 71127)

2022-01-26 05:00:00 | Weblog

2001年11月10日(土)



V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 6: BLUES ORIGINALS」(MCA/Rhino R2 71127)

1.BRING IT ON HOME(SONNY BOY WILLIAMSON II)

2.YOU NEED LOVE(MUDDY WATERS)

3.TEXAS FLOOD(LARRY DAVIS & HIS BAND)

4.GOT MY MO-JO WORKING(BUT IT JUST WORK ON YOU)(ANN COLE, WITH THE SUBURBANS & ORCHESTRA)

5.I AIN'T SUPERSTITIOUS(HOWLIN' WOLF)

6.LOVE IN VAIN(ROBERT JOHNSON)

7.I CAN'T QUIT YOU BABY(OTIS RUSH)

8.BULLDOZE BLUES(HENRY THOMAS)

9.MADISON BLUES(ELMORE JAMES)

10.SOMEONE TO LOVE ME(SNOOKY PRYOR)

11.I AIN'T GOT YOU(JIMMY REED)

12.THAT'S ALL RIGHT(ARTHUR "BIG BOY" CRUDUP)

13.I'M A MAN(BO DIDDLEY)

14.BOOM, BOOM OUT GOES THE LIGHTS(LITTLE WALTER)

15.PACK FAIR AND SQUARE(BIG WALTER &HIS THUNDERBIRDS)

16.I'M A KING BEE(SLIM HARPO)

17.IT'S A MAN DOWN THERE(G.L. CROCKETT)

18.BACK DOOR MAN(HOWLIN' WOLF)

「BLUES WASTERS」と名づけられたシリーズの中の一枚。1993年リリース。

MCAの音源を中心に、SONY MUSIC、PAULA/JEWEL、Vee-Jay、BMGなど他社の音源も含めて編集され、バラエティにとんだセレクションになっている。

タイトル中の「ORIGINALS」が示すように、ロック系アーティストによってカバーされた有名なブルース・ナンバーの、オリジナル・ヴァージョンが選曲されている。

まず(1)は、レッド・ツェッペリンのカバーでおなじみのナンバー。

サニーボーイのヴォーカル、そしてハープには、実に「深い」味わいがある。

続いて(2)は、ウィリー・ディクスン作、同じくZEPの「胸いっぱいの愛を」で歌詞がまるごと引用されたナンバー。

ここでは、マディ・ウォーターズによる、野太いヴァージョンを収録。

(3)は、スティーヴィ・レイ・ヴォーンのデビュー・アルバムのタイトル・チューンともなった、スロー・ブルース。

オリジナルはラリー・デイヴィス。ただし作曲者としてのクレジットはドン・ロビー。

日本ではあまり知られていないが、ロビー率いるデューク・レコードに所属していたシンガー。アルバート・キングのバンドを経て、B・B・キングの引きで彼のレーベルに所属したりもした実力派だ。58年の録音。

このヴァージョン、ギターのフェントン・ロビンスンのプレイも聴きもののひとつである。

(4)は、マディ・ウォーターズの十八番として知られている、あまりに有名な曲だが、実はアン・コールというジャンプ・ブルース系の女性シンガーがオリジナル。

彼女とツアーを共にしていたマディが、この曲の受けように目をつけて、ちゅっかり自分のおハコとして取り入れた、ということらしい。

マディに負けず劣らず勇ましい、アン・コールの歌いぶりにも注目したい。

(5)は以前このコーナーでも紹介したジェフ・ベック・グループ(第一期)の「トゥルース」でカバーされていたナンバー。

ジミー・ロジャーズ、ヒューバート・サムリンのツイン・ギターが奏でるリフがまことにカッコよい。61年録音。

(6)はもちろん、ストーンズがアルバム「レット・イット・ブリード」中でカバーした名曲。

なにせ37年の録音、音質はいまイチだが、心をゆさぶる歌声といい、独演とは思えぬ達者なギター・プレイといい、名演には変わりない。これぞ、デルタ・ブルースの粋。

(7)は、これもZEPにカバーされた名曲、オーティスのコブラでのファースト・シングル。

決してカバーに「食われる」ことのない、金字塔的な名唱だと思う。

(8)は、聞きなれないタイトルだが、「ゴーイン・アップ・ザ・カントリー」という別名を聞けば、皆さん、ピンと来るだろう。

名ブルース・ロック・バンド、キャンド・ヒートのカバーで知られるようになったナンバー。映画「ウッドストック」でもバックに流れていたし、最近では日本でクルマのCFソングにも使われた、どこかほのぼのとしたムードのカントリー・ブルース。

オリジナルはさすがに古くて、なんと28年。典型的なホーボーと呼ばれた放浪のシンガー、ヘンリー・トーマスが自ら吹くリード・パイプがいい雰囲気だ.

(9)は、スライド・ギターの大御所、エルモア・ジェイムズの自作自演。チェスの名盤「フーズ・マディ・シューズ」に収録されている。60年録音。

白人エルモア・フリークNO.1、ジェレミー・スペンサーがいた、フリートウッド・マックによりカバーされているので、おなじみであろう。(「ブルース・ジャム・イン・シカゴVOL.1」所収。)

エルモアのソリッドなスライド・プレイ、そしてワイルドなヴォーカルは実にゴキゲンだ。ノリノリ~な一曲。

(10)は、ヴィー・ジェイ所属のハーピスト、スヌーキー・プライアーのオリジナル。56年録音。

この歌詞を全面的に書き替えたのが、ジェフ・ベック在籍時のヤードバーズの代表曲「ロスト・ウィメン」なのである。

オリジナル版、歌のほうはご愛嬌という感じの出来だが、そのハープはさすがに「貫禄」を感じさせるプレイである。

(11)は、クラプトン・フリークなら一度はそのソロをコピーしたであろう、第二期ヤードバーズ・ナンバーの原曲。(筆者も恥ずかしながらやりました。)

カルヴィン・カーターの作品、歌うはジミー・リード。55年の録音。こちらもヴィー・ジェイ音源から。

間奏部分は、ジミー・リードのハープをフューチャーしたもの。ヤーディーズ版と聴き比べてみると面白い。

(12)はキング・エルヴィスが最も影響を受けた黒人シンガーのひとり、クルーダップの作品。

エルヴィスによるカバー(アルバム「リコンシダー・ベイビー」などで聴ける)とくらべると、少し甲高い声が印象的だ。

46年の録音だから、バックの演奏スタイルも古めかしいが、それもまた微笑ましい。

(13)は、これまたヤーディーズの重要レパートリー(ライヴではラストに演奏されることが多かった)のひとつ。

オリジナルのボ・ディドリーも、重量感あふれる演奏がナイスだ。

(14)は、パット・トラヴァースによってカバーされたナンバー。不世出のハーピスト、リトル・ウォルターは、シンガーとしても一流であることが、これを聴くとはっきりわかる。

もちろん、ハープの方も、たとえようもなく素晴らしい音色だ。

お次の(15)では、ビッグ・ウォルターも登場。彼も負けじとヴォーカルで勝負。こちらもグーなんである。

やはり、すぐれたハーピストは歌わせても上手い。ハープのこころは「歌ごころ」なのだなと、改めて感じいった次第。

で、この曲のカバーといえば、J・ガイルズ・バンド。ともにいかしたロックン・ロールに仕上がっている。

ハーピスト三番勝負(!)の最後は、スリム・ハーポ。

(16)は、ジェイムズ・ムーア、すなわちスリム・ハーポ自身の作品。ヘンリー・グレイ、ルイジアナ・レッドらも取上げ、ストーンズや、日本ではシーナ&ロケッツなどもカバーしている有名曲だ。

スリム・ハーポはこれをシャウトせず、クールに歌う。前のふたりとはかなり趣きを異にしたヴォーカル・スタイルだが、これはこれでカッコいい。

(17)はオールマンズがカバーしたサニーボーイの「ワン・ウェイ・アウト」(W・ディクスン作)とかなり似通ったスタイルを持つナンバー。どうやらこの「イッツ・ア・マン~」のほうが元曲らしい。

歌うは、日本ではほとんどおなじみのない、G・L・クロケット。

こちらはシャウト無縁の、鼻歌ソング的な歌いぶり。肩の力がまるきり抜けた感じだ。

でもなぜか、65年にリリースされるや、R&Bチャートの上位を占めるヒットになったというから、世の中わからない。

さらには、ジミー・リードが「アイム・ア・マン・ダウン・ゼア」なるアンサー・ソングまで作って、これまたヒットしたというおまけのエピソードまである。

ラストの(18)は、ドアーズのカバーで知られる、へヴィーな(サウンドも歌詞も)ナンバー。ウィリー・ディクスン作品。

ジム・モリスンのヴォーカルもスゴみがあったが、オリジナルのウルフも決して負けてはいない。めいっぱいの迫力だ。

ちなみに、ギターはサムリンの他、デビュー当時のフレディ・キングも参加しているようだ。よ~く耳をすまして聴きわけて欲しい。

以上18曲、いかにブルースがロックの成長の上で欠かせぬことの出来ない「栄養源」になったかを語る、雄弁な証拠ぞろい。

単独では入手しづらい、貴重な音源もいくつか含まれているから、買って損はない。

ブルース・ファン、ロック・ファンともに、超おススメである。